児童・思春期摂食障害に関する基盤的調査研究

文献情報

文献番号
201122006A
報告書区分
総括
研究課題名
児童・思春期摂食障害に関する基盤的調査研究
課題番号
H21-こころ・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小牧 元(国際医療福祉大学福岡リハビリテーション学部)
研究分担者(所属機関)
  • 生野 照子(医療法人弘道会浪速生野病院)
  • 前田 基成(女子美術大学)
  • 立森 久照((独)国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所保険計画研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
2,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
過去2年間において地域中学生を対象に行ったアンケート調査から得られたデータを引き続き解析し、また統合国際診断面接Composite International Diagnostic Interview; CIDI 3.0版のコンピュータ (CAPI) 版を一部対象者に実施し、前記アンケート結果と比較検討をおこなう。また患者群にも同様の調査を行い、それらを比較検討し、中学生における食行動異常・摂食障害傾向の客観的,信頼性の高い疫学的データを得ることである。
研究方法
過去2年間で収集し、解析可能であったアンケート約5,200名分を対象とした。内容は摂食障害診断質問紙(EDE-Q 6.0)日本語版、摂食障害発症危険因子質問項目,日常ストレス関連項目,身長・体重である。またCIDI診断面接調査に関しては、希望生徒の自宅を訪問した。連結可能匿名化によりアンケート調査結果と診断面接結果を解析し検討を行った。又、摂食障害患者群との比較のために、協力医療機関にて同様にアンケート(EDE-Q6.0の部分のみ抜粋)調査を実施した。一部患者には予備的にCIDI診断面接を行い、検討した。
結果と考察
中学生約5,200名を対象としたロジスティック多変量解析により、男女共、不適切な代償行為、特に排出行為には性的な被害体験(女子OR 2.1;男子OR2.4)が関与している可能性が示された。尚、CIDI構造化面接調査を実施した164名のデータ解析からは、摂食障害の診断基準を満たすものはいなかった。さらに126名の患者群(全て女子)のうち年齢を合致させた26名のEDE-Q得点との比較検討から、患者群は全てのサブスケールとGlobal Scoreともに有意に高得点であった。ただし拒食型、過食型、NOS(特定不能の摂食障害)の病型別に比較すると、拒食症群は食事の制限、食事へのとらわれ、過度の運動が健常群より高得点であったがGlobal Scoreでは差がなく、過食型のみ有意差が認められた。従って拒食型の生徒の把握には注意が必要と考えられた。
結論
地域における中学生のアンケート調査から、“不適切な代償行為”を有する者の頻度、それに関連する心理・社会的要因が明らかになった。また、拒食型の摂食障害の把握においては、注意が必要であることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-12-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201122006B
報告書区分
総合
研究課題名
児童・思春期摂食障害に関する基盤的調査研究
課題番号
H21-こころ・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小牧 元(国際医療福祉大学福岡リハビリテーション学部)
研究分担者(所属機関)
  • 生野 照子(医療法人弘道会浪速生野病院心身医療科)
  • 前田 基成(女子美術大学芸術学部)
  • 立森 久照(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所精神保健計画研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
若年女性で増加し,若年化傾向がみられる摂食障害に対して,特に中学生における罹患率,社会心理的危険因子などを調査する目的で、複数の調査地域から無作為に抽出した中学生を対象にして,アンケート調査・一部対象者に診断面接を実施した。その調査結果を基に児童・思春期の摂食障害への総合的対策立案を確立するための疫学的調査研究である。
研究方法
2都市中学校(生徒数:A市約18,000人;B市約14,000人)のうち、無作為に抽出された協力中学校計36校生徒約6,000人を対象とした。摂食障害診断質問紙(EDE-Q 6.0)日本語版、摂食障害発症危険因子質問項目,日常ストレス関連項目,身長・体重のアンケート調査である。内、約5200名のデータが解析可能であった。続く統合国際診断面接Composite International Diagnostic Interview; CIDI 3.0版のコンピュータ (CAPI) 版面接に関しては、希望生徒の自宅訪問を実施した。連結可能匿名化によりアンケート調査結果と診断面接結果を解析し検討を行った。摂食障害患者群との比較のために、協力医療機関にて同様にアンケート(EDE-Q6.0の部分のみ抜粋)調査を実施した。一部患者には予備的にCIDI診断面接を行い、検討した。
結果と考察
