戦略研究(腎疾患重症化予防のための戦略研究)

文献情報

文献番号
201121001A
報告書区分
総括
研究課題名
戦略研究(腎疾患重症化予防のための戦略研究)
課題番号
H19-腎疾患・戦略-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
山縣 邦弘(筑波大学医学医療系臨床医学域腎臓内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 丁次(社団法人日本栄養士会)
  • 井関 邦敏(琉球大学医学部附属病院血液浄化療法部)
  • 木村 健二郎(聖マリアンナ医科大学腎臓・高血圧内科)
  • 柴田 孝則(昭和大学医学部内科学講座腎臓内科学部門)
  • 西野 友哉(長崎大学病院第二内科・腎臓内科学)
  • 槇野 博史(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・腎・免疫・内分泌代謝内科学)
  • 松尾 清一(名古屋大学大学院医学系研究科・腎臓内科学)
  • 渡辺 毅(福島県立医科大学医学部腎臓高血圧・糖尿病内分泌代謝内科学講座)
  • 和田 隆志(金沢大学医薬保健研究域医学系血液情報統御学)
  • 成田 一衛(新潟大学医歯学系腎・膠原病内科学)
  • 伊藤 貞嘉(東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座腎・高血圧・内分泌学分野)
  • 草野 英二(自治医科大学腎臓内科)
  • 冨田 公夫(熊本大学大学院生命科学研究部腎臓内科学)
  • 藤垣 嘉秀(浜松医科大学第一内科・腎臓内科)
  • 御手洗 哲也(埼玉医科大学総合医療センター腎・高血圧内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 腎疾患対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
153,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、我が国の透析患者数は増加の一途を辿っている。さらには、透析予備群である慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)患者数は全国で約1,300万人存在すると概算されている。そこで、かかりつけ医/非腎臓専門医と腎臓専門医の間の協力体制を確立し、「CKD診療ガイド」の遵守率・達成度を上げることにより、5年後の透析導入患者数を、予測される5年後の導入患者数の15%減少した値とすることを成果目標とし、かかりつけ医に対する診療支援、かかりつけ医に通院するCKD 患者への受診促進支援、生活・食事指導などを行うことで、新規透析導入患者減少につながる医療施策を見出すことを目的とした。
研究方法
約2500名のCKD患者を対象とし、地区基幹病院あるいは地区医師会を中心とした「かかりつけ医/非腎臓専門医と腎臓専門医間の診療ネットワーク」を募集し(全国49医師会を登録)、かかりつけ医/非腎臓専門医と腎臓専門医との診療連携を促進するための「慢性腎臓病診療連携支援システム導入群」(介入B群)と「通常診療連携群」(介入A群)の2群に割り付けるクラスター・ランダム化比較試験を実施した。
結果と考察
5ヵ年目に当たる本年度は介入B群に対してかかりつけ医における生活・食事指導法の継続、参加者およびかかりつけ医に対するCKDに対する啓蒙を引き続き行った。その結果、介入A群、介入B群を合わせた全参加者における腎機能の推移は、介入開始時である平成20年10月の全参加者の平均eGFRは58.86mL/min/1.73m2であったが、平成21年10月には56.83mL/min/1.73m2、平成22年10月には54.88mL/min/1.73m2と、年間あたりのeGFRは-1.99 mL/min/1.73m2の低下速度であった。これは研究計画当初に予想していたCKDコホートの低下速度-5.93 mL/min/1.73m2よりも緩やかな進行であり、本研究参加者の腎機能悪化スピードは予想よりも緩徐であることが示された。このことは、介入A群、B群共に腎疾患重症化抑制が図られている可能性がある一方、主要評価項目であるCKDステージ変化率ならびに成果目標である透析導入者数について長期的展望で検証する必要性が示唆された。
結論
戦略研究の大きな目的の1つでもある、本研究終了後における医療施策へのスムーズな移行ができることを視野に入れ、現実に即した理想的なCKD診療システムを構築した。本研究は将来の理想的医療を構築するための人材基盤・社会的組織基盤の創設をも達成するのに役立つと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201121001B
報告書区分
総合
研究課題名
戦略研究(腎疾患重症化予防のための戦略研究)
課題番号
H19-腎疾患・戦略-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
山縣 邦弘(筑波大学医学医療系臨床医学域腎臓内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 井関 邦敏(琉球大学医学部附属病院血液浄化療法部)
  • 伊藤 貞嘉(東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座腎・高血圧・内分泌学分野)
  • 木村 健二郎(聖マリアンナ医科大学腎臓・高血圧内科)
  • 草野 英二(自治医科大学腎臓内科)
  • 柴田 孝則(昭和大学医学部内科学講座腎臓内科学部門)
  • 冨田 公夫(熊本大学大学院生命科学研究部腎臓内科学)
  • 成田 一衛(新潟大学医歯学系腎・膠原病内科学)
  • 西野 友哉(長崎大学病院第二内科・腎臓内科学)
  • 藤垣 嘉秀(浜松医科大学第一内科・腎臓内科)
  • 槇野 博史(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・腎・免疫・内分泌代謝内科学)
  • 松尾 清一(名古屋大学大学院医学系研究科・腎臓内科学)
  • 御手洗 哲也(埼玉医科大学総合医療センター腎高血圧内科)
  • 渡辺  毅(福島県立医科大学医学部腎臓高血圧・糖尿病内分泌代謝内科学講座)
  • 和田 隆志(金沢大学医薬保健研究域医学系血液情報統御学)
  • 中村 丁次(社団法人日本栄養士会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 腎疾患対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の透析患者数は増加の一途を辿り、透析予備群である慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)患者数は全国で約1,300万人と概算されている。そこで、かかりつけ医/非腎臓専門医と腎臓専門医の間の協力体制を確立し、「CKD診療ガイド」の遵守率・達成度を上げることにより、5年後の透析導入患者数を予測される導入患者数の15%減少した値とすることを成果目標とし、新規透析導入患者の減少につながる医療施策を見出すことを目的とした。
