自殺のハイリスク者の実態解明及び自殺予防に関する研究

文献情報

文献番号
201122008A
報告書区分
総括
研究課題名
自殺のハイリスク者の実態解明及び自殺予防に関する研究
課題番号
H21-こころ・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 弘人(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会精神保健研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 三宅 康史(昭和大学医学部救急医学)
  • 河西 千秋(横浜市立大学医学部精神医学)
  • 松本 俊彦(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部診断治療開発研究)
  • 川野 健治(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所自殺予防総合対策センター)
  • 野田 光彦(国立国際医療研究センター糖尿病・代謝症候群診療部)
  • 佐伯 俊成(広島大学病院医系総合診療科)
  • 横山 広行(国立循環器病研究センター心臓血管内科部門)
  • 水野 杏一(日本医科大学 内科学 循環器・肝臓・老年・総合病態部門)
  • 内村 直尚(久留米大学医学部 精神神経科学教室)
  • 夜久 均(京都府立医科大学心臓血管外科学教室)
  • 志賀 剛(東京女子医科大学医学部)
  • 木村 宏之(名古屋大学医学部付属病院精神科)
  • 山崎 力(東京大学大学院医学系研究科 臨床疫学システム講座)
  • 鈴木 伸一(早稲田大学 人間科学学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
12,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の目的は、自殺のハイリスク者として、救命救急センターへ搬送された自傷患者、高度救命救急センターに搬送された統合失調症患者、薬物・アルコール依存者、自死遺族、糖尿病患者及び循環器疾患患者をモデル的に取り上げ、その実態を明らかにするとともに、可能な自殺予防法を提案することである。
研究方法
14名の研究分担者と3名の研究協力者により研究班を編制して成果を統合した。研究法は、コホート研究、症例対照研究、横断研究等を用いた。
結果と考察
(1) 日本臨床救急医学会により、救命スタッフが自殺未遂患者へ対応するときに生じる疑問への回答集を作成し、厚生労働省と日本臨床救急医学会のWebサイトで公開した。さらに、自殺企図を含む精神科救急患者への初期対応の研修教育コースを開発した、(2) 精神科医の大多数が、統合失調症の自殺症例の経験を有していたものの、統合失調症の自殺リスクに関する知識は不足していることが示唆された、(3) うつ病性障害に罹患していることは、問題飲酒のリスクを高めることが示された、(4) 自死遺族支援グループの運営改善のための評価方法を開発した、(5) 8名の研究分担者により、慢性身体疾患 (糖尿病と循環器疾患) 患者が呈する精神症状に関する横断研究とコホート研究を実施し、精神症状 (抑うつ症状、不安症状、敵意、睡眠時無呼吸症候群) の有病率と、それらの身体疾患への影響の程度が明らかにした。
結論
自殺対策は総合的に取り組むことが重要である。本研究により、自殺ハイリスク者と考えられる統合失調症、薬物・アルコール依存症者や自死遺族の実態の一端が明らかになった。また、救急医療、一般病院総合診療科、糖尿病・代謝内科、循環器科における精神症状の実態把握と対策につながる研究が進められた。本研究成果は、これまで十分には検討されていなかったこれらの自殺ハイリスク者への支援の糸口を示している。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201122008B
報告書区分
総合
研究課題名
自殺のハイリスク者の実態解明及び自殺予防に関する研究
課題番号
H21-こころ・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 弘人(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会精神保健研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 三宅 康史(昭和大学医学部救急医学/昭和大学病院救命救急センター)
  • 河西 千秋(横浜市立大学医学部精神医学)
  • 松本 俊彦(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部)
  • 川野 健治(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所自殺予防総合対策センター)
  • 野田 光彦(国立国際医療研究センター病院 糖尿病・代謝症候群診療部)
  • 佐伯 俊成(広島大学病院総合内科・総合診療科)
  • 横山 広行(国立循環器病研究センター心臓血管内科部門)
  • 水野 杏一(日本医科大学内科学循環器・肝臓・老年・総合病態部門)
  • 内村 直尚(久留米大学医学部精神神経科)
  • 夜久 均(京都府立医科大学大学院医学研究科心臓血管外科学)
  • 志賀 剛(東京女子医科大学医学部循環器内科学)
  • 木村 宏之(名古屋大学大学院医学系研究科細胞情報医学専攻脳神経病態制御学講座精神医学分野)
  • 山崎 力(東京大学大学院医学系研究科・臨床疫学システム講座)
  • 鈴木 伸一(早稲田大学人間科学学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の目的は、自殺のハイリスク者として、救命救急センターへ搬送された自傷患者、高度救命救急センターに搬送された統合失調症患者、薬物・アルコール依存者、自死遺族、糖尿病患者及び循環器疾患患者をモデル的に取り上げ、その実態を明らかにするとともに、可能な自殺予防法を提案することである。
研究方法
14名の研究分担者と3名の研究協力者により研究班を編制して成果を統合した。研究法は、コホート研究、症例対照研究、横断研究等を用いた。
結果と考察
(1) 日本臨床救急医学会により、救命スタッフが自殺未遂患者へ対応するときに生じる疑問への回答集を作成し、厚生労働省と日本臨床救急医学会のWebサイトで公開した。さらに、自殺企図を含む精神科救急患者への初期対応の研修教育コースを開発した、(2) 統合失調症患者では、過去の自傷行為の頻度が気分障害患者と比較して低く、また自殺再企図を繰り返した事例では、前回の企図行動から1年以上経過しての再企図が気分障害と比較してオッズ比で2.8倍高いことが示された、(3) 薬物・アルコール依存患者の自殺リスクはうつ病に匹敵する水準にあることが明らかにされ、ことに薬物依存患者の自殺リスクはきわめて高度であることが確認された、(4) わが国の自死遺族支援活動に資する目的で作成された「自死遺族を支えるために:相談担当者のための指針」は、地域の自死遺族支援において一定の役割を果たしていることが確認されたが、同時にいくつかの課題があることが明らかになった、(5) 8名の研究分担者により、慢性身体疾患 (糖尿病と循環器疾患) 患者が呈する精神症状に関する横断研究とコホート研究を実施し、精神症状 (抑うつ症状、不安症状、敵意、睡眠時無呼吸症候群) の有病率と、それらの身体疾患への影響の程度が明らかにした。
結論
自殺対策は総合的に取り組むことが重要である。本研究により、自殺ハイリスク者と考えられる統合失調症、薬物・アルコール依存症者や自死遺族の実態の一端が明らかになった。また、救急医療、一般病院総合診療科、糖尿病・代謝内科、循環器科における精神症状の実態把握と対策につながる研究が進められた。本研究成果は、これまで十分には検討されていなかったこれらの自殺ハイリスク者への支援の糸口を示している。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201122008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究班では、日本臨床救急医学会や日本循環器心身医学会などの学術団体、国立国際医療研究センターや国立循環器病研究センターなどの国立高度専門医療研究センターと連動して研究を進めることができたことは、自殺対策の広がりを考える上で重要なプロセスであったと認識している。また,研究成果は、すでに複数の学術誌に掲載・受理されている。
臨床的観点からの成果
自殺未遂者と自死遺族ケアに関する「手引き」を発展させ、研修教育コースなどを開発できたことにより、当初の目的である効果的な自殺予防法の開発は達成されたと考えられる。また,統合失調症や薬物・アルコール依存者の自殺ハイリスク者の実体が解明され、精神科医等へ情報提供する必要性が示された。さらに、特に、うつ病等を併存しやすい循環器疾患患者への研究が進展し、「対応の手引き」が作成され、循環器診療において対応がなされていない自殺ハイリスク者に資することが期待できる。
ガイドライン等の開発
(1) 日本臨床救急医学科医「自殺未遂患者への対応: 救急外来(ER)・救急科・救命救急センターのスタッフのための手引き」を用いた研修が実施されている。
(2) 日本臨床救急医学科医「来院した自殺未遂患者へのケアQ&A」
(3) 日本循環器心身医学会「心疾患患者におけるうつの評価と対応の手引き」
その他行政的観点からの成果
厚生労働省の「第7回自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」(2010年9月9日)は,「過量服薬への取組―薬物治療のみに頼らない診療体制の構築に向けて」のとりまとめの際に、研究分担者 (三宅康史・松本俊彦) が本研究班の成果を報告した。
その他のインパクト
(1) 「自殺未遂者ケア研修」を開催
(2) 「救急医療における精神症状評価と初期診療(PEECTM:Psychiatric Evaluation in Emergency Care)ガイドブック-チーム医療の視点からの対応のために-」を開発
(3) 「循環器疾患患者への精神的支援に関する研修モデルの開発研究会」を開催

