文献情報
文献番号
201122053A
報告書区分
総括
研究課題名
側頭葉てんかん外科手術後の記憶障害機構の解明
課題番号
H22-神経・筋・一般-017
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
臼井 桂子(国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
- 寺田 清人(国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター臨床研究部)
- 馬場 好一(国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター臨床研究部)
- 井上 有史(国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター臨床研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
脳の慢性疾患であるてんかんの中で、難治側頭葉てんかんは外科治療が有効だが、術後障害の十分な検証、対策に至っていない。本研究は、(1)術後記憶機能障害の実態把握と発生要因の解明、(2)術後障害の予測と回避を可能にする臨床検査手法と手術様式確立のための明確な指針の提供を目的としている。
研究方法
3年計画2年目の本年は、(a)当院外科治療後795症例の大規模統計研究、(b)硬膜下電極留置症例の頭蓋内脳波研究、(c)外科治療前新規検査手法の研究、を実施した。(a)では、術後2年目の発作予後調査と、記憶障害と手術側(言語優位半球と非優位半球)の関係把握のため選択的扁桃体海馬切除術症例に焦点を絞った神経心理検査の術前術後成績の比較、影響因子の統計解析を実施した。(b)では、高周波成分と超高周波成分の出現様式、性状、発作予後との関連を検討し、臨床的意義を検証した。また、皮質間誘発電位記録で、皮質間連関の方向性、機能部位特性等の検討を実施した。(c)では、非侵襲的言語優位半球同定法の有効性評価のため、外科治療予定症例でfMRIを実施し、Wadaテスト結果と比較して判定精度を検討した。
結果と考察
(a)発作予後は、発作消失が79.4%、稀発発作のみが11.8%で、良好な結果を得た。神経心理検査の術前術後比較で、言語優位側(左)手術群、非優位側(右)手術群ともにIQ、注意集中機能の術後改善を認めた。記憶機能は、非優位側手術群で言語性記憶改善が認められたが、言語優位側手術群では言語性記憶低下が認められた。(b)1000~2500Hzの超高周波成分を見出し、出現様式、病変部位との関連から、てんかん原性部位特異的な脳波成分であることを確認した。皮質間誘発電位は、左右一次運動野連関の特徴抽出に成功し、検査手法の有効性を確認した。(c)83.3%の症例でfMRIとWadaテストの言語優位側判定が一致した。
結論
難治側頭葉てんかん外科治療を最良条件で実施すれば極めて有効な発作抑制が得られることを実証した。術後IQと注意集中力の改善を認め、画期的な副次効果を得た。今後の課題が言語優位側術後の言語性記憶障害であるとの明確なエビデンスを得た。頭蓋内脳波の術前検査で発作焦点同定に有効な成分を見出し、皮質間連関同定の手法を確認した。fMRIによる術前検査の有効性を評価し、改善すべき問題点を明確化した。
公開日・更新日
公開日
2012-08-10
更新日
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