一過性脳虚血発作(TIA)の診断基準の再検討、ならびにわが国の医療環境に則した適切な診断・治療システムの確立に関する研究

文献情報

文献番号
201120016A
報告書区分
総括
研究課題名
一過性脳虚血発作(TIA)の診断基準の再検討、ならびにわが国の医療環境に則した適切な診断・治療システムの確立に関する研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-017
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
峰松 一夫(独立行政法人 国立循環器病研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 上原 敏志(独立行政法人 国立循環器病研究センター 脳血管内科)
  • 岡田 靖(国立病院機構九州医療センター 臨床研究センター)
  • 木村 和美(川崎医科大学 脳卒中医学)
  • 中川原 譲二(中村記念病院 脳神経外科)
  • 飯原 弘二(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳神経外科)
  • 内山 真一郎(東京女子医科大学 神経内科学)
  • 小笠原 邦昭(岩手医科大学 脳神経外科)
  • 鈴木 明文(秋田県立脳血管研究センター 脳神経外科学研究部・脳卒中診療部)
  • 棚橋 紀夫(埼玉医科大学国際医療センター 神経内科)
  • 高木 繁治(東海大学医学部 神経内科)
  • 有井 一正(東京都保健医療公社荏原病院 総合脳卒中センター)
  • 永廣 信治(徳島大学 脳神経外科学)
  • 長谷川 康博(名古屋第二赤十字病院 神経内科)
  • 松本 昌泰(広島大学大学院医歯薬学総合研究科 脳神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,450,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究班では、従来の専門医、専門医療機関を対象にした臨床研究とは一線を画し、むしろ一般市民への啓発、一般医と脳卒中専門病院との連携強化に重点を置き、その上での脳卒中専門病院での診療体系の確立を目指した。具体的には、国内におけるTIA患者の受診動向、医療機関での診療実態、患者転帰等を調査し、それをもとにわが国の医療環境に則した、かつMR診断時代に相応しいTIA診断基準の見直しおよびTIAの診断・治療マニュアルを作成して、診療システムの大胆な再構築を提言することを目的とした。
研究方法
 最最終年度である今年度は、(1) 一般市民を対象としたTIAに関するアンケート調査、(2) モデル地区における一般開業医と脳卒中専門施設間の連携に関する前向き研究、(3) TIA例の脳・心血管イベント発症に関する多施設前向き登録研究、(4) TIAの診断基準の見直し及びTIA診療マニュアルの作成を行った。
結果と考察
 今回の一般市民を対象としたアンケート調査によって、TIAの認知度は低く、一過性の神経症状は軽視されがちであることが明らかとなり、一般市民への啓発が必要であることが示唆された。また、開業医と脳卒中専門病院との間で、開業医がTIAの診断や紹介に困らないような医療システムの構築と受け入れ体制の整備を行うことにより、開業医からのTIA疑い紹介患者数が増加するとともにTIAの正診率も上がり、専門病院受診までの期間も短縮することが明らかとなった。さらに、本研究班では、国内外のガイドラインや論文および本研究班の研究成果に基づき、わが国の医療環境に則した診断基準の見直しを行った。TIAの診断基準について、本研究班では、従来の定義である「24時間以内に消失する脳または網膜の虚血による一過性の局所神経症状で、画像上の梗塞巣の有無は問わない」を用いることとした。
結論
 我々は、脳卒中専門施設でのTIA診療の実態や患者転帰のみならず、一般市民のTIAに関する認識や、一般開業医と専門施設間の連携に関する問題点まで明らかにした。そして、欧米のシステムを参考にしながら、本研究班の成果をもとにわが国の医療環境に則した、かつMR診断時代に相応しいTIA診断基準の見直しおよびTIA診療マニュアル作成を行い、診療システムの再構築を提言することができた。

