睡眠障害患者のＱＯＬを改善するための科学的根拠に基づいた診断治療技術の開発

文献情報

文献番号

201122075A

報告書区分

総括

研究課題名

睡眠障害患者のＱＯＬを改善するための科学的根拠に基づいた診断治療技術の開発

課題番号

H22-精神・一般-007

研究年度

平成23(2011)年度

研究代表者(所属機関)

三島　和夫(独立行政法人　国立精神・神経医療研究センター　精神保健研究所　精神生理研究部)

研究分担者(所属機関)

井上　雄一(財団法人神経研究所・精神医学・睡眠学)
内村　直尚(久留米大学医学部・神経医学講座・睡眠医学)
本多　真(財団法人東京都医学総合研究所・東京都精神医学総合研究所・睡眠学)
肥田　昌子(独立行政法人　国立精神・神経医療研究センター　精神保健研究所　精神生理研究部)
守口　善也(独立行政法人　国立精神・神経医療研究センター　精神保健研究所　精神生理研究部)
山寺　亘(東京慈恵会医科大学医学部・精神医学講座)
渡辺範雄(名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学)

研究区分

厚生労働科学研究費補助金疾病・障害対策研究分野障害者対策総合研究

研究開始年度

平成22(2010)年度

研究終了予定年度

平成24(2012)年度

研究費

16,000,000円

研究者交替、所属機関変更

-

研究報告書（概要版）

研究目的

　睡眠障害患者の臨床転帰が向上しない主因であるQOL障害の実態と、その臨床特徴及び心理・社会・生物学的な背景要因を明らかにする。現行の薬物療法の問題点を検証し、QOL改善に資する効果的な不眠治療プログラムを作成する。

研究方法

　本研究班では以下の研究事業を実施した。１）震災4ヶ月時点（2011年7月）における不眠及びQOL障害を明らかにするため、電子住宅地図DBを用いた層化３段無作為抽出した全国（12ブロック、157地点）の20歳以上の男女1,259人を対象とした個別面接聴取調査。２）慢性不眠症に対する認知行動療法の有効性に関する検証試験。３）睡眠障害患者におけるQOL低下の実態に関する調査。４）睡眠障害患者のQOL低下を惹起する背景要因に関する研究。

結果と考察

１）震災後に国内全般とりわけ福島、宮城、岩手を中心とした東北被災県での不眠症罹患率の増大と精神健康（K6）およびQOL（SF-36、SDISS）の悪化が生じていた。不眠とQOL低下との間に関連が認められた。
２）医療機関受診患者220名を対象とした多施設共同調査により不眠症、睡眠関連運動障害および概日リズム睡眠障害でのQOL低下が強いこと、抑うつの存在がQOL低下に関連していることが明らかになった。鳥取県大山町の住民5527名での2年間の追跡調査の結果、二時点ともに不眠を有した対象者（慢性不眠）では睡眠維持障害ならびに精神的健康度と抑うつが強いことが明らかになった。
３）慢性不眠症患者を対象にして、①服用中の睡眠薬の減量効果に関する多施設共同試験、②CBT＋行動解析（CBTi-BA）の効果検証試験、③うつ病の残遺不眠とQOLに対する効果検証試験、④集団認知行動療法の効果検証試験を実施した。一部の試験が終了し、CBTが不眠症状およびQOL障害に有効であることを示す結果が得られた。
４）睡眠障害患者を対象とした脳機能画像研究、睡眠時間と主観的健康観及び精神神経免疫学的反応との関連研究、高齢期不眠とHPA系機能亢進に関する研究を推進した。

結論

　睡眠障害患者の不眠、過眠、随伴症状に加えて、併存するQOL障害を正しく診断し適切に対処することが治療効果とアドヒアランスを向上させることを示唆する知見が集まりつつある。また、睡眠薬を主剤とする薬物療法のみならず、適宜、認知行動療法や睡眠衛生指導を併用することでリスク・ベネフィット比に優れた不眠治療プログラムを提供できることが示唆された。