触法・被疑者となった高齢・障害者への支援の研究

文献情報

文献番号
201122031A
報告書区分
総括
研究課題名
触法・被疑者となった高齢・障害者への支援の研究
課題番号
H21-障害・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
田島 良昭(社会福祉法人 南高愛隣会)
研究分担者(所属機関)
  • 藤本哲也(中央大学法学部 常磐大学大学院被害者学研究科)
  • 荒中(荒・大橋法律事務所)
  • 浜井浩一(龍谷大学法科大学院)
  • 小林繁市(社会福祉法人 北海道社会福祉事業団)
  • 松村真美(社会福祉法人 南高愛隣会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,176,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
逮捕され明らかな犯罪事実が認められたが、不起訴処分や起訴猶予処分になった者及び執行猶予判決になった高齢・障害者の「触法・被疑者」(以下対象者)について、その実態を明らかにし、司法・警察両分野との連携を踏まえながら、福祉サイドにおける支援策を探ると共に、これを通じて対象者の再犯防止に寄与することを目的にする。
研究方法
研究代表者の下に以下の通り5人の研究分担者を配置し、多方面から有効な支援のあり方を探る。
○ 刑事法学からの触法・被疑者の実態調査と現状分析(藤本研究分担者)
○ 弁護活動と福祉との連携に関する研究(荒研究分担者)
○ 法務と福祉の接点である更生保護に関する研究(浜井研究分担者)
○ 福祉施設の支援の現状と可能性に関する研究(小林研究分担者)
○ 触法・被疑者(高齢・障害者)の地域社会内訓練事業の実施(松村研究分担者)
結果と考察
本年の研究結果によって以下の三点が明らかになった。
第一に、「触法・被疑者」となった高齢・障がい者の実態が明らかになった。第二に、文献調査や現地調査によって、諸外国では対象者のみを包括する刑事司法手続きが存在し、司法と福祉が連携・協働して対象者を社会へダイバードする道が用意されていることが明らかになった。第三に、「福祉」と「司法」の新たな連携に向けたモデル的実践「地域社会内訓練事業」において、同事業での受け入れを前提とした執行猶予や、保護観察付執行猶予の判決が下りるという、一定の成果を得たことである。
結論
「触法・被疑者」となった高齢・障害者の支援においては、できるだけ早い段階から福祉のネットワークに取り込むことが重要であり、それには「地域社会内訓練事業」の様な、「福祉」と「司法」の新たな協働体制の確立が必要となる。
それには刑罰重視の「応報主義」から被告人の「更生」や「再犯防止」を重視した量刑・刑事政策への転換と共に、取り調べの全面可視化や補佐人等の同席といった刑事司法手続きにおける高齢・障害者への人権擁護体制も望まれる。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201122031B
報告書区分
総合
研究課題名
触法・被疑者となった高齢・障害者への支援の研究
課題番号
H21-障害・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
田島 良昭(社会福祉法人 南高愛隣会)
研究分担者(所属機関)
  • 藤本 哲也(中央大学 常磐大学大学院被害者学研究科)
  • 荒 中(荒・大橋法律事務所)
  • 浜井 浩一(龍谷大学法科大学院)
  • 小林 繁市(社会福祉法人 北海道社会福祉事業団)
  • 松村 真美(社会福祉法人 南高愛隣会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
逮捕され明らかな犯罪事実が認められたが、不起訴処分や起訴猶予処分になった者及び執行猶予判決になった高齢・障害者の「触法・被疑者」(以下対象者)について、その実態を明らかにし、司法・警察両分野との連携を踏まえながら、福祉サイドにおける支援策を探ると共に、これを通じて対象者の再犯防止に寄与することを目的にする。
研究方法
研究代表者の下に以下の通り5人の研究分担者を配置し、多方面から有効な支援のあり方を探る。

