心筋梗塞データベース・脳卒中データベースを用いた救急搬送情報と診療情報の連結のための研究

文献情報

文献番号
201120067A
報告書区分
総括
研究課題名
心筋梗塞データベース・脳卒中データベースを用いた救急搬送情報と診療情報の連結のための研究
課題番号
H23-心筋・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小林 祥泰(島根大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 峰松一夫(独立行政法人国立循環器病研究センター)
  • 鈴木明文(秋田脳血管研究センター)
  • 棚橋紀夫(埼玉医科大学国際医療センター)
  • 中川原譲二(中村記念病院・脳卒中センター)
  • 橋本洋一郎(熊本市立市民病院)
  • 山口修平(島根大学医学部)
  • 木村和美(川崎医科大学)
  • 横山広行(独立行政法人国立循環器病研究センター)
  • 松田晋哉(産業医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
17,399,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
すでに構築している心・脳卒中データベースにDPCデータを医事データから直接取り込めるような機能を付加することにより、心・脳血管疾患拠点病院設置の条件となる医療計画策定並びに保険診療の詳細把握に役立つ心・脳卒中データバンクを作成することにある。
研究方法
脳卒中についてはデータバンクにDPCデータを取り込むソフトを開発する。心筋梗塞に関してはDPCコードを利用したデータベースシステムを構築する。
結果と考察
1.DPCデータ取り込みと解析:医療経済解析用にDファイル単独読み込みソフトを開発し、本ソフトを用いて島根大学病院等4施設で実験を行い、DPC診療報酬総額データの取込みに成功した。さらに薬剤の使用状況、医療行為すべての状況、出来高換算医療費(Eファイル)、実際の医療費(Dファイル)を診療区分別に集計可能なソフトを開発し、院内で簡単かつ高速にDPCデータを書き出し、脳卒中データベースに読み込む画期的なソフトを開発した。
予備解析で診療報酬請求額と在院日数および退院時NIHSSの間には有意な相関を認め、多変量解析でも在院日数が最大影響因子であった。
またDPC様式1データを用いて85595例の脳梗塞急性期の評価を行い、脳卒中データバンクの集計結果と比較した結果では脳梗塞病型分類もほぼ一致しており、DPC登録の診断精度はかなり高いことが検証された。脳卒中データバンクはわが国のgolden standardであることが裏付けられた。
心筋梗塞に関してはDPCコードから抽出するQ-TASK登録方式によるデータベースを構築し多施設で精度を検証した。
2.標準pre-hospital stroke scale(PSS)導入により出雲消防署管内の島根大学病院等で脳梗塞発症―受診時間が有意に短縮した。国立循環器病センターではPSS使用+確定診断フィードバック前後で発症3時間以内搬送率が有意に上昇した。川﨑医大病院ではフィードバックで脳卒中病型正診率が有意に上昇したがその上昇率はフィードバックが早いほうが高かった。
3. 脳卒中地域連携パス電子版の熊本地区における登録拡大と解析が行われ4000例を超えるデータが集積された。
4. 秋田県における脳卒中病院前救護プロトコルの検証を実施した。
結論
DPC取り込みが可能となり、病院前脳卒中救護から地域連携まで包括し、医療経済解析にも応用可能な脳卒中データバンクを構築することが出来た。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201120067C

成果

専門的・学術的観点からの成果
現在のDPCデータだけの解析と異なり病型や病変部位、血管病変、既往歴、家族歴などが詳細に把握できると同時に病院前脳卒中救護から地域連携まで包括したデータベースとなっており、DPCデータを組み合わせることにより、詳細な医療経済学的研究が可能となる基盤作りが出来た意義は大きい。
臨床的観点からの成果
脳卒中データバンクに病院前脳卒中救護が加わったことで特にt-PA治療に関する改善点が明らかになり、これらを検証することでより絞り込んだt-PA治療対象選択を可能とするエビデンスが生まれることが期待される。また地域連携を推進して在院日数短縮と早期リハビリによる医療の効率化、予後改善が期待出来る。
ガイドライン等の開発
とくになし
その他行政的観点からの成果
先行研究で2010年度に提案し、秋田県MC協議会で実施を開始した救急隊の脳卒中病院前救護プロトコルについて今年度検証実験を試行した。CPSSを評価した2,477例の結果は、感度79.3%、特異度74.2%であった。CPSSとともに+αの項目まで評価したのは2,477例中2,412例であった。その結果は、感度88.6%、特異度44.6%であった。
国立循環器病研究センターに脳卒中等のデータ登録室が設置されることが決まったため、脳卒中協会理事会で検討した結果、脳卒中データバンクの管理を2015年度から国立循環器病研究センターに移行することになった。脳卒中急性期患者データベースは著作権が国立大学法人島根大学に帰属するため、過去のデータを含む使用権の貸与となる予定。
その他のインパクト
2013年日本脳卒中学会のシンポジウムで脳卒中データバンクが取り上げられ、Medical Tribuneから注目されて取材を受けた。

発表件数

原著論文(和文)
23件
原著論文(英文等)
63件
その他論文(和文)
16件
その他論文(英文等)
12件
学会発表(国内学会)
39件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
11件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
寺崎修司
脳卒中地域連携パスと今後の展望
神経治療学 , 28 , 257-263  (2011)
原著論文2
徳永誠 渡邊進 中西亮二他
脳卒中地域連携パス参加の回復期リハ病院間での日常生活機能評価 表利得比較
jamanese journal of Comprehensive Rehabilitation Science , 3 , 1-5  (2012)
原著論文3
Tokunaga.M Watanabe.S Nakanishi R et al
Comparison between conbalescent rehabilitation hospitals participating in the stroke liaison critical pathway with respect to the gain of Nichijo-seikatsu-Kino-hyokahyo score
jamanese journal of Comprehensive Rehabilitation Science , 3 , 11-17  (2012)

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201120067Z