医療観察法における医療の質の向上に関する研究

文献情報

文献番号
201122011A
報告書区分
総括
研究課題名
医療観察法における医療の質の向上に関する研究
課題番号
H21-こころ・一般-010
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中島 豊爾(地方独立行政法人 岡山県精神科医療センター 管理部・医療部)
研究分担者(所属機関)
  • 村上 優(国立病院機構 琉球病院)
  • 平林 直次(国立精神・神経医療研究センター病院)
  • 来住 由樹(地方独立行政法人 岡山県精神科医療センター )
  • 武井 満(群馬県立精神医療センター)
  • 岩成 秀夫(神奈川県立精神医療センター)
  • 松原 三郎(医療法人財団 松原愛育会松原病院)
  • 平田 豊明(静岡県立こころの医療センター)
  • 宮本 真巳(東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科)
  • 五十嵐 禎人(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
21,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療観察法における医療の質を向上させ、適切な法の運用の現実的方略を実践的に明らかにし、具体的提言を行うことを目的とした。
研究方法
入院処遇、通院処遇さらに対象者の転帰・予後、多職種チームによる医療の実際と効果、医療観察法の運用における人権擁護の各班において、相互に連携をとりながら研究を進めた。特に入院医療に関する班は、実際に医療サービスの質の向上と均霑化を図るために、ピアレビュの手法を駆使して研究を行った。
結果と考察
推計入院日数の中央値は748日、平均値は897日で、入院日数の長期化が見られる。一方、入院医療については、多職種によるピアレビュ研究によって、各指定入院医療機関の均霑化がかなり進展してきた。その際、長期化困難例の相互検討が役立つことも明らかになった。また、長期化群の検討からは、精神病症状の重篤度と内省・洞察の希薄さが長期化を予測する因子として抽出された。この際、mECTとクロザピンの使用が、治療反応性を考える上でも重要であることが指摘されている。次に、通院医療に関しては、通院処遇ワークショップを引き続き開催し、意見を総括するとともに、「通院ワークブック」「通院ワークブックの使い方」「通院導入ハンドブック」を作成し、実地の使用に供することとした。さらに、対象者の転帰・予後に関する研究はこの法に対する評価に係わる重要な事項であるが、今回の研究からは、医療観察法の入院処遇からの治療継続率は、98%と高く、大きな治療成果をあげている一方で、通院処遇へ移行した者の内18%は精神保健福祉法下の入院へ移行しており、一定の限界を示していた。多職種によるチーム医療は、着実に定着している一方、人権擁護に関する研究において、40%の施設にはmECTの設備がなく、17%の施設はクロザピン導入の予定がないと回答していたことは、倫理的な面からも今後検討の必要があると考えられた。
結論
入院医療機関相互のピアレビュ研究については、その大部分を研究から事業に移行することが適切であろう。また、医療観察法における5%程度の長期化困難群に対する病床の整備やプログラム開発を始める必要があるのではないか。さらに、治療反応性に関しては、mECTとクロザピン投与の有無を評価に加える必要があろう。最後に、本法の評価を決する、転帰・予後に関する研究調査には、省庁の壁を越えた協力が必要であることを強調したい。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-12-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201122011B
報告書区分
総合
研究課題名
医療観察法における医療の質の向上に関する研究
課題番号
H21-こころ・一般-010
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中島 豊爾(地方独立行政法人 岡山県精神科医療センター 管理部・医療部)
研究分担者(所属機関)
  • 村上 優(国立病院機構 琉球病院)
  • 平林 直次(国立精神・神経医療研究センター病院)
  • 来住 由樹(地方独立行政法人 岡山県精神科医療センター )
  • 武井 満(群馬県立精神医療センター)
  • 岩成 秀夫(神奈川県立精神医療センター)
  • 松原 三郎(医療法人財団 松原愛育会松原病院)
  • 平田 豊明(静岡県立こころの医療センター)
  • 宮本 真巳(東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科)
  • 五十嵐 禎人(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医療観察法における医療の質を向上させ、適切な法の運用の現実的方略を実践的に明らかにし、具体的提言を行うことを目的とした。
研究方法
 4つの入院処遇研究班、2つの通院処遇、さらに対象者の転帰・予後、多職種チームによる医療の実際と効果、医療観察法の運用における人権擁護の各研究班において、相互に連携をとりながら研究を進め、主任研究者はこれらの総括を行った。
結果と考察
 医療観察法の運用は、6年余を経てほぼ安定してきている。しかし、平成23年度の推計入院日数の中央値は748日、平均値は897日で、入院日数の長期化が見られる。一方、入院医療については、多職種によるピアレビュ研究によって、各指定入院医療機関の医療サービスがチーム医療を中心に、均霑化がかなりの進展をみた。その際、長期化困難例の相互検討が役立つことも明らかになった。また、長期化群の検討からは、精神病症状の重篤度と内省・洞察の希薄さが長期化を予測する因子として抽出された。この際、mECTとクロザピンの使用が、治療反応性を考える上でも重要であることが指摘されている。次に、通院医療に関しては、通院処遇ワークショップを各地で9回開催し、意見を総括して3部構成の「通院ワークブック」を作成し、実地の使用に供することとした。さらに、対象者の転帰・予後に関する研究においては、医療観察法の入院処遇からの治療継続率は、98%と高く、大きな治療成果をあげている一方で、通院処遇へ移行した者の内18%は精神保健福祉法下の入院へ移行しており、一定の限界を示していた。人権擁護に関する研究において、40%の施設にはmECTの設備がなく、17%の施設はクロザピン導入の予定がないと回答していたことは、倫理的な面からも今後検討の必要があると考えられた。
