文献情報
文献番号
201122050A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞内膜構造に注目した運動神経病の画期的な治療法の開発
課題番号
H22-神経・筋・一般-014
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 理(新潟大学 脳研究所)
研究分担者(所属機関)
- 横関明男(新潟大学 医学部)
- 高橋均(新潟大学 脳研究所)
- 山中邦俊(熊本大学 発生医学研究所)
- 佐藤俊哉(新潟大学 脳研究所)
- 牛木辰男(新潟大学 医歯学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
16,347,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究計画ではTDP-43機能とゴルジ装置-小胞体システムとの関連を検討し,さらに運動神経細胞死における細胞内小器官の寄与について検討を加え,その細胞死のメカニズムを明らかにし,共通する治療方法を探求する.
研究方法
本研究計画では.TDP-43 の機能喪失モデル,ALS 関連ミスセンス変異型 TDP-43 導入モデル,痙性対麻痺,運動神経優位型末梢神経障害の原因遺伝子の機能喪失モデルを用い,細胞内の小器官の膜構造について検討する.対象とする細胞は,培養神経,モデルマウス,モデル線虫,剖検ヒト組織にて解析する.そのゴルジ装置-小胞体構造について検討を加える.患者剖検組織にて,小胞体-ゴルジ装置を免疫組織化学,および,電子顕微鏡にて解析する.線虫にて確立したモデル系にて,想定される薬剤効果を確認する.
結果と考察
TDP-43の発現を抑制することにより,培養細胞系において,ゴルジ装置,小胞体,ミトコンドリアの構造変化が引き起こされることを示した.こ筋萎縮性側索硬化症(ALS)のモデルマウスを確立するため、TDP-43コンディショナルノックアウトマウスを作成した。得られた個体においては脊髄前角細胞にてTDP-43の消失を認め,同部位にてゴルジ装置の断片化を伴う変化を見いだした.これはTDP-43の減少が,運動神経細胞でも細胞内膜器官の変化をもたらすことを示したことになる.ヒト剖検組織の脊髄前角の運動神経細胞を用いて走査電子顕微鏡にて,細胞内の微細構造を明らかにすることに成功した.また免疫組織化学法と走査電顕法を比較解析することも可能とした.精製蛋白を用いTDP-43凝集体がVCPにより脱凝集されることを確認した.さらに,線虫TDP-43欠損変異体で,産卵数の減少、胚性致死率の上昇、運動能の低下を確認した. SCA type 2 (SCA2) でTDP-43 陽性の封入体が出現していることを見いだした。
結論
TDP-43の欠損個体の脊髄前角細胞での膜構造異常を明確に見いだしたことである.今後,この膜構造異常による細胞機能障害について,最終年度に詳細に検討を加える.具体的にはミトコンドリア機能に注目しており,ミトコンドリア機能障害をターゲットとした運動神経病の治療方法の開発につなげていきたいと考える.
公開日・更新日
公開日
2012-08-10
更新日
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