健診データを基盤として、慢性腎臓病該当者の医療費過剰支出と末期腎不全発症リスクを評価するデータベース構築研究

文献情報

文献番号
201121004A
報告書区分
総括
研究課題名
健診データを基盤として、慢性腎臓病該当者の医療費過剰支出と末期腎不全発症リスクを評価するデータベース構築研究
課題番号
H21-腎疾患・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
藤岡 知昭(岩手医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岩動 孝(岩手県医師会)
  • 小原 紀彰(岩手県医師会)
  • 岡山 明(結核予防会 第一健康相談所)
  • 小田島 智弥(岩手県保健福祉部)
  • 滝川 義明(岩手県環境保健研究センター)
  • 田郷 敏昭(岩手県予防医学協会)
  • 小笠原 邦昭(岩手医科大学 医学部)
  • 中村 元行(岩手医科大学 医学部)
  • 坂田 清美(岩手医科大学 医学部)
  • 板井 一好(岩手医科大学 医学部)
  • 大澤 正樹(岩手医科大学 医学部)
  • 小野田 敏行(岩手医科大学 医学部)
  • 丹野 高三(岩手医科大学 医学部)
  • 阿部 貴弥(岩手医科大学 医学部)
  • 大森 聡(岩手医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 腎疾患対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
2,443,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
コホート研究参加者を対象として慢性腎臓病を有する者の循環器疾患発症、死亡、介護認定、医療費についてのリスク上昇を定量的に評価することである。
研究方法
対象者は岩手県北地域コホート研究参加者26,469名である。追跡調査のエンドポイントは死亡・心筋梗塞罹患・脳卒中罹患・要介護認定・末期腎不全発症・医療費支出である。コホート参加者の生死情報は住民基本台帳の閲覧により確認し、脳卒中罹患と末期腎不全発症は岩手県地域疾病登録事業に登録された患者との照合作業を通じて把握し、心筋梗塞罹患は、岩手県北心疾患発症登録協議会のデータベースとの照合作業を通じて把握した。介護情報は、介護保険認定情報の交付を市町村と広域連合から受けてコホート研究データベースに組み入れた。医療費情報は、各市町村が保有する月別のレセプトとデータをコホート参加者に限定して収集した。健診で得られた血清クレアニチン値をもとにCKDEPI推算式を用いてCKDステージ分類を行い、ステージ2を基準としてステージ1、3a、3b、4のエンドポイント別の相対危険を多変量調整Cox回帰分析を用いて算出した。
結果と考察
コホート研究は継続して生死情報確認、脳卒中と心筋梗塞罹患者の追跡登録、要介護認定者登録が継続して実施された。岩手県末期腎不全患者登録事業は計画通りに登録事業が実施され、3,500件のデータが収集された。県北コホート研究参加12市町村中9市町村で75歳未満の研究参加者のレセプトデータを収集した。これらのデータと既存コホート研究のデータベースとの連結照合作業を実施して以下の新知見を得た。CKDステージ3aからの有意な死亡リスク上昇が観察された。またステージ1の死亡リスクが上昇していた。心筋梗塞罹患リスクはステージ3aで約2倍上昇していたが、脳卒中罹患リスク上昇は観測されなかった。末期腎不全発症リスクはステージ3以降で指数関数的なリスク上昇が観察された。CKD(eGFR<60またはアルブミン尿陽性)は死亡リスクを1.4倍、心筋梗塞罹患リスクを1.7倍、脳卒中罹患リスクを2.0倍高めていた。医療費支出はCKDにより一ヶ月あたり7,000円過剰に支出していた。
結論
本研究事業で明らかにされた、慢性腎臓病による死亡・循環器疾患発症・医療費支出への影響度は、日本人の慢性腎臓病対策の企画立案にとって貴重な資料として活用されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201121004B
報告書区分
総合
研究課題名
健診データを基盤として、慢性腎臓病該当者の医療費過剰支出と末期腎不全発症リスクを評価するデータベース構築研究
課題番号
H21-腎疾患・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
藤岡 知昭(岩手医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岩動 孝(岩手県医師会)
  • 小原 紀彰(岩手県医師会)
  • 岡山 明(結核予防会 第一健康相談所)
  • 小田島 智弥(岩手県保健福祉部)
  • 滝川 義明(岩手県環境保健研究センター)
  • 田郷 敏昭(岩手県予防医学協会)
  • 小笠原 邦昭(岩手医科大学 医学部)
  • 中村 元行(岩手医科大学 医学部)
  • 坂田 清美(岩手医科大学 医学部)
  • 板井 一好(岩手医科大学 医学部)
  • 大澤 正樹(岩手医科大学 医学部)
  • 小野田 敏行(岩手医科大学 医学部)
  • 丹野 高三(岩手医科大学 医学部)
  • 阿部 貴弥(岩手医科大学 医学部)
  • 大森 聡(岩手医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 腎疾患対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究の長期的目的は、医療保健被保険者の医療費・健診・介護情報・疾患発症・死亡のデータを統括して管理する組織とデータベースの構築をはかり、健診情報をもとに把握した住民の健康状況が疾患発症や医療費支出・介護支出にどのように影響するのかを定量的に評価する体制を整えることである。研究の短期的目的は、既存のコホート研究参加者を対象として慢性腎臓病を有する者の循環器疾患発症、死亡、介護認定、医療費についてのリスク上昇を定量的に評価することである。
研究方法