地域EDE-Q調査により女子中学生の0.87±1.29(SD)%、男子中学生の0.24±0.48% に摂食障害傾向が認められ、男女比とも欧米の報告に合致した。本傾向には食事の際のカロリー摂取へのこだわり、周囲からの体形への否定的批評、就寝時間が遅い、孤独感、完璧主義傾向等が同傾向と強く関連していた。男女共、性的な被害体験が不適切な代償行為、特に排出行為に関与している可能性が示された。
尚、CIDI構造化面接調査では統計学的結論を得るまで至らなかった。本年代を対象とした対面面接調査の困難さが推察された。さらに患者群とのEDE-Q比較調査検討から病型別特徴の差異が把握され、特に拒食症群の把握に関しては注意が必要と考えられた。
結論
地域における中学生のアンケート調査から、我が国における同年代の食行動異常・摂食障害傾向ならびに“不適切な代償行為”を有する者の頻度・男女比が明らかになった。それに関連する心理・社会的要因が明らかになった。また地域における拒食型の摂食障害の把握においては特に注意が必要であることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201122006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
摂食障害診断用自記式質問紙(EDE-Q6.0)日本語版を完成させ、地域中学生(6000余名)に実施し、同年代の摂食障害傾向を我が国で初めて疫学的に明らかにし、同障害の低年齢化を示した。発症危険因子に睡眠など日常生活リズム、性的トラウマ体験などが新たに抽出されたことは重要である。さらに世界精神保健(WMH) 統合国際診断面接CIDI 3.0版コンピュータ版摂食障害セクション等の翻訳を完成させ、同版を我が国で初めて実施し(約160名)同年代における摂食障害の診断に対する有用性と限界性を明らかにした。
臨床的観点からの成果
中学生の食行動異常・摂食障害傾向を有する者の頻度が明らかになり、発症の低年齢化が示唆された。発症危険因子として一般的因子に加え、睡眠など日常の生活リズムの乱れや性的トラウマ体験などが密接に関連して、同年齢発症要因の特異性が明らかになった。さらに自己誘発性嘔吐・下剤乱用を有する生徒が既に数%いたことは、同障害の早期発見の重要性が示唆された。また地域における同年代の拒食型摂食障害の把握に注意が必要であることも明らかになった。
ガイドライン等の開発
中学生年代の摂食障害把握に際しては成人と異なる病像・特異性が示唆され,慎重に診断を進める必要があると考えられた。特に拒食型の診断に関してはEDE-Qなど自記式質問紙さらにはCIDIなど成人を対象とした診断ツール等のみでは把握できない可能性が判明し、我が国でもDSM-V改訂に呼応した同年代の摂食障害診断基準ガイドライン作成の取り組みの必要性が示唆された。
その他行政的観点からの成果
我が国における地域の中学生を中心とした思春期年代の摂食障害に関してその頻度が明らかとなり、さらにそれに関連する日常生活の中での心理的、ならびに行動的危険因子が明らかとなった。本結果は学校保健ならびに第1次,第2次および第3次予防のための行政施策および精神保健医療福祉サービスのあり方提言のための基礎的資料となるものである。
その他のインパクト
メディカルトリビューン紙に取り上げられた。また、共同通信社取材により産経新聞、静岡新聞、北陸中日新聞など全国、地方紙ならびに教師を対象とした学校保健関連新聞に取り上げられた。また、中学、高校の保健関連の新聞社から連載執筆を依頼され、シリーズとして掲載された。さらにインターネットでも取り上げられ、話題提供ならびに同疾患の若年齢世代に与える危険性について警鐘を鳴らした。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
摂食障害-心身両面からのアプローチ、いしかわ精神保健:女子中学生、高校生における摂食障害 少年写真新聞社6.18, 26号.高校保健ニュース436-7号、中学保健ニュース1531-2号
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
小牧ら第51回日本心身医学会総会・学術講演会2010.6.26-27:長谷部ら第14回日本摂食障害学会総会,2011.9.3-4:高橋ら第52回日本心身医学会総会・学術講演会,2011.6.9-10
学会発表(国際学会等)
2件
Nishimuraら 国際摂食障害会議Salzburg, 2010.6.10-12.:Komakiら 第21回世界心身医学会議Seoul2011.8.25-28で発表。
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
福井県精神保健福祉センター思春期精神保健公開講演会2010.8.5:のびの会特別事業第13回摂食障害講演会2011.1.30:滋賀県医師会第69回滋賀県医師会学校保健学校医研修会講演会

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201122006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,100,000円
(2)補助金確定額
2,100,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 210,000円
旅費 988,811円
その他 901,205円
間接経費 0円
合計 2,100,016円

備考

備考
利率加算あり

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-