文献情報
文献番号
201122041A
報告書区分
総括
研究課題名
リアルタイムfMRIを用いたバイオフィードバック法による精神科ニューロリハビリテーションへの応用
課題番号
H21-障害・若手-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
松田 哲也(玉川大学 脳科学研究所)
研究分担者(所属機関)
- 高橋 英彦(京都大学大学院 医科学研究科)
- 久保田 雅也(国立成育医療センター 神経内科)
- 渡邊 克巳(東京大学 先端科学技術研究センター)
- 松浦 雅人(東京医科歯科大学大学院 保健衛生学研究科)
- 大久保 善朗(日本医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,344,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
これまで薬物療法では治療効果が得られにくかった高機能自閉症・アスペルガーを対象にリアルタイムfMRIによるバイオフィードバック法を用いたトレーニングによってえられる感情機能や社会認知機能の改善・回復の有用性を調べ、精神科の認知リハビリテーションの臨床応用の可能性について検討することを目的とする。本年度は、自閉症・アスペルガー症候群、うつ病のリアルタイムfMRIを用いたバイオフィードバック治療を行うための準備、基礎研究を行うこととした。
研究方法
リアルタイムfMRIのシステムならびに眼球運動同時計測システムを整備し、バイオフィードバックのトレーニング課題ならびにその効果測定に関わる課題を作成した。課題は1. 扁桃体位置同定課題(コントロール1)、2. 条件付け課題、3. バイオフィードバックトレーニング課題、4. 扁桃体位置同定課題(コントロール2)、5. 表情認知課題(after)の5つを作成した。課題1と5の脳活動の比較を行うことでバイオフィードバックトレーニング前後の表情認知時の扁桃体の活動と視線位置の変化について検討した。
結果と考察
アスペルガー症候群では、情動を惹起する刺激がなくても、自分の意思で扁桃体の活動を上昇させることができることを確認した。バイオフィードバックで扁桃体の活動を制御できた場合、扁桃体の活動をシードにしてPsychophysiolosical Interaction: PPIを行ったところ、内側前頭葉(MPFC)と島(insula)の有意な活動がみられた。つまり、扁桃体の活動の上場にMPFCとinsulaが相関して活動している。 バイオフィードバックトレーニングで、情動を惹起する刺激がなくても扁桃体の活動を上昇できた場合、情動を惹起する刺激を見たときの扁桃体の活動が上昇していた。つまり、バイオフィードバックトレーニングで扁桃体の活動を活性化させると、その後同じような情動を惹起刺激に対しても反応が上昇している。
結論
これらの結果から、アスペルガー患者でも、バイオフィードバックにより扁桃体の活動を活性化することができることが明らかになった。また、扁桃体の活動制御には、内側前頭葉(MPFC)、島(insula)も相関して働いていることが必要であることが明らかになった。今後、fMRIによるバイオフィードバックが、精神疾患のリハビリテーションに応用できる可能性が見出された。
公開日・更新日
公開日
2012-08-10
更新日
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