文献情報
文献番号
201122049A
報告書区分
総括
研究課題名
縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーの治療効果最大化のための研究
課題番号
H22-神経・筋・一般-013
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
西野 一三(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部)
研究分担者(所属機関)
- 野口 悟(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部 )
- 林 由起子(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部 )
- 青木 正志(東北大学病院 神経内科)
- 冨滿 弘之(東京医科歯科大学大学院 脳神経病態学)
- 森 まどか(吉村 まどか)(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター病院 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(DMRV)を対象に発症したモデルマウスに対する前臨床研究により治療法を確立する。また、臨床試験にむけ、DMRVの自然歴把握の調査研究と、併せて三好型を初めとする他の遠位型ミオパチーの情報収集を行う。
研究方法
発症した高齢のモデルマウスに対するシアル酸投与した。正常GNE遺伝子を発現アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターをモデルマウスに全身性に投与、表現型を解析した。モデルマウス筋で活性酸素種を測定し、抗酸化薬にて治療研究をした。長期経過例の病理解析と患者38人の呼吸機能障害の後ろ向きカルテ調査を行った。三好型遠位型ミオパチーの自然経過解析のため,dysferlin遺伝子変異未確定例で遺伝子型と経過を解析した。
結果と考察
発症モデルマウスへのシアル酸投与試験では、シアリルラクトース投与により運動量の増加、骨格筋の機能、サイズを顕著に改善し、遊離シアル酸よりも高い治療効果が認められた。AAVベクターによる遺伝子治療では、各組織のシアル酸レベルに回復が見られ、骨格筋の機能は顕著に改善した。モデルマウスの骨格筋でのROS産生を検出した。少数のマウスでの抗酸化薬投与では、骨格筋の表現型は部分的に回復した。DMRV患者の自然歴調査では、DMRV患者は時に呼吸不全を生じることがあった。発症年齢が早く、罹患期間が長く、MNK/MNK変異患者では呼吸機能低下に注意する必要あり。長期観察例の障害の強い筋群では筋鞘膜下にAβの沈着を認め、病態を考えていく上で重要であると思われた。dysferlinopathyが疑われるものの遺伝子変異の確定しなかった患者の検討を行った。
結論
発症したDMRVモデルマウスへのシアリルラクトース投与は高い治療効果が認められた。AAV8ベクターによる遺伝子治療では、骨格筋の機能は顕著に改善した。モデルマウスの筋萎縮と骨格筋でのROS産生の関連が示唆された。DMRV患者は時に呼吸不全を生じるため、呼吸機能低下に注意する必要がある。三好型を中心とした遠位型ミオパチーの実態に関する解析は将来の治療研究の際の重要な基礎資料となると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2012-08-10
更新日
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