公開日・更新日

公開日
2014-05-19
更新日
-

文献情報

文献番号
201120016B
報告書区分
総合
研究課題名
一過性脳虚血発作(TIA)の診断基準の再検討、ならびにわが国の医療環境に則した適切な診断・治療システムの確立に関する研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-017
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
峰松 一夫(独立行政法人 国立循環器病研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 上原 敏志(独立行政法人 国立循環器病研究センター 脳血管内科)
  • 岡田 靖(国立病院機構九州医療センター 臨床研究センター)
  • 木村 和美(川崎医科大学 脳卒中医学)
  • 中川原 譲二(中村記念病院 脳神経外科)
  • 飯原 弘二(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳神経外科)
  • 内山 真一郎(東京女子医科大学 神経内科学)
  • 小笠原 邦昭(岩手医科大学 脳神経外科)
  • 鈴木 明文(秋田県立脳血管研究センター 脳神経外科学研究部・脳卒中診療部)
  • 棚橋 紀夫(埼玉医科大学国際医療センター 神経内科)
  • 高木 繁治(東海大学医学部 神経内科)
  • 有井 一正(東京都保健医療公社荏原病院 総合脳卒中センター)
  • 永廣 信治(徳島大学 脳神経外科学)
  • 長谷川 康博(名古屋第二赤十字病院 神経内科)
  • 松本 昌泰(広島大学大学院医歯薬学総合研究科 脳神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究班では、従来の専門医、専門医療機関を対象にした臨床研究とは一線を画し、むしろ一般市民への啓発、一般医と脳卒中専門病院との連携強化に重点を置き、その上での脳卒中専門病院での診療体系の確立を目的とした。
研究方法
 1)一般市民を対象としたTIAに関するアンケート調査、(2) 一般開業医を対象としたTIAに関する意識調査、(3)モデル地区における一般開業医と脳卒中専門施設間の連携に関する前向き研究、(4) 脳卒中専門医療機関を対象としたTIA診療に関するアンケート調査、(5) TIA入院例に関する多施設共同後ろ向き患者研究、(6) TIA例の多施設前向き登録研究、(7) 個別研究、(8)TIAの診断基準の見直し及びTIA診療マニュアルの作成を行った。
結果と考察
「一般市民を対象としたTIAに関するアンケート調査」によって、一般市民のTIAの認知度は低く、一過性の神経症状は軽視されがちであることが明らかとなり、一般市民への啓発が必要であると思われた。「一般開業医を対象としたTIAに関する意識・実態調査」では、TIAが緊急疾患であるという一般開業医の認識が脳梗塞に比べて低いことや、TIA診療における開業医から脳卒中専門施設へのアクセスの難しさなど、病診連携に大きな障壁があることが明らかとなった。また、「脳卒中専門医療機関を対象としたアンケート調査」では、わが国におけるTIA診療の特徴が明らかにすることができた。後ろ向き研究では464例が登録され、発症からDWI撮像までの時間が長い程DWI陽性率が有意に高いことが示された。入院中の脳心血管イベント発症に関しては、TIA再発27例(5.8%)、脳梗塞8例(1.7%)、虚血性心疾患4例(0.8%)であった。国内外のガイドラインや論文および本研究班の研究成果に基づき、わが国の医療環境に則した診断基準の見直しを行った。TIAの診断基準について、本研究班では、従来の定義である「24時間以内に消失する脳または網膜の虚血による一過性の局所神経症状で、画像上の梗塞巣の有無は問わない」を用いることとした。
結論
 我々は、欧米のシステムを参考にしながら、本研究班の成果をもとにわが国の医療環境に則した、かつMR診断時代に相応しいTIA診断基準の見直しおよびTIA診療マニュアル作成を行い、診療システムの再構築を提言することができた。

公開日・更新日

公開日
2014-05-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201120016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 わが国では、1990年以降、一過性脳虚血発作 (TIA) の診断基準の見直しは全くなされておらず、またTIAに関連する臨床研究も乏しかった。本研究班では、わが国の脳卒中専門施設におけるTIA診療の実態や患者の特徴・転帰のみならず、一般市民のTIAに関する認識や、一般開業医と専門施設間の連携に関する問題点を初めて明らかにすることができた。また、本研究班の研究成果をもとにしてTIAの診断基準の見直しも行った。
臨床的観点からの成果
 実際に、TIAに関して一般市民・開業医への啓発を行った。また、開業医と脳卒中専門病院間でTIA診療連携システムを試験運用し、開業医からのTIA疑い紹介患者数が増加するのみならずTIAの正診率も向上し、専門病院受診までの期間も短縮することを示した。そして最終的に、欧米のシステムを参考にしながら、わが国の医療環境に則した、かつMR診断時代に相応しいTIA診療システムの再構築を提言することができた。
ガイドライン等の開発
 国内外のガイドラインや論文、および本研究班の3年間の研究成果を基にして、TIAの診断基準の見直しおよび診断・治療に関する診療マニュアルの作成を行った。TIAの診断基準について、従来の「24時間以内に消失する脳または網膜の虚血による一過性の局所神経症状で、画像上の梗塞巣の有無は問わない」とする定義を用いることとした。本研究班で作成したTIA診療マニュアルは、関連学会(日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本神経学会等)の承認を得た後に学会誌に投稿して公表する予定である。
その他行政的観点からの成果
 本研究班で得られた成果は、厚生労働省が新健康フロンティア戦略の中で取りあげている「脳卒中,心筋梗塞等の治療の推進」すなわち、(1)発症時に患者が直ちに受診するための初発症状等に関する知識の普及、(2)発症後直ちに専門的な治療が受けられる体制の整備、(3)搬送、医療機関の役割分担の明確化等に大きく寄与すると考えられる。また、最大の要介護性疾患である脳卒中の発症を水際で目に見える形で抑制することができ、わが国の医療経済にも大きく貢献できると考える。
その他のインパクト
 市民へのTIAに関する啓発を行うために、平成24年1月14日に市民公開講座を開催した。
 また、本研究班の研究成果を平成22年、23年、24年の日本脳卒中学会シンポジウムで発表した。

