各種禁煙対策の経済影響に関する研究―医療費分析と費用効果分析―

文献情報

文献番号
201120034A
報告書区分
総括
研究課題名
各種禁煙対策の経済影響に関する研究―医療費分析と費用効果分析―
課題番号
H22-循環器等(生習)・一般-012
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部)
  • 今中 雄一(京都大学 大学院医学研究科)
  • 田中 英夫(愛知県がんセンター 研究所)
  • 谷原 真一(福岡大学 医学部)
  • 中村 幸志(金沢医科大学 医学部)
  • 村上 義孝(滋賀医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
10,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第1に喫煙が医療費に及ぼす影響を解明すること、第2に禁煙プログラムの費用対効果について実証的なデータを提示すること。
研究方法
喫煙が医療費に及ぼす影響に関する研究:全国各地のコホート研究データを使って、個別研究として喫煙習慣と医療費との関連を検討した。
データ統合・プール解析の準備:本研究班に参加している分担者が管理している5つのコホート研究(宮城県の国保加入者5万人、滋賀県全市町の健診受診者4.4万人、同県7町1市の健診受診者4.5千名、兵庫県T市の健診受診者4千名、F県の健康保険組合の男性被保険者9千名)について、統合解析・プール解析の実施可能性(貨幣価値が共通しているか、医療費や喫煙などに関する情報が共通しているか、性・年齢や医療費の分布が重なっているか)をチェックした。
禁煙プログラムの費用効果分析:某事業所での個別禁煙支援とOTCでのニコチンパッチによる禁煙支援のそれぞれで費用効果比(1名の禁煙達成に要する費用)を計算し、保険診療でのプログラム(昨年度に計算)と比較した。
結果と考察
喫煙が医療費に及ぼす影響に関する研究:高感度CRP基準範囲上限を超える女性では、喫煙による影響が早期から出現しやすかった。禁煙理由は「健康のため」が最も多く、体調不良に関することが次いだ。40~59歳では、将来高額医療費を要するリスクが継続喫煙者よりも途中禁煙者で有意に低く(オッズ比0.81、95%信頼区間0.66‐0.99)、生涯非喫煙者と同程度のレベルに低下した。
データ統合・プール解析の準備:5つのコホートのうち、4つのデータ統合には問題ないことが分かった。これにより、合計82.5万人年という巨大なスケールでの解析が可能となった。来年度、観察開始から8年後までの積算医療費を目的変数とした解析を実施するものである。
禁煙プログラムの費用効果分析:禁煙プログラムの費用効果比は、職場でのプログラム(29,320円)が最も安く、薬局OTCでの取組(159,524円)、保険診療でのプログラム(259,799円)の順に高額になった。
結論
禁煙することにより将来高額医療費を要するリスクが低減される可能性が示唆された。さまざまな禁煙治療のなかで、職場でのプログラムが最も効率的であった。今後さらに禁煙対策を強化することは、国民の健康の増進と医療費の適正化に寄与するものと思われる。

公開日・更新日

公開日
2015-10-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201120034Z