CKDの早期発見、予防、治療標準化、進展阻止に関する調査研究

文献情報

文献番号
201121002A
報告書区分
総括
研究課題名
CKDの早期発見、予防、治療標準化、進展阻止に関する調査研究
課題番号
H21-腎疾患・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
今井 圓裕(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 堀尾 勝(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 井関 邦敏(琉球大学 医学部附属病院)
  • 伊藤 貞嘉(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 四方 賢一(岡山大学病院)
  • 冨田 公夫(熊本大学 大学院医学歯学研究部)
  • 細谷 龍男(東京慈恵会医科大学附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 腎疾患対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
12,610,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)CKD早期発見に必要な腎機能推算式の開発
2)CKD発症の地域差に関するの研究
3)CKD患者における心血管疾患(CVD)の危険因子の同定に関する研究
4)メタボリック症候群におけるCKD発症の危険因子に関する研究
5)虚血性腎症・腎硬化症の発症率と危険因子の同定に関する研究
6)高齢者における薬物性腎障害に関する研究
7)腎障害患者のヨード系造影剤使用に関するガイドラインの作成
研究方法
1.763例の実測イヌリンクリアランス、血清Cr、血清シスタチンCのデータを使用して、シスタチンCを加えたGFR推算式の妥当性を検討し、シスタチンCと血清CrからなるGFR推算式を作製した。
2.宮城県内11施設の腎臓高血圧外来に通院している約4000名の患者の予後をカルテおよび主治医の情報を基に収集した。
3.平成20年度の特定健診受診者(全国および沖縄県)のデータを収集し、CKDの頻度、関連因子および地域差を検討した。
4.中国中央病院人間ドック受診者5,820名、岡山県南部健康づくりセンターの1,244名、岡山県南部健康づくりセンターの健常女性53名のデータを使用した。
5.主要データに欠落のない熊本市住民健診16527名のデータを解析した。
6.全国の主要病院の腎臓内科に対して、アンケート調査を行った。
結果と考察
1.シスタチンCと血清Cr 値を併用することでより正確に糸球体濾過量を推定できた。
2.生活習慣病を原疾患とする場合と、慢性腎炎を原疾患とする場合では腎機能低下速度や心血管合併症に差があることが明らかとなった。
3.沖縄の腎不全患者は、肥満、糖尿病が多く、東北地方や関東の県とは異なる実態が明らかとなった。
4.メタボリック症候群のCKD発症のリスク因子として内蔵肥満と炎症が重要であることが、示された。アディポサイトカインのVaspinの濃度と関連するSNPを同定した。
5.腎硬化症の有病率の推定には年齢と尿蛋白が重要な因子となる。
6.薬物性腎障害の被疑薬はNSAID(25.1%)、抗腫瘍薬(18%)、抗菌薬(17.5%)であることが分かった。
結論
本研究はCKDの早期発見・予防・治療標準化・進展阻止に関して重要な研究成果を得ることができた。計画された調査研究はほぼ予定通りに進行した。これらの成果のいくつかは現在作成中のガイドラインに直ちに反映され、今後、最適なCKD対策とCVD防止策に貢献すると思われる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201121002B
報告書区分
総合
研究課題名
CKDの早期発見、予防、治療標準化、進展阻止に関する調査研究
課題番号
H21-腎疾患・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
今井 圓裕(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 堀尾 勝(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 井関 邦敏(琉球大学 医学部附属病院)
  • 伊藤 貞嘉(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 四方 賢一(岡山大学病院)
  • 冨田 公夫(熊本大学 大学院医学歯学研究部)
  • 細谷 龍男(東京慈恵会医科大学附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 腎疾患対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
以下の研究を行うことにより、CKDの早期発見・予防・治療標準化・進展阻止につなげる。
1. CKD早期発見の方法の開発 (大阪大学 堀尾 勝)
2. 末期腎不全発症の地域差に関する調査と対応 (琉球大学 井関邦敏)
