動脈硬化の多角的評価による脳卒中個別化治療開発に関する研究

文献情報

文献番号
201120028A
報告書区分
総括
研究課題名
動脈硬化の多角的評価による脳卒中個別化治療開発に関する研究
課題番号
H22-循環器等(生習)・一般-006
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
長束 一行(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 内山 真一郎(東京女子医科大学 神経内科)
  • 松本 昌泰(広島大学医学部 神経内科)
  • 藤代 健太郎(東邦大学医学部医学科 教育開発室)
  • 北川 一夫(大阪大学大学院医学系研究科 神経内科学)
  • 小久保 喜弘(独立行政法人国立循環器病研究センター 予防健診部)
  • 竹川 英宏(獨協医科大学 神経内科脳卒中部門)
  • 山村 修(福井大学医学部 地域医療推進講座)
  • 多賀谷 昌史(国立病院機構大阪医療センター 脳卒中内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
7,270,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 脳卒中の基盤となる動脈硬化は、主として粥状硬化と細動脈硬化に大別される。粥状硬化は画像検査が進歩し、早期から詳細な診断が可能で、治療効果に対するエビデンスも多い。一方、細動脈硬化は、血管径が細いため従来の画像診断技術では評価が困難であり、治療介入の効果に関するエビデンスも乏しい。本研究の目的は、多角的な動脈硬化の検査指標を組み合わせることで粥状硬化と細動脈硬化を分離して評価可能な指標の組み合わせを見いだし、より早期から個々の動脈硬化の特徴に合わせた治療介入が可能となるようなsurrogated endpointを確立することにある。
研究方法
 多施設共同研究で、後ろ向きデータベースと前向き登録研究を行う。調査項目は、脳卒中病型、背景因子、MRI画像所見、頸動脈エコーで得られるパラメータ(内中膜厚:IMT、プラークスコア、総頸動脈径、総頸動脈・内頚動脈のpulsatility index:PI)、脈波伝搬速度(baPWVまたはCAVI)である。前向き研究では経頭蓋ドプラーが可能な症例では息こらえ法による脳血管反応性を追加した。また国立循環器病研究センター予防健診部で行っている、吹田研究から1年目はIMT、2年目は総頸動脈径、3年目はPWVと心血管イベント発症の解析を行う。
結果と考察
 後ろ向きデータベースの解析で、細動脈硬化の候補パラメータとしてはPI値が脳出血群で有意に高く、穿通枝梗塞群でも同様の傾向が見られた。またPWVに関しても、ATBI群に比較して穿通枝梗塞群・脳出血群が高値を示す傾向に有り、細動脈硬化の指標となり得ることが示唆された。
 前向き登録研究は症例登録中で中間解析を行った。細動脈の指標に関しては内頚動脈のPI値が穿通枝梗塞・脳出血群で高値を取る傾向にあった以外、有意差が見られなかった。当センター単施設で症例を増やして検討すると、PI値、総頸動脈径、PWVが穿通枝梗塞・脳出血群で有意に高値を示した。
 吹田研究の結果はIMTが心筋梗塞・虚血性脳血管障害の予測因子として有用であったが、出血性脳血管障害の予測因子とはならなかった。
結論
 粥状硬化の指標としてはIMTが最も簡便で、病型との関連が明らかで、疫学調査によっても心血管疾患の予測因子であることが明らかとなった。細動脈硬化の指標として、頸動脈PI値、総頸動脈径、PWVが候補としてあげられ、単施設で評価すると有意差が出るが、多施設でデータ収集を行うと施設間差も認められ、標準化を行った上でさらにデータ収集をする必要があることが分かった。

公開日・更新日

公開日
2015-10-08
更新日
-

収支報告書

文献番号
201120028Z