発表件数

原著論文(和文)
12件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
45件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Misawa F, Shimizu K, Fujii Y et al
Is antipsychotic polypharmacy associated with metabolic syndrome even after adjustment for lifestyle effects? : a cross-sectional study
BMC Psychiatry , 11 , 118-  (2011)
原著論文2
Sawamura K, Ito H, Koyama A et al
The effect of an educational leaflet on depressive patients’ attitudes toward treatment
Psychiatry Research , 177 , 184-187  (2010)
原著論文3
Okumura Y, Ito H, Kobayashi M et al
Prevalence of diabetes and antipsychotic prescription patterns in patients with schizophrenia: A nationwide retrospective cohort study
Schizophrenia Research , 119 , 145-152  (2010)
原著論文4
Nakagawa M, Kawanishi C Yamada T et al
Comparison of characteristics of suicide attempters with schizophrenia spectrum disorders and those with mood disorders in Japan
Psychiatry Res , 188 , 78-82  (2011)
原著論文5
松岡志帆, 奥村泰之, 市倉加奈子ほか
心不全患者の終末期に対する心臓専門医と看護師の認識: ICD認定施設の全国調査
日本心臓病学会誌 , 6 , 115-121  (2011)
原著論文6
Suzuki T, Shiga T, Kuwahara K et al
Impact of clustered depression and anxiety on mortality and rehospitalization in patients with heart failure
Journal of Cardiology , 64 (6) , 456-462  (2014)

公開日・更新日

公開日
2015-05-28
更新日
2017-05-23

収支報告書

文献番号
201122008Z