3. CKDの心血管危険因子の同定と予後予測モデルの作成 (東北大学 伊藤貞嘉)
4. 生活習慣病に基づくCKDの進展抑制の方法の確立   (岡山大学 四方賢一)
5. 腎硬化症の発生率の調査とその予防対策        (熊本大学 冨田公夫)
6. 高齢者への薬剤投与とCKD対策が及ぼす効果の評価 (慈恵医大 細谷龍男)
7. 腎機能低下患者のヨード造影剤使用に関するガイドラインの作成
研究方法
1. 血清シスタチンCおよび血清クレアチニンを用いた推算式を作成し、モデルの最適化などの検討と正確度の評価を腎移植ドナーのデータを使用して行った。
2. 沖縄県と茨城県の住民健診データを比較した。
3. 宮城県内の腎疾患専門外来に通院しているCKD患者 2,712例を前向きに調査しCKDステージごとにCVD、ESRDの発症率を比較し、危険因子を同定した。
4. アルブミン尿(蛋白尿)、eGFR、血糖値、HbA1c、血中インスリン濃度、血清脂質、vaspinを測定し、アルブミン尿増加とeGFR低下と心血管イベントへの関与を検討した。
5. 熊本市の住民健診のデータから腎硬化症や虚血性腎症のリスク因子を同定した。
6. アンケート調査を解析した。
7. 腎臓学会、日本医学放射線学会、循環器学会よりの委員により、これまでの論文を吟味の上、エビデンスに基づき、クリニカルクエスチョンに答えた。
結果と考察
1. シスタチンCによる日本人のGFR推算式を作製した。
2. 透析患者の発症には、食生活、機構、社会的要因が関与していた。
3. CKD3aとCKD3bの間で心血管イベント発症に差があった。
4. メタボリック症候群患者で、CRPが独立したリスク因子であった。
5. 腎硬化症に影響する因子は、年齢、男性、BMI,高尿酸血症、高血圧、脂質代謝異常であった。
6. 薬剤の被疑薬はNSAIDs、抗腫瘍薬、抗菌薬造影剤であった。
結論
以上の研究成果は、CKDの早期発見・予防・治療標準化・進展阻止に関して、有益な情報を提供した。特にシスタチンCによるGFR推算式、腎機能低下患者に関するヨード造影剤の使用に関するガイドラインはCKDの早期発見と予防に有効であると思われる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201121002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
シスタチンCによる推算式をAm J Kidney Diseaseにrivise中である。腎不全発症率に地域差があることが分かった。日本人のGFR推算をより正確に行うことができる。CKDの発症に地域差があることが分かった。肥満の解消により、GFRが」改善することが示された。日本人のCKD患者の腎絹低下速度、CVD発症率が分かった。腎硬化症の罹病率を初めて推定できた。
臨床的観点からの成果
GFRの推算が、血清クレアチニン値と血清シスタチンC値を使用することにより、正確に計算できるようになった。シスタチンCによる推算式の完成で、るいそう患者や筋肉が多い患者においても、正確に推算できるようになった。本研究によって得られた成果が記載されているCKDの診療ガイド2012を通じて、CKD診療を改善していくことができる。
ガイドライン等の開発
腎機能低下患者におけるヨード造影剤の使用に関するガイドライン2012を作製し、2012年4月14日に発行した。これは、日本腎臓学会、日本医学放射線学会、日本循環器学会の代表者により共同で作成されたものである。今後、ダイジェスト版と英文での出版を計画している。日本腎臓学会よりCKD診療ガイドを2012年6月1日に出版した。新しいCKDの重症度分類を示し、生命予後を考慮し目標血圧を130/80mmHg以下と公表した。今後、CKD患者の治療は、本指針により大きく変化することが予想される。
その他行政的観点からの成果
依然としてNSAIDsの使用による急性腎障害発症が高いことが分かった。今後の対策を立てる必要性が示された。
その他のインパクト
市民公開講座を3回開催した。腎機能低下患者におけるヨード造影剤の使用に関するガイドラインは、日本医学放射線学会、日本腎臓学会で紹介され、評価が高かった。CKD診療ガイドは、日本腎臓学会・日本慢性腎臓病対策協議会主催の記者会見を6月1日の発売日に行い、60名を超える報道、製薬会社が参加した。すでに9万部を印刷することが決まっている。本研究により、今後、我が国のCKD診療が大きく変わることが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
71件
その他論文(和文)
32件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
41件
学会発表(国際学会等)
38件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Horio M, Imai E, Yasuda Y, et al
Performance of serum cystatin C versus serum creatinine as a marker of glomerular filtration rate as measured by inulin reenal clearance.