研究方法
初年度である平成19年度は研究実施計画書作成などが行われ、平成20年度は研究実施計画書に基づき研究が進捗するよう研究支援体制の確立(生活・食事指導を行うマニュアル作成、管理栄養士講習会、診療目標達成支援ITシステム、受診促進など)を行った。その結果491名のかかりつけ医、2,417名の参加者が登録された。クラスター・ランダム化割り付け後、介入A群1,211例、介入B群1,206名にて平成20年10月20日より介入が開始され、平成23年3月まで実施した。平成22年度より体制が変わり研究代表者が日本腎臓財団から筑波大学 山縣邦弘となった。
結果と考察
介入B群では管理栄養士による3か月に1回の生活・食事指導、診療支援、受診促進支援を行った。その結果、全参加者における腎機能の推移は介入開始時の平均eGFRは58.86mL/min/1.73m2であったが、2年間の経過では年間あたりのeGFRは-1.99 mL/min/1.73m2の低下速度であった。研究計画当初予想していた低下速度-5.93 mL/min/1.73m2よりも緩やかな進行であり、腎機能悪化スピードは予想よりも緩徐であることが示された。介入A群、B群共に腎疾患重症化抑制が図られている可能性がある一方、主要評価項目であるCKDステージ変化率ならびに成果目標である透析導入者数について長期的展望で検証する必要性が示唆された。
結論
戦略研究の大きな目的の1つでもある、本研究終了後における医療施策へのスムーズな移行ができることを視野に入れ、現実に即した理想的なCKD診療システムを構築した。本研究は、将来の理想的医療を構築するための人材基盤・社会的組織基盤の創設をも達成するのに役立つと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201121001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
かかりつけ医に通院する2,417名のCKD患者に対して参加49医師会ごとに「通常診療連携群」(介入A群)と「診療連携支援群」(介入B群)の2群に割り付けを行うクラスター・ランダム化試験を実施し、これまでに世界に類を見ない大規模臨床研究である。また、薬物療法中心の医療から生活食事指導、教育指導中心の医療の効果が検証され、生活習慣病の治療の意味で合目的的な医療への転換が可能となる。
臨床的観点からの成果
かかりつけ医と腎臓専門医の協力を推進し、コメディカルとも協力してCKD患者の診療にあたる診療体制を全国的に展開することの臨床効果を証明しうる研究であり、そのエビデンスを正確に得ることの意義は非常に大きい。さらには、CKD診療で具体的な診療目標達成度の向上による患者予後改善効果や医療支援の方法を検証する良質なエビデンスが得られる。
ガイドライン等の開発
栄養支援ワーキンググループ:栄養支援ワーキンググループでは、本研究における生活・食事指導マニュアル(研究期間内における管理栄養士の業務手順書に相当)を作成した。生活・食事指導の標準化法は、今後のCKD患者に対する生活・食事指導の基盤となると考えられる。さらには、生活・食事指導の成功例と困難例を参加管理栄養士よりアンケート調査を行い、各栄養ケア・ステーションへフィードバックし指導改善の参考につなげることとした。
その他行政的観点からの成果
腎機能悪化(CKDステージ進行)の抑制法を示すことができ、今後の保険診療の施策を検討するうえでも重要なエビデンスが得られた。また、かかりつけ医の診療の場において、CKDの療養を指導することが可能な人材を育成することで医療の適正配置の実現が可能となる。さらには、本研究の成果を元にCKD患者に対する指導をより効果の期待できる手法にステップアップするための公募研究が行われる予定である。
その他のインパクト
参加地域での栄養ケア・ステーションが確立され、今後の生活・食事指導をすすめていくうえでの基盤となった。また、研究の参加地区医師会へのインセンティブの「CKDに関する広報活動のための支援」として、腎臓病市民公開セミナーを開催し、市民へ腎臓病についての知識とその対応について、講演会を開催した。水戸市、名古屋市、金沢市、長崎市、その他多くの参加医師会の地域においてそれぞれ開催された。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
36件
その他論文(和文)
60件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
17件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
13件
慢性腎臓病重症化予防のための戦略研究(FROM-J)、腎疾患重症化予防のための戦略研究(FROM-J)、慢性腎臓病(CKD)シンポジウム「あなたの腎臓だいじょうぶ?」

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kunihiro Yamagata, Hirofumi Makino, Tadao Akizawa, et al.
Design and methods of a strategic outocome study for chronic kidney disease:Frontier of Renal Outcome Modifications in Japan
Clin Exp Nephrol , 14 (2) , 144-151  (2010)
原著論文2
Reiko Tajima, Masahide Kondo, Kunihiro Yamagata, et al.
Measurement of health-related quality of life in patients with chronic kidney disease in Japan with EuroQol(EQ-5D)
Clin Exp Nephrol , 14 (4) , 340-348  (2010)
原著論文3
Masahide Kondo, Kunihiro Yamagata, Tsuyosi Watanabe, et al.
Cost-effectiveness of chronic kidney disease mass screening test in Japan
Clin Exp Nephrol , 16 (2) , 279-291  (2012)
原著論文4
Kei Nagai, Chie Saito, Kunihiro Yamagata, et al.
Annual incidence of persistent proteinuria in the general population from Ibaraki annual urinalysis study
Clin Exp Nephrol , 17 (2) , 255-260  (2013)

公開日・更新日

公開日
2014-06-09
更新日
2018-06-26

収支報告書

文献番号
201121001Z