対象者は岩手県北地域コホート研究参加者26,469名である。エンドポイントは、死亡・心筋梗塞罹患・脳卒中罹患・要介護認定に新たに末期腎不全発症・医療費支出を加えた。住民基本台帳の閲覧により生死情報を確認し、地域疾病登録事業のデータベースとの照合作業により脳卒中罹患・末期腎不全発症を確認した。市町村または広域連合の保有する介護保険認定情報と月別のレセプトデータを収集した。健診で得られた血清クレアチニン値を用いて日本人推算GFR値を求めてCKDステージ分類を行い、ステージ2を基準としてステージ1、3a、3b、4のエンドポイント別の相対危険を多変量調整Cox回帰分析を用いて算出した。長期的目的達成のために先行研究事例の視察を行ってそのノウハウを学んだ。
結果と考察
ステージ3a以上とステージ1で有意な死亡リスク上昇が観察された。心筋梗塞罹患リスクはステージ3aで2倍上昇していた。脳卒中罹患リスク上昇は観測されなかった。末期腎不全発症リスクはステージ3aで2倍上昇していた。脳卒中罹患リスク上昇は観察されなかった。末期腎不全発症リスクはステージ3以降で指数関数的なリスク上昇が観察された。性年齢調整解析結果、慢性腎臓病(推算GFR60ml未満またはアルブミン尿陽性)は死亡リスクを1.4倍、心筋梗塞罹患リスクを1.7倍、脳卒中罹患リスクを2.0倍高め、医療費支出を一ヶ月あたり7,000円過剰に支出させていた。
結論
3年間の研究期間内に短期的目標である慢性腎臓病の死亡・循環器疾患罹患・医療費支出のリスク上昇を定量的に評価することができた。長期的目的を達成するためには、今回の研究事業で得たノウハウを活かすとともに、先行事例を参考に行政と研究期間のより密接な連携関係の構築と個人情報保護の仕組みを洗練させる必要がある。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201121004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
従来の日本人を対象とした疫学研究では、エンドポイントを死亡や死因においた研究が多く、心筋梗塞罹患や脳卒中罹患をエンドポイントにした前向き研究は規模の小さなコホート研究が数例存在する程度である。慢性腎臓病が、将来の末期腎不全発症にどの程度関っているのかを明らかにした研究は日本では皆無である。本研究では、慢性腎臓病は循環器疾患罹患と末期腎不全発症にどのように影響するかを定量的に明らかにした日本で初めての報告であり、学術的に価値の高い貴重な資料である。
臨床的観点からの成果
CKDステージ3a以上とステージ1で有意な死亡リスク上昇が観察され、ステージ3aで心筋梗塞罹患リスクは2倍上昇していた。ステージ3以降で末期腎不全発症の指数関数的なリスク上昇が観察された。慢性腎臓病(推算GFR60 ml 未満またはアルブミン尿陽性)は死亡リスクを1.4倍、心筋梗塞罹患リスクを1.7倍、脳卒中罹患リスクを2.0倍高め、医療費支出を1ヶ月あたり7,000円過剰に支出させていた。これらの知見は慢性腎臓病の早期予防対策の必要性を示唆する資料として活用されることが期待される。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
10件
原著論文(英文等)
28件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
80件
学会発表(国際学会等)
35件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
15件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
大澤正樹,丹野高三,板井一好,他
血液透析患者の死因と突然死に関する疫学研究
日本循環器病予防学会誌 , 47 (2) , 120-138  (2012)
原著論文2
Tanno K, Ohsawa M, Itai K,etal
Associations of marital status with mortality from all causes and mortality from cardiovascular disease in Japanese haemodialysis patients.
Nephrol Dial Transplant , 28 (4) , 1013-1020  (2013)
原著論文3
Ohsawa M, Tanno K, Itai K,etal
Comparison of Predictability of Future Cardiovascular Events Between CKD Stage Based on CKD- EPI Equation and That Based on MDRD Equation in the Japanese General Population.
Circ J , 77 (5) , 1315-1325  (2013)
原著論文4
Ohsawa M, Tanno K, Itai K,etal
Concordance of CKD stages in estimation by the CKD-EPI equation and estimation by the MDRD equation in the Japanese general population: The Iwate KENCO Study.
Int J Cardiol , 165 , 377-379  (2013)
原著論文5
Ohsawa M, Fujioka T, Ogasawara K,etal
High risks of all-cause and cardiovascular deaths in apparently healthy middle-aged people with preserved glomerular filtration rate and albuminuria: A prospective cohort study.
Int J Cardiol , 170 (2) , 167-172  (2013)

公開日・更新日

公開日
2014-05-15
更新日
2015-06-30

収支報告書

文献番号
201121004Z