医療観察法の運用面の改善等に関する研究

文献情報

文献番号
201122012A
報告書区分
総括
研究課題名
医療観察法の運用面の改善等に関する研究
課題番号
H21-こころ・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小山 司(北海道大学 大学院医学研究科精神医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 伊豫 雅臣(千葉大学 大学院医学研究院精神医学)
  • 三澤 孝夫(国立精神・神経センター病院)
  • 八木 深(独立行政法人国立病院機構東尾張病院)
  • 角野 文彦(滋賀県健康福祉部健康推進課)
  • 松原 三郎(医療法人松原愛育会松原病院山)
  • 山本 輝之(成城大学法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
11,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、医療観察法の運用面における種々の課題について司法精神医学的観点を踏まえつつ研究するとともに解決方策の提示を行い、医療観察法の運用改善に資することである。過去2年間の調査・研究により抽出された問題点を整理・把握し、その具体的な改善策を提示することを主眼とした。
研究方法
本研究班では6つの分担研究を行った。各分担研究のテーマに従い、アンケート調査、各種研修会の実施、ハンドブック等の作成、法学的視点での研究等を実施した。
結果と考察
(1)司法精神医療に携わる医師の育成と確保に関する研究:研修医及び若手医師を対象に、司法精神医学の専門教育モデルを用いた全国規模の研修会を実施した。(2)司法精神医療における行政機関の役割に関する研究:平成17年?23年までに保健所が関わった全事例に対して質問調査を実施した。(3)医療観察法制度全般に対する医学的視点からの評価研究:処遇困難事例検討会を開催し、再入院や死亡事例等を調査・検討した。(4)精神保健判定医に必要な知識等の習得方法に関する研究:研修会全受講生を対象としたアンケート調査およびシンポジウムを行った。また、医療観察法の鑑定・審判の考え方を整理した。(5)医療観察法制度全般に対する法学的視点からの評価研究:精神医療や行政・司法の実務者が参加した研究会を通じ医療観察法の運用面における法的問題の整理を行った。また、重要な判例について詳細な分析・考察を行った。(6)司法精神医療に携わる精神保健参与員の育成と確保に関する研究:カンファレンス(審判期日前・後協議)や審判期日の施行状況の特徴を実態調査した。
結論
精神保健判定医や精神保健参与員の育成・教育について参加型のワークショップやケースブック・ハンドブックなどのツールが有効であると考えられた。また、一般精神科医の司法精神医学への関心を高め、理解を深めることは、医療観察法を担う人材を育成するためには欠かすことのできない視点である。一方、通院処遇の実態や全国の行政機関の取り組みの実態を明らかにすることにより、医療観察法制度が概ね良好に機能していると考えられたが、再入院事例や処遇困難事例の検討を通じて医療観察法の運用上の問題点も浮き彫りになった。さらに裁判実務に関しても、高等裁判所に抗告がなされた事件および最高裁判所に再抗告がなされた事件などの判例を通して、その運用上の問題点が確認された。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201122012B
報告書区分
総合
研究課題名
医療観察法の運用面の改善等に関する研究
課題番号
H21-こころ・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小山 司(北海道大学 大学院医学研究科精神医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 伊豫 雅臣(千葉大学 大学院医学研究院精神医学)
  • 三澤 孝夫(国立精神・神経センター病院)
  • 八木 深(独立行政法人国立病院機構東尾張病院)
  • 角野 文彦(滋賀県健康福祉部健康推進課)
  • 松原 三郎(医療法人松原愛育会松原病院)
  • 山本 輝之(成城大学法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は医療観察法の運用面における種々の課題について司法精神医学的観点を踏まえつつ研究するとともに、その解決方策を提示し、運用面の改善に資することである。
研究方法
本研究班では6つの分担研究を実施した。まず医療観察法の運用面での実態調査を行い、抽出された問題点を整理・把握し、その課題を明らかにした上で具体的な改善策を提示することを主眼に各分担研究を行った。各分担研究のテーマに従い、アンケート調査、各種研修会の実施、ハンドブック等の作成、法学的視点での研究などを実施した。
結果と考察
各分担研究を通じて以下の研究結果を得た。(1)司法精神医療に携わる医師の育成と確保に関する研究:司法精神医学の専門教育モデルの構築およびそれを用いた研修会の実施。(2)司法精神医療における行政機関の役割に関する研究:保健所が関わった全事例を対象に質問調査を実施。地域処遇に有用なQ&Aハンドブックの作成を行った。(3)医療観察法制度全般に対する医学的視点からの評価研究:処遇困難事例検討会や意見交換会を通じて、再入院事例等を調査・検討した。(4)精神保健判定医に必要な知識等の習得方法に関する研究:研修会全受講生を対象としたアンケート調査を行い、医療観察法判定医養成研修会の質の向上を図った。また、医療観察法仮想判定事例ケースブックを作成した。(5)医療観察法制度全般に対する法学的視点からの評価研究:精神医療や行政・司法の実務者が参加した研究会継続的に行った。また、重要な判例について詳細な分析を行い、医療観察法の法的問題点を考察した。(6)司法精神医療に携わる精神保健参与員の養成と支援に関する研究:カンファレンス(審判期日前・後協議)や審判期日の施行状況の特徴を実態調査し、最終的には医療観察法審判ハンドブックを作成した。
結論
上記の分担研究を通して、医療観察法の様々な側面について検討した。現在のところ、医療観察法処遇対象者の再犯率が低いこと等を考慮すると、概ね良く機能していると考えられるが、処遇事例が集積される中で、その問題点及び課題も明らかになりつつある。今後、医療観察法が有効で現実的な法システムとして維持されるためには、運用面の実態を把握し、その適正な運用を実践する方策を継続的に研究する必要がある。医療観察法の適切な運用と、それを取り巻く環境整備は、わが国の司法精神医療のみならず、精神医療全体の底上げに大いに資することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201122012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
司法精神医療のイメージとニードを明らかにするとともに、その内容が一般精神科医療と深く関連していることに注目し、司法精神医学の専門教育モデルを作成した。さらに、そのモデルに沿った研修会等を実施した。また、法学的な観点からの調査・研究も実施した。精神医療や行政・司法の実務者が参加した研究会継続的に行い、重要な判例について詳細に分析し、医療観察法の法的問題点を考察した。さらに諸外国の司法精神医療制度を参考に、比較法的な検討を行い、法改正に向けた具体的な提言を行った。
臨床的観点からの成果
医療観察法制度全般に対する医学的視点からの評価研究においては、医療観察法通院処遇における処遇困難事例検討会や意見交換会を通して、医療観察法全体の問題点を検討した。また、再入院事例などの情報を収集し、個々の事例の問題点について考察した。また、精神保健判定医に必要な知識等の習得方法に関する研究では、研修会全受講生を対象としたアンケート調査を行い、医療観察法判定医養成研修会の質の向上を図った。
ガイドライン等の開発
医療観察法の運用に関連した保健所の業務内容について、実態調査を行い、また保健所が関わった全事例を対象に質問調査を実施し、地域処遇に有用なQ&Aハンドブックの作成を行った。また、事例を仮想モデル化した医療観察法仮想判定事例ケースブックを作成した。さらにカンファレンス(審判期日前・後協議)や審判期日の施行状況の特徴を実態調査し、精神保健参与員(含:精神保健審判員)の育成、研修等にも利用出来る医療観察法審判ハンドブックを作成した。
その他行政的観点からの成果
司法精神医療における行政機関の役割に関する研究では、保健所の業務の実態を把握することを目的にアンケート調査を実施し、地域処遇における保健所の課題を明らかにした。また、司法精神医療から地域精神保健福祉活動へ移行した事例を中心に、その実態を把握し、適切かつ継続的な医療の体制整備の状況、対象者の社会復帰の現状についての検証を行った。
その他のインパクト
精神保健判定医に必要な知識等の習得方法に関する研究では、名古屋司法精神医学シンポジウムを開催し、平成21年度「裁判員裁判における新しい精神鑑定のあり方」、平成22年度「発達障害と司法精神医学」、平成23年度「性犯罪の司法精神医学と治療・処遇」というテーマで行った。法曹三者も参加して開催し、司法精神医療にかかわる関係者の知識や認識を共有し、司法精神医学への興味が拡大された。

