文献情報
文献番号
201122052A
報告書区分
総括
研究課題名
未熟終止コドンの抑制による筋ジストロフィー薬物治療の臨床応用基盤の確立
課題番号
H22-神経・筋・一般-016
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
松田 良一(東京大学 大学院総合文化研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
10,397,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ナンセンス変異はDNAの塩基が1つ置換し,アミノ酸コードが終止コドンに変化するため機能的タンパク質が作られなくなる点変異である。ナンセンス変異を薬物により抑制して翻訳を進行させ,全長タンパク質の発現を回復させることで症状の改善を志向するリードスルー治療は,本人の遺伝子を活かすため遺伝情報の変更や遺伝物質の導入が無く,目的タンパク質の発現自体が正常に制御されることで,その治療効果は大きく且つ副作用が少ないと考えられている。本療法は遺伝子治療や核酸医薬によらず,ナンセンス変異症例の包括的治療が可能な,独創的な概念に基づくものであり,本邦のデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者数において19%を占めるナンセンス変異症例の有効かつ迅速な選択肢である。本研究の目的は,ナンセンス変異型遺伝性筋疾患の本療法の実現性を確保するため,可能な限り多くの薬物候補を特定し,薬効薬理試験を実施することである。
研究方法
リードスルー薬効評価系遺伝子導入READマウスや疾患モデルmdxマウス,患者様由来筋細胞を用い,生化学的・免疫組織化学的・運動機能解析学的に薬効検証を行った。実験については所属大学の動物実験委員会や倫理委員会の承認を得て適正に実施した。
結果と考察
①epi-デオキシネガマイシン誘導体の合成に成功した。②マクロライド系等の既承認抗菌薬に複数の薬物候補を特定した。③通常は皮膚を透過しない薬物の経皮投与法を開発し,アミノグリコシドや抗がん剤での適用可能性を検討した。④mdxマウスに抗MRSA薬アルベカシンを投与することで治療効果を認めた。⑤患者様由来筋細胞をアルベカシン処理することで最大32%のジストロフィン発現の回復を確認した。アルベカシンについては,医師会治験センター支援の下で医師主導型治験の実施を計画中である。本剤については今後,至適投与経路・用量・間隔の精査と,増強効果や減毒効果を狙った併用療法の可能性を検討する。
結論
確立した安全性をもつ既承認薬からの薬物候補の特定は,速やかな実用化が見込まれる。またリードスルー誘起物質は,ナンセンス変異の種類及びその周辺配列に対する特異性が異なるため,より多くの治療薬候補物質を特定し,個々の患者様に最適な治療戦略を選択かつ併用できるようにすることが求められている。それ故出来る限り薬物候補を増やし,その臨床応用基盤を固めることを目指している。
公開日・更新日
公開日
2012-08-10
更新日
-