結論
 入院医療機関相互のピアレビュ研究については、その大部分を研究から事業に移行することが適切であろう。また、医療観察法における5%程度の長期化困難群に対する病床の整備やプログラム開発の準備を始める必要があるのではないか。さらに、治療反応性に関しては、mECTとクロザピン投与の有無を評価に加える必要があろう。最後に、医療観察法の評価を決する、転帰・予後に関する研究調査には、省庁の壁を越えた協力が必要であることを強調したい。また、行政施策の資料となる経時的基礎的データの収集、分析は今後とも続けていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201122011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
・医療観察法対象者の処遇の流れ及び処遇終了に至るフロー図を作成した。
・多職種でのピアレビュによる入院医療の均霑化において重要な視点を抽出した。
・鑑定などの医療観察法に関連した状況が把握しやすい群馬県における実態から、必要な医療観察法入院病床数を予測した。
臨床的観点からの成果
・入院医療の質の均霑化を図るために、多職種によるピアレビュを行い、相応の効果をあげた。
・医療観察法対象者の入院期間等について、経年的変化を明らかにした。平均在院日数が延長してきており、5~10%の対象者が入院の長期化に直面している。入院長期化の要因として、広汎性発達障害、精神遅滞等の合併が認められる。ただし、長期化群を特徴づけるのは、精神病症状の強さと内省・洞察の希薄さである。
・開発したチェックシートを用いて、引き続き長期入院患者の退院促進を継続している。
ガイドライン等の開発
・指定入院医療機関のFidelityを確保するため、チェックシートを作成した。
・「共通評価項目」を基本として「多職種チーム経過シート」を開発した。
・「通院ワークブック」「通院ワークブックの使い方」「通院導入ハンドブック」からなる「通院処遇ワークブック」を作成した。
・治療反応性の有無についての判断はクロザピンの投与及びm-ECTの施行の後に行うべきであることを明らかにした。
その他行政的観点からの成果
・入院処遇の質的均霑化を求めるために、多職種によるピアレビュが有効であることを明らかにし、それをもとに2012年よりピアレビューの事業化がなされた。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
18件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
13件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
村上 優
触法精神障害者の自殺
精神科治療学 , 25 (2) , 231-236  (2010)
原著論文2
村上 優
医療観察法と多職種チーム医療
日本精神科病院協会雑誌 , 30 , 759-764  (2011)
原著論文3
村上 優
医療観察法の存続は可能か・指定入院医療機関より
精神誌 , 115 , 468-476  (2011)
原著論文4
村上 優
物質使用障害の精神鑑定の実際
精神医学 , 973-981  (2011)
原著論文5
松原三郎
医療観察法対象者の地域サポートの将来像
臨床精神医学 , 38 (5) , 641-645  (2009)
原著論文6
松原三郎
触法精神障害者の地域ケアはいかにあるべきか
臨床精神医学 , 39 (10) , 1321-1328  (2010)
原著論文7
松原三郎
医療観察法における通院処遇
法と精神医療 , 26 , 54-64  (2011)
原著論文8
松原三郎
通院処遇の実際と問題点
Schizophrenia Frontier , 12 (3) , 167-172  (2011)
原著論文9
武井満
医療観察法と処遇困難患者
臨床精神医学 , 38 , 709-713  (2009)
原著論文10
武井満
人格障害ケースの非自発入院を考える
日精協誌 , 28 , 33-37  (2009)
原著論文11
武井満
司法精神医学の「未来」
司法精神医学 , 5 , 34-43  (2010)
原著論文12
来住 由樹
心神喪失者等医療観察法の運用の現状と今後の見直し
法と精神医療 , 25 , 54-65  (2010)
原著論文13
美濃由紀子,龍野浩寿,宮本真巳
指定入院医療機関と特定医療施設における司法精神医療の現状と課題-医療観察法の指定入院医療機関等に関する改正附則第2条をめぐって-
日本精神科看護学会誌 , 53 (2) , 222-226  (2011)
原著論文14
美濃由紀子,牧野貴樹,宮本真巳
指定通院医療機関における触法精神障害者の治療・ケアの現状と課題-多職種チームスタッフの困難感に焦点をあてて-
司法精神医学 , 6 (1) , 2-9  (2011)
原著論文15
美濃由紀子,龍野浩寿,宮本真巳,他
医療観察法病棟における治療プログラムの実態と運営・般化をめぐる困難-看護師が主催する治療プログラムに焦点をあてて-
日本精神科看護学会誌 , 54 (2) , 61-65  (2011)
原著論文16
五十嵐禎人
医療観察法における強制的治療審査と一般精神医療への拡大
臨床精神薬理 , 14 (1) , 65-74  (2011)
原著論文17
五十嵐禎人
医療観察法における対象者の人権擁護-医療観察法病棟倫理会議を中心に
刑事政策と福祉 , 68-87  (2011)
原著論文18
松本聡子, 平林直次, 永田貴子, 他
医療観察法入院と精神保健福祉法25条措置入院の運用実態について
精神科 , 20 (1) , 89-93  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
2017-05-23

収支報告書

文献番号
201122011Z