精神障害者に対する包括的禁煙対策の確立

文献情報

文献番号
201122079A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害者に対する包括的禁煙対策の確立
課題番号
H22-精神・一般-011
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
岸本 年史(公立大学法人 奈良県立医科大学 医学部医学科)
研究分担者(所属機関)
  • 赤池 孝章(熊本大学大学院生命科学研究部 微生物学分野)
  • 谷垣 健二(滋賀県成人病センター)
  • 新貝 憲利(成増厚生病院)
  • 高橋 裕子(奈良女子大学保健管理センター)
  • 深見 伸一(公立大学法人 奈良県立医科大学 医学部医学科)
  • 古郡 規雄(弘前大学 大学院医学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
5,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
総合的に精神科禁煙対策を提言することを目的とし、以下のような検討を行う。1)喫煙による抗精神病薬への影響を明らかにしつつ、精神疾患を有する喫煙者への治療プロトコールの作成及び、治療の現状を踏まえた精神病棟を有する病院での禁煙化のロードマップを作成する。2)統合失調症患者への喫煙の影響をプロスペクティブに評価し、精神症状、社会的能力などの予後への影響について調査する。3)ヒトにおける統合失調症とニコチンの相互作用に関連する遺伝子の解析と酸化ストレスとの関連を調査する。
研究方法
喫煙による統合失調症への影響については、統合失調症退院患者を再入院時をエンドポイントとし、プロスペクティブに症状、認知機能について評価を行った。また実際に禁煙治療を行い、その間の症状、認知機能を評価し、長期間の禁煙が統合失調症に与える影響について評価し、禁煙による抗精神病薬への影響について調査を行った。活性酸素についての研究では、統合失調症患者の硫化水素レベルについて検討した。また、統合失調症モデルマウスを用いて、統合失調症とニコチンの相互作用に関わる遺伝子解析を行った。多機能幹細胞を用いた実験的研究ではニューロン誘導培養系の確立をめざした。
結果と考察
統合失調症の喫煙者では非喫煙者に比べ退院後の再入院率が高い傾向が見られた。また、統合失調症患者の禁煙治療では6名中2名だけが12週間の禁煙治療を完遂しそのうち1名だけが終了時に禁煙を行えていた。オランザピンは禁煙による薬物代謝酵素の変化により影響を受けやすい抗精神病薬であり、コンピューターによるシュミレーションで禁煙開始後1週間以内に投与量を60-70%にすると血中濃度曲線に最も影響を与えないシュミレーションが得られた。活性酸素についての研究では、統合失調症喫煙者では、非喫煙者に比べ血中硫化水素濃度が顕著に高く、健常喫煙者に比べても高い傾向が見られた。統合失調症モデルマウスを用いた研究では、統合失調症様行動とニコチンの相互作用に影響を及ぼすQTLの候補SNPは6000-7000にも及び、さらに実験を重ね原因となるSNPの同定を試みる。統合失調症患者及び健常者のiPS細胞の樹立を行い、ニューロン誘導培養系の確立に成功した。また精神科病棟の禁煙化ロードマップの一部をなす禁煙対策評価シーの作成を行った。
結論
今後も研究を進め、統合失調症と喫煙の関係について明らかにしていきたい。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201122079Z