発表件数

原著論文(和文)
18件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ハンドブック作成

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
水留正流
医療観察法と刑事司法
臨床精神医学 , 38 (5) , 523-528  (2009)
原著論文2
山本輝之
最高裁平成19年7月25日決定をめぐって
臨床精神医学 , 38 (5) , 60-606  (2009)
原著論文3
柑本美和
医療観察法における再審の可能性
臨床精神医学 , 38 (5) , 609-614  (2009)
原著論文4
松原三郎
医療観察法対象者の地域サポートの将来像
臨床精神医学 , 38 (5) , 641-645  (2009)
原著論文5
八木 深
精神保健判定医のスキルアップ
臨床精神医学 , 38 (5) , 679-684  (2009)
原著論文6
三澤孝夫
精神保健参与員の役割はいかにあるべきか
臨床精神医学 , 38 (5) , 687-691  (2009)
原著論文7
八木 深
医療観察法指定入院医療機関における治療の現状と課題
精神科治療学 , 24 (9) , 1049-1056  (2009)
原著論文8
松原三郎
医療観察法の将来像
精神医学 , 51 (12) , 1144-1145  (2009)
原著論文9
山本輝之
心神喪失者等医療観察法施行後の課題
公衆衛生 , 73 (6) , 433-437  (2009)
原著論文10
山本輝之
医療観察法と判例の運用状況
刑事法ジャーナル , 19 , 2-10  (2009)
原著論文11
山本輝之
司法精神医学の法的課題 ―心神喪失者等医療観察法を中心にー
臨床精神医学 , 39 (10) , 1299-1304  (2010)
原著論文12
松原三郎
触法精神障害者の地域ケアはいかにあるべきか
臨床精神医学 , 39 (10) , 1321-1328  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201122012Z