発表件数

原著論文(和文)
12件
原著論文(英文等)
58件
その他論文(和文)
48件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hoshino T, Mizuno S, Shimizu S et al.
Clinical features and functional outcome of stroke subsequent to transient ischemic attack.
J Stroke Cerebrovasc Dis , 22 (3) , 260-266  (2011)
10.1016/j.strokecerebrovasdis.2011.08.010.
原著論文2
Nakajima M, Hirano T, Naritomi H et al.
Symptom progression or fluctuation in transient ischemic attack patients predicts subsequent stroke
Cerebrovasc Dis , 29 , 221-227  (2010)
原著論文3
上原敏志、峰松一夫
日本脳卒中学会認定研修教育病院を対象とした一過性脳虚血発作(TIA)の診療に関するアンケート調査
脳卒中 , 32 , 710-718  (2010)
原著論文4
Miyagi T, Uehara T, Kimura K, et al.
Examination Timing and Lesion Patterns in Diffusion-Weighted Magnetic Resonance Imaging of Patients with classically defined Transient Ischemic Attack
J Stroke Cerebrovasc Dis , 22 (8) , e310-e316  (2013)
10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2012.12.007.
原著論文5
Kobayashi J, Uehara T, Toyoda K, et al.
Clinical significance of fluid-attenuated inversion recovery vascular hyperintensities in TIA
Stroke , 44 (6) , 1635-1640  (2013)
10.1161.STROKEAHA.111.000787.
原著論文6
川畑和也、安井敬三、長谷川康博、他
名古屋地区の内科および外科系開業医を対象とした一過性脳虚血発作 (TIA) に関する意識調査
脳卒中 , 35 , 256-262  (2013)
原著論文7
Sato S, Uehara T, Hayakawa M, et al.
Intra- and extracranial atherosclerotic disease in acute spontaneous intracranial hemorrhage
J Neurol Sci , 332 (1-2) , 116-120  (2013)
10.1016/j.jns.2013.06.031.
原著論文8
Suzuki R, Uehara T, Ohara T, et al.
A questionnaire survey of general practitioners in Japan in relation to management ischemic attack
Int J Stroke , 9 (4) , e16-e17  (2014)
10.1111/ijs.12266
原著論文9
Tanaka K, Uehara T, Matsushima H, et al.
Features of patients with amaurosis fugax as transient ischemic attack: Analyses of data from a multicenter retrospective study in Japan
J Stroke Cerebrovasc Dis , 23 (3) , e151-e155  (2014)
10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2013.09.017.
原著論文10
Uehara T, Kimura K, Okada Y, et al.
Factors associated with onset-to-door time in TIA patients admitted to stroke centers
Stroke , 45 (2) , 611-613  (2014)
10.1161/STROKEAHA.113.003367
原著論文11
Fujinami J, Uehara T, Kimura K, et al
Incidence and Predictors of Ischemic Stroke Events duringHospitalization in Patients with Transient Ischemic Attack
Cerebrovasc Dis , 37 , 330-335  (2014)
原著論文12
Ohara T, Uehara T, Toyoda K, et al
Early Stroke Risk after Transient Ischemic Attack in Patients Without Large-Artery Disease or Atrial Fibrillation.
J Stroke Cerebrovasc Dis  (2015)
原著論文13
Suzuki R, Uehara T, Ohara T, et al
Transient ischemic attack clinic in an urban area of Japan
Int J Stroke  (2015)
原著論文14
上原敏志、峰松一夫
わが国におけるTIAレジストリーの現況
脳卒中 , 37 , 197-201  (2015)

公開日・更新日

公開日
2014-05-19
更新日
2017-05-25

収支報告書

文献番号
201120016Z