高次脳機能障害者の地域生活支援の推進に関する研究

文献情報

文献番号
201122009A
報告書区分
総括
研究課題名
高次脳機能障害者の地域生活支援の推進に関する研究
課題番号
H21-こころ・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中島 八十一(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 河野 豊(茨城県立医療大学 病院)
  • 深津 玲子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 白山 靖彦(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 生駒 一憲(北海道大学 病院リハ医学)
  • 森 悦朗(東北大学大学院 高次脳機能障害学)
  • 市川 忠(埼玉県総合リハビリテーションセンター 医療局)
  • 入谷 清美(東京都心身障害者福祉センター)
  • 枦山 日出男(東京都心身障害者福祉センター)
  • 山田 和雄(名古屋市立大学 社会復帰医学)
  • 野村 忠雄(富山県高志リハビリテーション病院)
  • 渡邉 学(大阪府立急性期・総合医療センター)
  • 永廣 信治(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 丸石 正治(県立広島大学 保健福祉学部)
  • 蜂須賀研二(産業医科大学 リハ医学)
  • 太田 令子(千葉県千葉リハビリテーションセンター 高次脳機能障害支援センター)
  • 種村 純(川崎医療福祉大学 感覚矯正学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
18,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昨年度までと同様に、各支援拠点機関の支援状況等を把握しこれをフィードバックすることにより、自治体ごとの事業運営を一層充実させる。特に今年度においては、実際に支援対象となる個人の社会的帰結をより具体的に把握するための調査と高次脳機能障害者の取り扱いの困難事例の実態を調査することにより当該障害者の地域生活の向上を図る。
研究方法
1.全国会議、ブロック会議、自治体ごとの連絡協議会を通じて支援拠点機関の運用を推進する。2.高次脳機能障害者の認知リハビリテーション終了後の実態調査の結果をまとめ、受けた認知リハビリテーション訓練の効果と現在の生活実態との関連を明らかにする。3.中高生就学状況についての全国調査結果を集約分析。4.失語症患者の福祉サービス利用実態を集約分析する。5.高次脳機能障害をもち画像診断陰性である症例を集積し、分析、検討を加える。
結果と考察
全支援拠点機関における相談支援件数(のべ件数)は、直接相談40,481件、間接相談24,214件、合計64,695件(前年比25,553件増)と飛躍的に増加した。認知リハを受けた高次脳機能障害者の社会生活実態調査を実施した。発症から回答した支援拠点機関に入院するまでの平均日数は96日、平均在院日数は97日であった。入院リハは、主に作業・理学・言語療法を組み合わせて1日あたり各1?2単位を約3か月継続するというのが標準的であった。発症1年後における復職と一般就労の合計が23%(就学を含めて31%)であった。画像診断陰性例の全国調査の結果、画像陰性例相談者全体の1.7%であった。主に受傷・発症から長期間が経過してから相談・診断という手続きを踏んだ群と、昏睡期間がはっきりしない軽度の外傷性脳損傷の群に2大別された。小児期発症の高次脳機能障害児は手厚い支援が必要であるにもかかわらず未だ不十分であることが明らかにされた。失語症者の福祉サービス利用状況では言語療法を含むリハ訓練や就労支援はほとんど行われていなかった。
結論
全都道府県の支援拠点機関設置の活発な活動が確認され、高次脳機能障害支援普及事業は充実した成果を上げていると言い得る。今後の事業展開に必要な事項は、就労率の向上、就学への道筋の整備を中心にするべきである。画像陰性例については基礎的な条件が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201122009B
報告書区分
総合
研究課題名
高次脳機能障害者の地域生活支援の推進に関する研究
課題番号
H21-こころ・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中島 八十一(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 河野 豊(茨城県立医療大学 病院)
  • 深津 玲子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 白山 靖彦(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 生駒 一憲(北海道大学病院 リハ医学)
  • 森 悦朗(東北大学大学院 高次脳機能障害学)
  • 上小鶴 正弘(埼玉県総合リハビリテーションセンター)
  • 市川 忠(埼玉県総合リハビリテーションセンター 医療局)
  • 中村 憲司(東京都心身障害者福祉センター)
  • 入谷 清美(東京都心身障害者福祉センター)
  • 枦山 日出男(東京都心身障害者福祉センター)
  • 山田 和雄(名古屋市大社会復帰医学)
  • 野村 忠雄(富山県高志リハビリテーション 病院)
  • 渡邉 学(大阪府立急性期・総合医療センター)
