サルコメア配列異常を主病変とする筋ジストロフィーの病因・病態の解明と治療法の開発

文献情報

文献番号
201122014A
報告書区分
総括
研究課題名
サルコメア配列異常を主病変とする筋ジストロフィーの病因・病態の解明と治療法の開発
課題番号
H21-こころ・一般-013
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
林 由起子(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 西野 一三(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部)
  • 野口 悟(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部)
  • 毛塚 悦子(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第一部)
  • 大久 敬(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第一部)
  • 松田 知栄(独立行政法人 産業技術総合研究所)
  • 高野 和儀(千葉大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
27,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
横紋筋の基本収縮構造単位であるサルコメア配列異常を主病変とし、細胞内にタンパク質の異常蓄積を伴う筋ジストロフィー(筋原線維性ミオパチー; MFM)について、その病因・病態を明らかにすることを目的とする。
研究方法
(独)国立精神・神経医療研究センターの骨格筋レポジトリーより抽出した、本邦MFM 129家系について計16遺伝子におよぶ大規模変異スクリーニングを行い、病因を明らかにするとともに、臨床的、筋病理学的、細胞生物学的解析を行い、病態との関連について検討した。またネマリンミオパチー30例におけるネブリンの関与について検討を進めた。
結果と考察
変異スクリーニングの結果、MFM既知遺伝子の変異を17%に、新規疾患候補遺伝子を含む全解析遺伝子解析の結果からは、約半数に様々な遺伝子変化が認められた。既知疾患原因遺伝子については、原因遺伝子ごとの臨床病理学的解析を行い、それぞれの臨床病理学的特徴を明らかにした。今年度は特に、本邦で初めて見いだされたVCP変異7家系を中心に臨床病理学的解析を行った。また数多く見いだされた新規変異候補に対しては、病態との関連を明らかにするために、細胞生物学的解析ならびにモデル動物を使った解析を行った。その結果、エレクトロポレーション法を用いたマウス骨格筋への変異遺伝子発現は、ヒト病理変化を効率よく再現でき、効果的な方法の1つであることを明らかにした。また変異体発現メダカも有用なモデル生物であることを確認した。
結論
サルコメア構造異常をきたす原因はきわめて多彩であり、変異タンパク質それぞれの具体的な病態への関与を明らかにするには多大な労力が必要となる。効率の良いスクリーニング法と病態解析方法の開発が必須である。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201122014B
報告書区分
総合
研究課題名
サルコメア配列異常を主病変とする筋ジストロフィーの病因・病態の解明と治療法の開発
課題番号
H21-こころ・一般-013
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
林 由起子(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 西野 一三(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部)
  • 野口 悟(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部)