○ 刑事法学からの触法・被疑者の実態調査と現状分析(藤本研究分担者)
○ 弁護活動と福祉との連携に関する研究(荒研究分担者)
○ 法務と福祉の接点である更生保護に関する研究(浜井研究分担者)
○ 福祉施設の支援の現状と可能性に関する研究(小林研究分担者)
○ 触法・被疑者(高齢・障害者)の地域社会内訓練事業の実施(松村研究分担者)
結果と考察
本研究によって明らかになった「触法・被疑者」となった高齢・障害者の課題は以下の通りである。
第一に、刑務所に入る前段階(警察、検察、裁判)において、ハンディキャップを持つ高齢・障害者に対する支援体制が不備となっており、本人の不利益となっている。
第二に、矯正・教育等において、その特性に応じた刑事政策は存在せず、現状では犯罪要因となっているものを何ら矯正することなく社会に復帰させている。
第三に、こうした背景には、「応報量刑主義」という日本の刑事政策のあり方があり、これが被告人の更生を意識した量刑を行うにあたって一定の限界となっている。
結論
この研究結果を踏まえ、(1)警察段階、検察段階、裁判段階における、高齢・障害者の「被疑者・被告人」に対して取り調べにおける「供述能力」、裁判における「訴訟能力」の支援体制の整備、(2)被告人の「改善更生」や「再犯防止」を重視した量刑・刑事政策への転換、(3)高齢・障害者を対象にした「司法」と「福祉」が連携した刑事政策が必要であるという結論に至り、これに基づいた政策提言を行った。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-01-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201122031C

成果

専門的・学術的観点からの成果
「起訴猶予となり、保護観察所に更生緊急保護の申出を行った高齢者・知的障害者」の調査により、これまで実情が把握できていなかった「触法・被疑者」となった高齢・障害者の実態が明らかになった。また、文献調査や現地調査によって、(1)諸外国では対象者のみの刑事司法手続きが存在し、(2)司法と福祉が連携・協働して対象者を社会へダイバードする道が用意されていること、また(3)経済学上の手法である費用便益分析により警察の適切な早期介入とダイバージョンは経営学上からも有効であることが明らかになった。
臨床的観点からの成果
特記事項なし
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
本研究では刑事司法と福祉との連携によって、対象者の人権保障を貫徹する施策を設立することが期待されている。「地域社会内訓練事業」において、矯正施設ではなく福祉での更生支援が実施されたこと、障害者の特性と同事業の取り組みを踏まえ、5名の対象者に対して実刑ではなく保護観察付執行猶予という判決が下った。この取り組みと政策提言を踏まえ、長崎地方検察庁と最高検察庁との間で「障がい者審査委員会」「助言・立会人」の試行が開始されたことは、将来の制度化につながる大きな成果であった。
その他のインパクト
「改善更生」や「再犯防止」を目的とする本研究の取り組みは「罪」に対する「罰」を目的としていた日本の刑事政策のあり方に一石を投じる試みであり、1年間にわたる新聞での長期連載をはじめ、テレビ等のマスコミで大きく取り上げられることとなった。また、記念シンポジウムを開催し、法曹関係者への啓蒙に努めた。

発表件数

原著論文(和文)
20件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
シンポジウム「触法障がい者への司法福祉的アプローチ」

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
藤本哲也
犯罪学の散歩道(209):ニュージーランドにおける精神障害者の刑事手続に関する裁判官マニュアル
戸籍時報  (2010)
原著論文2
藤本哲也
ニュージーランドにおける精神障害者の刑事手続に関する裁判官マニュアル
白門  (2010)
原著論文3
浜井浩一
法律家のための犯罪学入門―ノルウェーから見えてくる日本の高齢者犯罪増加の原因
季刊刑事弁護  (2010)
原著論文4
浜井浩一
法律家のための犯罪学入門(7)イタリアにおける触法障がい・高齢者の処遇について
季刊刑事弁護  (2011)
原著論文5
浜井浩一
法律家のための犯罪学入門(10)地域や民間を基盤とするイタリアの犯罪者処遇
季刊刑事弁護  (2011)
原著論文6
浜井浩一
触法障がい者の支援-「司法と福祉の連携」を考える
ノーマライゼーション  (2011)
原著論文7
浜井浩一
少子・高齢化社会における犯罪・非行対策-持続可能な刑事政策を目指して 少子・高齢化が犯罪に与える影響とその中で持続可能な刑罰(刑事政策)の在り方-犯罪学からの提言
犯罪社会学  (2011)
原著論文8
浜井浩一
誰を何のために罰するのか -イタリアにおける触法精神障がい者及び高齢犯罪者の処遇を通して日本の刑罰と更生について考える
人権の刑事法学:村井敏邦古稀記念論文集  (2011)
原著論文9
斎藤司
社会内処遇をめぐる動向と課題
龍谷法学  (2010)
原著論文10
古川隆司
高齢者犯罪者の更生保護における課題と福祉的援護
龍谷大学矯正・保護研究センター研究年報  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201122031Z