Clinical Excperimental Nephrology , 15 , 868-876  (2011)
原著論文2
Miyatake N, Shikata K, Makino H et al
Decreasing systolic blood pressure is associated with improving estimated glomerular filtration rate with lifestyle modification in Japanese healthy women.
Acta Med Okayama , 64 (5) , 339-343  (2010)
原著論文3
Kajitani N, Shikata K, Nakamura A et al
Microalbuminuria is a commmon risk factor for progression of nephropathy and atherosclerosis in Japanese patients with type 2 diabetes.
Diabetes Research and Clinical Practice , 88 , 171-176  (2010)
原著論文4
Kodera R, Shikata K, Kataoka U, et al
Glucagon-like peptide-1 receptor agonist ameliorates renal injury through its anti-inflammatory action without lowering blood glucose level in a rat model of type 1 diabetes.
Diabetologia , 54 (4) , 965-978  (2011)
原著論文5
Miyatake N, Shikata K, Makino H et al
Decreasing abdominalcircumference is associated with improving estimated glomerular filtration rate with lifestyle modification in Japanese men: a pilot study
Acta Medica Okayama , 65 (6) , 363-367  (2011)
原著論文6
Ogawa D, Asanuma M, Miyazaki I et al
High glucose increases metallothionein expression in renal proximal tubular epithelial cells.
Experimental Diabetic Research , 2011 , 1-8  (2011)
原著論文7
Miyatake N, Shikata K, Makino H et al
Decreasing serum uric acid levels might be associated with improving estiated glomerular filtration rate in Japanese men.
Health , 3 (8) , 498-503  (2011)
原著論文8
Miyatake N, Shikata K, Makino H et al
Comparison of muscle strength between subjects with and without proteinuria
Health , 3 (11) , 698-702  (2011)
原著論文9
Miyatake N, Shikata K, Makino H et al
The relation between estimated glomerular filtration rate and coffee consumption in the Japanese
Health , 3 (9) , 549-552  (2011)
原著論文10
Horio M, Imai E, Yasuda Y et al
GFR estimating equation based on standardized serum cystatin C.
American Journal of Kidney Disease  (2012)
原著論文11
5. Horio M, Imai E, Yasuda Y, Watanabe T, Yokoyama H, Makino H, Matsuo S.
Effects of serum albumin and glycated albumin levels on performance of the Japanese GFR equation based on serum cystatin C.
Clin Exp Nephrol , in press (in press) , in press-in press  (2015)
原著論文12
Horio M, Imai E, Yasuda Y, Watanabe T, Yokoyama H, Makino H, Matsuo S.
Serum albumin, but not glycated albumin was a potent factor affecting the performance of GFR equation based on serum creatinine.
Clin Exp Nephrol , 19 (2) , 284-292  (2015)
原著論文13
Ohno I, Hayashi H, Aonuma K, Horio M, Imai E et al.
Guidelines on the use of iodinated contrast media in patients with kidney disease 2012: digest version : JSN, JRS, and JCS Joint Working Group.
Clin Exp Nephrol , 17 (4) , 441-479  (2013)
原著論文14
Horio M, Imai E, Yasuda Y, Watanabe T, Matsuo S.
Lower serum albumin level is associated with higher fractional excretion of creatinine.
Clin Exp Nephrol , 18 (3) , 469-474  (2014)
原著論文15
Horio M, Imai E, Yasuda Y, Watanabe T, Matsuo S.
Performance of GFR equations in Japanese subjects.
Clin Exp Nephrol , 17 (3) , 352-358  (2013)
原著論文16
Horio M, Imai E, Yasuda Y, Watanabe T, Matsuo S
GFR estimation using standardized serum cystatin C in Japan.
Am J Kid Dis , 61 (2) , 197-203  (2013)
原著論文17
Horio M, Yasuda Y, Imai E, et al.
Performance of the Japanese GFR equation in potential kidney donors.
Clin Exp Nephrol , 16 (3) , 415-420  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
2016-05-26

収支報告書

文献番号
201121002Z