  • 毛塚 悦子(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部)
  • 大久 敬(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部)
  • 松田 知栄(独立行政法人 産業技術総合研究所)
  • 高野 和儀(千葉大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
横紋筋の基本収縮構造単位であるサルコメア配列異常を主病変とし、細胞内にタンパク質の異常蓄積を伴う筋ジストロフィー(筋原線維性ミオパチー; MFM)を中心に、その病因・病態を明らかにし、治療法開発への手がかりを得ることを目的とした。
研究方法
(独)国立精神・神経医療研究センターの骨格筋レポジトリーより抽出した、本邦MFM 129家系について計16遺伝子におよぶ大規模変異スクリーニングを行い、病因を明らかにするとともに、臨床的、筋病理学的、細胞生物学的解析を行い、病態との関連について検討した。またネマリンミオパチー30例についてネブリンの関与について検討を進めた。
結果と考察
変異スクリーニングの結果、MFM既知遺伝子の変異を17%に、新規疾患候補遺伝子を含む全解析遺伝子解析の結果からは、約半数に様々な遺伝子変化が認められた。既知疾患原因遺伝子については、原因遺伝子ごとの臨床病理学的解析を行い、それぞれの臨床病理学的特徴を明らかにした。このうち、本邦で初めてVCP変異例7家系を見いだし、臨床病理学的特徴を明らかにした。一方、ネマリンミオパチーにおけるネブリンC末端とN-WASPとの関連についても検討を進めた。数多く見いだされた新規変異候補に対しては、病態との関連を明らかにするために、細胞生物学的解析ならびにモデル動物を使った解析を行った。その結果、エレクトロポレーション法を用いたマウス骨格筋への変異遺伝子発現は、ヒト病理変化を効率よく再現でき、効果的な方法の1つであることを明らかにした。また変異体発現メダカも有用なモデル生物であることを確認した。
結論
サルコメア構造異常をきたす原因はきわめて多彩であり、変異タンパク質それぞれの具体的な病態への関与を明らかにするには多大な労力が必要となる。効率の良いスクリーニング法と病態解析方法の開発が必須であり、更なる研究の遂行が必須である。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201122014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
筋線維構造の基本単位であるサルコメアの構造異常には、Z線関連タンパク質の異常が深く関わっており、既知疾患原因遺伝子産物はいずれもZ線に関連するものである。本研究では、複数の新規疾患関連候補遺伝子を選出し変異スクリーニングを行った結果、新たに8遺伝子に変異を見いだした。また、変異部位の違いと筋細胞内凝集体の不溶性ならびに筋病理変化の違いを短時間で再現しうるエレクトロポレーション法を開発した。
臨床的観点からの成果
サルコメア配列異常を主病変とし、細胞内にタンパク質の異常蓄積を伴うMFM 129例について、計16遺伝子の変異スクリーニングを行い、17%に既知原因6遺伝子の変異を、30%に新規8疾患関連遺伝子の変異を見いだした。既知疾患原因遺伝子異常については、それぞれの病因と臨床病理学的特徴を明らかにし、一方、本邦初のVCP変異例を複数見いだし、その臨床病理学的特徴を明らかにした。 
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
VCPは前頭側頭葉痴呆、骨Paget病を伴うミオパチーならびに家族性筋萎縮性側索硬化症の原因遺伝子として知られているが、本邦では、ミオパチーで発症する場合が多く、骨病変は少ない。VCP変異例の頻度は少なくないことから、成人発症のミオパチーに何らかの神経症状を合併する場合、本症を念頭に置く必要があることを示した。
その他のインパクト
林由起子:超希少疾病・筋ジストロフィーの病因・病態解明と治療法開発に向けて.MEDICAMENT NEWS. 第2096号,8.15, 2012

