個人特性に応じた効果的な行動変容を促す手法に関する研究

文献情報

文献番号
201120019A
報告書区分
総括
研究課題名
個人特性に応じた効果的な行動変容を促す手法に関する研究
課題番号
H21-糖尿病等・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
永井 良三(東京大学大学院医学系研究科 東京大学医学部附属病院 循環器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科 生物統計学)
  • 丸山 千寿子(日本女子大学 家政学部食物学科)
  • 大橋 健(独立行政法人国立がん研究センター 総合内科)
  • 古井 祐司(東京大学大学院医学系研究科 企画情報運営部)
  • 満武 巨裕(財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
9,867,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
被保険者の健康状況の変化を経年で捉え、どのような保健事業を適用することが効果的であるかを明らかにすると同時に、リスクに応じた介入手法の検証を行うことを目的とした。
研究方法
(1)経年データに基づく効果の最大化に関する研究
2009-2010年度の経年で特定健診データを有する22万人の被保険者を対象に、経年での改善率、悪化率とメタボリック・シンドロームの割合について回帰分析を行った。
(2)被保険者の行動変容を促す方策に関する研究
2010-2011年度の特定健診を経年で受診した被保険者(n=16,190)に動機づけプログラムを適用したうえで、体重、歩数など自己での健康管理を支援するITプログラムに登録してもらい、行動変容や健康状況の推移を把握した。
(3)介入効果を高める要因に関する研究
継続支援プログラムの効果検証を、BMIが5%以上減少した効果群、5%未満の対照群との比較に基づき行った。行動計画の達成度、モニタリングなどと行動変容、減量効果との関連分析を実施した。
(4)重症化防止の実施スキームの構築および検証
年齢35~59歳、HbA1c6.1%以上、BMI25以上の被保険者に対して、重症化防止を目的とした受診勧奨や減量を指標とした介入プログラムを適用し、医療機関との連携や事業運営のポイントを探った。
結果と考察
経年分析結果より、情報提供群の健康状況を悪化させないことがメタボリック・シンドローム減少の鍵を握っていることが示唆された。また、健診結果を認識させたうえで適用するIT媒体の自己管理支援プログラムでは、専門職による面談を介在しなくても健康状況の悪化防止効果が認められ、特定保健指導だけに依存しない効率的な保健事業の再構築の可能性が示された。次に、低リスク者に対する継続支援プログラムの介入は、初回面接時の行動計画が具体的であることや初回面接後3か月間のモニタリングが効果を高めるなど、介入プログラムのフローごとに効果に寄与する要素が明らかとなり、今後の効果的なプログラム構成につながる。さらに、糖尿病をモデル疾患とした高リスク者の重症化防止に関しては、保険者・被保険者・主治医の連携スキームや支援プログラムが行動変容を促し、受診や減量につながった。
結論
情報提供群への介入が全体効果を高めることが示された。また、個人特性に応じた行動変容手法の保健事業への適用を目的として、医療保険者による効果的な保健事業の企画および実施に資する指針を整理した。

公開日・更新日

公開日
2015-10-08
更新日
-

文献情報

文献番号
201120019B
報告書区分
総合
研究課題名
個人特性に応じた効果的な行動変容を促す手法に関する研究
課題番号
H21-糖尿病等・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
永井 良三(東京大学大学院医学系研究科 東京大学医学部附属病院 循環器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科 生物統計学)
  • 丸山 千寿子(日本女子大学 家政学部食物学科)
  • 大橋 健(独立行政法人国立がん研究センター 総合内科)
  • 古井 祐司(東京大学大学院医学系研究科 企画情報運営部)
  • 満武 巨裕(財団法人医療経済研究機構・社会保険福祉協会医療経済研究機構 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定健診制度の導入で、治療の前段階で被保険者のリスクを捉えた予防介入が可能となった。したがって、個々の特性に応じた行動変容を促す手法を研究することは意義を有する。本研究では個人特性を同定し、セグメントごとに効果的な行動変容手法を開発することで、保健事業の効果の最大化に資することを目的とした。
研究方法
1 研究基盤の整備(1)研究フィールドの選定(2)研究事業の運営基盤の整備
2 行動変容モデルプログラムの構築(1)個人特性の同定手法の構築(2)セグメンテーション(3)介入内容・方法の検討
3 行動変容モデルプログラムの実施(1)対象者への周知(2)プログラムの実施
4 評価及び課題解決の方向性の検討(1)行動変容手法の有効性の検討(2)課題の抽出及び解決策の検討
結果と考察
初年度は個人特性の同定を冠動脈疾患予防の観点から、リスクが既知で特定健診制度下で継続的なデータ蓄積が可能であるBMI、腹囲、脂質、血圧、血糖、喫煙、服薬状況に基づく手法を開発した。2年度からの介入効果の検証では、健康状況の改善は若年ほど高く、冠動脈疾患リスクの改善は40代に限られたことから、低リスク層から介入を開始することが必要である。個々の健診結果に応じたストーリー性ある動機づけプログラムを開発したところ、意識・行動変容効果が認められた。一方、低リスク層を対象とした専門職による継続支援プログラムは具体的な行動計画に基づく計画達成が体重減少の要件であり、リスク改善につながる項目の設定および期間中の難易度調整の重要性が示された。最終年度は経年で特定健診を受診した22万人のデータに基づく健康状況推移より、情報提供群の健康状況を悪化させないことがメタボリック・シンドローム減少の鍵を握ることが示された。実際、被保険者に自己の健診結果を認識させたうえでIT媒体による自己管理支援プログラムを活用すると悪化防止につながった。なお、特定健診の受診率が低い国保の被保険者や職域保険の被扶養者では継続受診率が低い構造が明らかとなり、経年でのデータ把握の意義を示し、継続受診に向ける手法が有用であることが示唆された。以上より、予防介入のフローごとに行動変容に寄与する要素が明らかになった。
結論
個人特性に応じた行動変容手法が開発された。この手法を保健事業に適用することを目的に、医療保険者による効果的な保健事業の企画および実施に資する指針を作成した。