  • 永廣 信治(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 丸石 正治(県立広島大学保健福祉学部)
  • 蜂須賀 研二(産業医科大学 リハ医学)
  • 太田 令子(千葉県千葉リハビリテーションセンター 高次脳機能障害支援センター)
  • 種村 純(川崎医療福祉大学 感覚矯正学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高次脳機能障害者を対象とする支援拠点機関設置と支援コーディネーターを全都道府県に設置し、地域で完結する地域支援ネットワークを構築することにより、高次脳機能障害者が居住地で暮らしながら、能力に応じたあり方で自立した日常生活及び社会生活を営むことができるようになることを目標とする。そのために必要な地域ごとの問題点を明らかにし、対処法を講じ、実践する。
研究方法
研究組織は研究代表者、全国を10に分割したブロックを総括する研究分担者及び一部の学識経験者から構成される。全国会議と分担研究者ブロックごとに開催する連絡協議会を設置し、自治体ごとの運用方針を定めた。3か年の間に、①支援拠点機関の設置推進と支援ネットワーク運用、②高次脳機能障害者の全国的な実態調査、③認知リハビリテーション技法確立と評価方法の開発、④中学生・高校生時期の就学支援、⑤就労支援体制の整備、⑥失語症患者の福祉の実態調査等を実施する。
結果と考察
平成23年度末までに全都道府県に70か所の支援拠点機関設置を見た。配置された支援コーディネーターは合計115名であった。平成23年度1年間の全支援拠点機関における相談支援件数(のべ件数)は合計64,695件であり、21年度の約2.2倍だった。平成21年度から23年度までの3年間合計で133,462件だった。精神手帳用診断書の改訂に当たり、改定案を作成するとともに、信頼性と妥当性の検証を実施した。高次脳機能障害者の社会生活実態調査を実施した。登録症例は120名であり、発症から回答した支援拠点機関に入院するまでの平均日数は96日、平均在院日数は97日であった。認知リハビリテーションは、作業・理学・言語療法を組み合わせて1日あたり各1から2単位を約3か月継続するというのが標準的であった。発症1年後では復職と一般就労の合計が23%であった。高次脳機能障害をもち画像診断陰性である症例は相談者全体の1.7%であった。中学生・高校生時期の就学支援は十分な支援体制が取れていないことが明らかにされた。失語症患者は就労支援とコミュニケーション支援の両方を必要としていたが、福祉サービスの利用は限定的であった。
結論
全都道府県に支援拠点機関が設置され、年を追うごとに活動量は増加した。高次脳機能障害支援普及事業は充実した成果を上げていると言い得る。今後の事業展開に必要な事項は、失語症者を含めて就労率の向上を図る必要があり、学童期まで含めて年少者の就学への道筋の整備が必要である。
画像陰性例については基礎的な条件が明らかになったので、取扱いの標準化を図る必要がある。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201122009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
認知リハビリテーションの帰結、小学生・中学生の就学状況、失語症者の福祉サービス利用状況、画像陰性例といった行政に直結する調査研究を学術的な水準で実行し得た。これらは本邦における高次脳機能障害者支援に関する標準的なデータであり、今後関連分野で引き続き調査が実施される時の必須参照データとなるはずである。また、得られたデータは国内を網羅している点で価値が高い。
臨床的観点からの成果
高次脳機能障害者がおかれた環境を的確に捉え、地域ごとに必要とされる支援サービスを明らかにしただけでなく、実際に地域での支援ネットワークの運用に当たったことは大きな成果である。その結果として、3年間の相談件数は累計で13万件を超え、年を追うごとに活発になっている。当事者の最終目標である就労、就学についても、調査結果としての数字だけでなく、その向上に資する活動をなした。
ガイドライン等の開発
画像陰性例について、全国で共通した取り扱いができるような仕組みを作成する必要が確認された。
その他行政的観点からの成果
平成24年06月19日第180回参議院厚生労働委員会において津田弥太郎大臣政務官の答弁において参考資料として引用された。本研究活動を通じて得られた調査結果と問題点等は直ちに行政機関にフィードバックされるとともに、地域での協議会を通じて行政での運用に資した。認知リハビリテーションを実施した症例、就学期にある高次脳機能障害者または児の実態、画像陰性例の取り扱い状況など直近の行政に必要なデータを提供することができた。また、精神障害者保健福祉手帳用診断書改定に当たり、案文作成等に寄与した。
その他のインパクト
全国規模の公開シンポジウムは合計3回実施した。地域で開催した研修会・講習会は全部で527回、参加者合計数は40,934名であった。

発表件数

原著論文(和文)
64件
原著論文(英文等)
24件
その他論文(和文)
26件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
273件
学会発表(国際学会等)
13件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
精神障害者保健福祉手帳申請用診断書書式の案文作成、信頼性、妥当性を検討した。
その他成果(普及・啓発活動)
527件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
2017-05-23

収支報告書

文献番号
201122009Z