文献情報
文献番号
201122042A
報告書区分
総括
研究課題名
新生児聴覚スクリーニング導入以前と以後に育った先天性難聴児の診断・治療による中等教育までの成果と不都合な現実の対策のための研究
課題番号
H22-感覚・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
加我 君孝(東京医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 福島 邦博(岡山大学医学部)
- 坂田 英明(目白大学保健医療学部)
- 神田 幸彦(神田耳鼻咽喉科entクリニック)
- 城間 将江(国際医療福祉大学言語聴覚学科)
- 内山 勉(東京医療センター 臨床研究センター)
- 松永 達雄(東京医療センター 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
7,928,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
人工内耳手術の手術室における術直後の電極の機能評価は、電極のインピーダンスチェック、電極による蝸牛神経の反応の有無のチェックが多くの施設でルーチンに行われている。しかしこれだけでは中枢聴覚伝導路が刺激されているか否かは判らない。脳幹の中枢聴覚伝導路が刺激されているか否かをわれわれは2009年7月よりEABRによってチェックすることを考えて実施してきた。内耳奇形のない群と、ある群に分けてEABRの有用性について比較し、両群に差があるかを明らかにすることを研究の目的とした。
研究方法
対象は、東京医療センターで、MED-EL社の機種で人工内耳手術をした42例(Pulsar 41例、Combi40が1例)と国際医療福祉大学三田病院で人工内耳手術をした2例の、計44例である。このうち小児が35例で、うち内耳奇形が4例である。内耳奇形のうち、Common cavity 2例、IP-Ⅰ型1例、IP-Ⅱ型1例である。方法は、①人工内耳の機種はMED-EL社製で、電極はスタンダード型、Flex Soft 2例、Flex eas 2例で、②他覚的聴覚検査は電極のインピーダンスチェック、蝸牛神経刺激のATR(Auditory Transmission Response)、電気刺激による聴覚脳幹反応(EABR)の3つを行った。
結果と考察
基底回転のみのIP-Ⅱ型の例はインピーダンス、ABR、EABRとも良好な反応を得ることが出来た。IP-Ⅰ型の例はインピーダンスとATRの両方の反応とも良好であったが、EABRは記録できなかった。Common cavityの2例はインピーダンスもATRもEABRも良い記録ができなかった。人工内耳は蝸牛軸にあるラセン神経節を電気刺激することで得られる聴覚反応である。本研究の結果よりEABRは蝸牛軸がある限り良好な脳幹反応が得られるものと考えられる。EABRは内耳奇形あるいは髄膜炎で骨化した症例のマッピングと予後のために必要欠くべからざるものになろう。
結論
EABRは蝸牛軸があって初めて記録可能である。人工内耳手術前の高分解能CT検査では、蝸牛軸の有無に注目する必要がある。ただしEABRが記録されないと言うだけで人工内耳手術が無効であったと言うことはできない。EABRはルーチンに記録すべき人工内耳評価のためのモニタリングである。
公開日・更新日
公開日
2012-08-10
更新日
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