公開日・更新日

公開日
2015-10-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201120019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 被保険者の個人特性を特定健診制度下で経年蓄積される健診データから捉える手法を開発した。これにより、個々の特性に応じた意識づけを行い、行動変容を促すことで、生活習慣病予防に実効性を持たせる可能性が示された。成果は国の検討会や保険者団体の研修会に活用され、効果的な保健事業の検討につながっている。また、個人特性を捉える手法は既に健保連合会のDBに導入され、全国の保険者にも提供されている。
臨床的観点からの成果
 本研究における介入効果の検証により、冠動脈疾患リスクの改善は若年で高いこと、介入プログラムでは具体的な行動計画に基づく介入初期での計画達成がリスク改善につながること、行動計画は介入期間中のモニタリングを通じた難易度調整が重要であることなどが明らかとなった。前患者段階の被保険者をフィールドに集め、個々の特性に応じた大規模介入を実践し、効果検証した研究は世界的にも初めてであり意義が大きい。
ガイドライン等の開発
 研究成果は、医療保険者による効果的な保健事業の企画および実施に資する指針として整理され、第Ⅱ期特定健診等実施計画策定の研修会(東京都、国保連、健保連)に活用され始めた。平成16年7月の大臣告示「健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針」、平成19年4月の「標準的な健診・保健指導に関するプログラム(確定版)」で新しい予防施策の理念および概要は示されたが、具体的な事業運営を示したものとして意義がある。
その他行政的観点からの成果
 研究成果は、厚生労働省の「第4回 健診・保健指導の在り方に関する検討会」(平成24年2月27日健康局)、「第5回 保険者による健診・保健指導等に関する検討会」(平成23年10月13日保険局)、「健診・保健指導の在り方に関する検討会 中間とりまとめ」(平成24年4月13日健康局)において提示・反映された。今後は保健事業の評価に資することが行政的な意義を有する。
その他のインパクト
 予防医学を個人から集団にも適用するという本研究での考え方(健康経営)が普及し始めており、職場や生活環境の影響が大きい生活習慣病の予防に実効性を持たせる可能性がある。一例として、従業員の健康増進に積極的に取り組む企業を評価し、低利融資を適用(日本政策投資銀行)する金融面からのインセンティブ施策が導入された(日経新聞朝刊平成24年3月8日)。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
その他成果(普及・啓発活動)
15件
「特定健診・保健指導事業従事者養成研修」(東京都)、「厚生労働省地域・職域連携推進事業関係者会議」(厚生労働省)などの研修会にて普及・啓発を行った。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
満武巨裕、福田 敬、古井祐司
特定健診データと医療費データからみる特定保健指導対象者の検討
厚生の指標 , 57 (7) , 8-13  (2010)
原著論文2
渡邉美穂、市川太祐、大橋 健、倉橋一成、古井祐司
初期の体重減少は保健指導効果の予測因子となる
厚生の指標 , 58 (7) , 27-29  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-10-08
更新日
2017-05-25

収支報告書

文献番号
201120019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,867,000円
(2)補助金確定額
9,867,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 288,831円
人件費・謝金 3,927,600円
旅費 1,459,081円
その他 4,191,488円
間接経費 0円
合計 9,867,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-10-08
更新日
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