発表件数

原著論文(和文)
18件
原著論文(英文等)
19件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
72件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shalaby S, Mitsuhashi H, Hayashi Yk, et al.
Defective Myotilin Homodimerization Caused by a Novel Mutation in MYOT Exon 9 in the First Japanese Limb Girdle Muscular Dystrophy 1A Patient.
J Neuropathol Exp Neurol. , 68 (6) , 701-707  (2009)
10.1097/NEN.0b013e3181a7f703
原著論文2
Park YE, Hayashi YK, Bonne G, et al.
Autophagic degradation of nuclear components in mammalian cells.
Autophagy , 5 (6) , 795-804  (2009)
原著論文3
Hayashi YK, Matsuda C, Ogawa M, et al.
Human PTRF mutations cause secondary deficiency of caveolins resulting in muscular dystrophy with generalized lipodystrophy.
J Clin Invest. , 119 (9) , 2623-2633  (2009)
10.1172/JCI38660
原著論文4
Murakami T, Hayashi YK, Ogawa M, et al.
A novel POMT2 mutation causes mild congenital muscular dystrophy with normal brain MRI.
Brain Dev. , 31 (6) , 465-468  (2009)
10.1016/j.braindev.2008.08.005
原著論文5
Yamazaki Y, Kamei Y, Sugita S, et al.
The cathepsin L gene is a direct target of FOXO1 in skeletal muscle.
Biochem J , 427 (1) , 171-178  (2010)
原著論文6
Tominaga K, Hayashi YK, Goto K, et al.
Congenital myotonic dystrophy can show congenital fiber type disproportion pathol-ogy.
Acta Neuropathol. , 119 (4) , 481-486  (2010)
10.1007/s00401-010-0660-7
原著論文7
Mitsuhashi H, Hayashi YK, Matsuda C, et al.
Specific phosphorylation on Ser 458 of A-type lamins in LMNA-associated myopathy patients.
J Cell Sci , 123 , 3893-3900  (2010)
10.1242/jcs.072157
原著論文8
Liang WC, Nishino I
Lipid Storage Myopathy.
Curr Neurol Neurosci Rep , 11 (1) , 97-103  (2011)
原著論文9
Liang WC, Mitsuhashi H, Keduka E, et al.
TMEM43 Mutations in Emery-Dreifuss Muscular Dystrophy-Related Myopathy.
Ann Neurol, , 69 (6) , 1005-1013  (2011)
10.1002/ana.22338
原著論文10
Mitsuhashi S, Ohkuma A, Talim B, et al.
A congenital muscular dystrophy with mitochondrial structural abnormalities caused by defective de novo phosphatidylcholine biosynthesis.
Am J Hum Genet. , 88 (6) , 845-851  (2011)
10.1016/j.ajhg.2011.05.010
原著論文11
Komaki H, Hayashi YK, Tsuburaya R, et al.
Inflammatory changes in infantile-onset LMNA-associated myopathy.
Neuromuscul Disord. , 21 (8) , 563-568  (2011)
10.1016/j.nmd.2011.04.010
原著論文12
Mitsuhashi S, Hatakeyama H, Karahashi M, et al.
Muscle choline kinase beta defect causes mitochondrial dysfunction and increased mitophagy.
Hum Mol Genet. , 20 (19) , 3841-3851  (2011)
10.1093/hmg/ddr305
原著論文13
Fujita M, Mitsuhashi H, Isogai S, et al.
Filamin C plays an essential role in the maintenance of the structural integrity of cardiac and skeletal muscles, revealed by the medaka mutant zacro.
Dev Biol. , 361 (1) , 79-89  (2012)
10.1016/j.ydbio.2011.10.008
原著論文14
Sukigara S, Liang WC, Komaki H, et al.
Muscle glycogen storage disease 0 presenting recurrent syncope with weakness and myalgia.
Neuromuscul Disord. , 22 (2) , 162-165  (2012)
10.1016/j.nmd.2011.08.008
原著論文15
Shi Z, Hayashi YK, Mitsuhashi S, et al.
Characterization of the Asian myopathy patients with VCP mutations.
Eur J Neurol. , 19 (3) , 501-509  (2012)
10.1111/j.1468-1331.2011.03575.x
原著論文16
Furusawa Y, Mori-Yoshimura M, Yamamoto T, et al.
Effects of enzyme replacement therapy on five patients with advanced late-onset glycogen storage disease type II: a 2-year follow-up study.
J Inherit Metab Dis. , 35 (2) , 301-310  (2012)
10.1007/s10545-011-9393-6
原著論文17
Suzuki N, Aoki M, Mori-Yoshimura M, et al.
Increase in number of sporadic inclusion body myositis (sIBM) in Japan.
J Neurol. , 259 (3) , 554-556  (2012)
10.1007/s00415-011-6185-8
原著論文18
Keduka E, Hayashi YK, Shalaby S, et al.
In Vivo Characterization of Mutant Myotilins.
Am J Pathol. , 180 (4) , 1570-1580  (2012)
10.1016/j.ajpath.2011.12.040
原著論文19
Komagamine T, Hayashi YK, Nishino I, et al.
Selective muscle involvement in a family affected by a second LIM domain mutation of fhl1: An imaging study using computed tomography
J Neurol Sci , 318 (1-2) , 163-167  (2012)
10.1016/j.jns.2012.04.007
原著論文20
Tsuburaya RS, Hayashi YK, Nishino I, et al.
Acid phosphatase-positive globular inclusions is a good diagnostic marker for two patients with adult-onset Pompe disease lacking disease specific pathology
Neuromuscul Disord , 22 (5) , 389-393  (2012)
10.1016/j.nmd.2011.11.003

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
2017-05-23

収支報告書

文献番号
201122014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
35,360,000円
(2)補助金確定額
35,360,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 18,735,534円
人件費・謝金 6,940,142円
旅費 1,175,680円
その他 348,644円
間接経費 8,160,000円
合計 35,360,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
-