文献情報
文献番号
201120014A
報告書区分
総括
研究課題名
禁煙治療薬による喫煙関連疾患予防法の再評価と効果的な禁煙指導法の確立と普及のための多施設共同臨床試験
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-015
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
東 純一(学校法人兵庫医科大学 兵庫医療大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
- 藤尾 慈(大阪大学大学院薬学研究科 臨床薬効解析学部分野)
- 前田真貴子(大阪大学大学院薬学研究科 附属実践薬学教育研究センター)
- 薗はじめ(薗はじめクリニック)
- 南畝晋平(学校法人兵庫医科大学 兵庫医療大学 薬学部)
- 伊藤継孝(薬効ゲノム情報株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
多彩な喫煙関連疾患の予防策として「禁煙」に勝るものはない。喫煙は疾病であり、喫煙習慣によって形成されたニコチン依存により、禁煙には大きな困難が伴う。この問題を解決するには、個人に最適な禁煙指導法と禁煙補助薬の適正使用法とを考案する必要がある。本研究は禁煙支援を主目的とし、大規模臨床試験を実施して「個の医療」に立脚する日本人における喫煙習慣・禁煙指導に関する新たなエビデンスを構築する。
研究方法
平成21年4月より「禁煙補助薬の個別化適正投与法確立のためのゲノム薬理学的研究実施計画書」に基づき臨床試験を開始した。
臨床研究を進めるにあたっては、研究等の対象となる個人の人権擁護については、遺伝子は通常の採血により得られた血液から抽出した。関連解析では、日常診療から得られた患者情報を用いるので、人間の尊厳を損なうような方法は含んでいない。また、遺伝子情報を含む個人情報が外部に流出した際にその情報に基づいた差別行為を産み出す可能性が考えられるが、このような可能性を防ぐため、本研究では、個人情報の管理を厳重に行った。具体的には、個人を特定できる情報を院内(参加協力施設)で匿名化し、匿名化番号、血液サンプルおよび診療情報を兵庫医療大学に提供された。各施設で匿名化された番号に、本学の個人情報識別管理者が解析用に連結番号を付し、解析担当者に提供した。個人情報の管理には専用のコンピューターを用いて行い、教室内外のネットワークとは接続しないようにした。研究等の対象となる者に理解を求め、同意を得た。
尚、本臨床試験は、兵庫医療大学倫理委員会および大阪大学ゲノム倫理委員会の承認の下において実施した。
1) ニコチン代謝酵素の遺伝子型とニコチン依存度との関連
臨床試験参加の同意を得ることのできた喫煙者を対象にCYP2A6*1、*4、*7、*9の判定を行った。
2) 喫煙による薬物代謝酵素誘導の分子メカニズに関する研究
ニコチン代謝酵素活性が喫煙により誘導される可能性を想起し、タバコ煙に含有される成分によるニコチン代謝酵素の発現誘導への影響について検討した。
3. 禁煙外来実態調査
禁煙外来の現状について調査研究を行った。
調査対象は、禁煙指導者が所属する医療機関とし、1096名の指導者に調査用紙を郵送した。調査期間は、平成22年8月~平成22年10月末までとし、アンケート回答時の施設状況や禁煙治療体制を調査した。
4. 遺伝子判定結果通知が禁煙維持率上昇に及ぼす影響を検討した。
臨床研究を進めるにあたっては、研究等の対象となる個人の人権擁護については、遺伝子は通常の採血により得られた血液から抽出した。関連解析では、日常診療から得られた患者情報を用いるので、人間の尊厳を損なうような方法は含んでいない。また、遺伝子情報を含む個人情報が外部に流出した際にその情報に基づいた差別行為を産み出す可能性が考えられるが、このような可能性を防ぐため、本研究では、個人情報の管理を厳重に行った。具体的には、個人を特定できる情報を院内(参加協力施設)で匿名化し、匿名化番号、血液サンプルおよび診療情報を兵庫医療大学に提供された。各施設で匿名化された番号に、本学の個人情報識別管理者が解析用に連結番号を付し、解析担当者に提供した。個人情報の管理には専用のコンピューターを用いて行い、教室内外のネットワークとは接続しないようにした。研究等の対象となる者に理解を求め、同意を得た。
尚、本臨床試験は、兵庫医療大学倫理委員会および大阪大学ゲノム倫理委員会の承認の下において実施した。
1) ニコチン代謝酵素の遺伝子型とニコチン依存度との関連
臨床試験参加の同意を得ることのできた喫煙者を対象にCYP2A6*1、*4、*7、*9の判定を行った。
2) 喫煙による薬物代謝酵素誘導の分子メカニズに関する研究
ニコチン代謝酵素活性が喫煙により誘導される可能性を想起し、タバコ煙に含有される成分によるニコチン代謝酵素の発現誘導への影響について検討した。
3. 禁煙外来実態調査
禁煙外来の現状について調査研究を行った。
調査対象は、禁煙指導者が所属する医療機関とし、1096名の指導者に調査用紙を郵送した。調査期間は、平成22年8月~平成22年10月末までとし、アンケート回答時の施設状況や禁煙治療体制を調査した。
4. 遺伝子判定結果通知が禁煙維持率上昇に及ぼす影響を検討した。
結果と考察
1. 臨床研究の成果
最終年度末までに1061例の喫煙者の試験参加の同意を得た。研究協力者として参加していた医師の中には研究協力を途中で放棄した施設があったことから、エントリーされた全症例の症例記録用紙の回収には至らなかった。
途中放棄した施設(愛媛県加藤クリニック 院長加藤正隆、山形県 山田菊地医院 院長山田修久)へは、症例記録用紙(約250例分)の回収依頼を何度か行ったが、全く応答がなかった。
2. ニコチン依存、禁煙達成、有害事象に関連する遺伝子および遺伝子型の探索
①禁煙達成率:
禁煙外来終了時の禁煙達成率を求めた結果、ニコチンパッチ使用群は67.7%(44/65)、バレニクリン使用群では80.1%(549/685)であった。また、禁煙開始後1年間の追跡期間終了時点の禁煙達成率は、ニコチンパッチ群で63.3%(19/30)、バレニクリン治療群で76.8%(220/469)であった。
②有害事象発現状況:
禁煙治療期間中(1~12週目)の問診時に患者から訴えたのあった症状は、ニコチンパッチ使用時の有害事象発現率の最も高かった症状は皮膚炎であった。次いで精神・神経症状であった。
バレニクリン使用時の有害事象発現率の最も高った症状は、吐気・嘔吐で36.4%(286/795)あった。この結果は、海外の報告とほぼ同様の値であった。
2) ニコチン代謝酵素 Cytochrome P450 (CYP)2A6遺伝子型とニコチン依存度、禁煙達成率との関連
CYP2A6は遺伝子多型の存在によりCYP2A6の酵素活性に個体差が生じることが明らかとなった。
また、CYP2A6遺伝子型と呼気CO濃度の関係について調査したところ、ニコチン代謝酵素活性が低下する喫煙者では、呼気CO濃度が顕著に低いことが示唆された。
CYP2A6遺伝子型が禁煙達成率に及ぼす影響について検討し、CYP2A6遺伝子型はニコチンパッチの禁煙達成率に影響を及ぼす傾向にあった。
最終年度末までに1061例の喫煙者の試験参加の同意を得た。研究協力者として参加していた医師の中には研究協力を途中で放棄した施設があったことから、エントリーされた全症例の症例記録用紙の回収には至らなかった。
途中放棄した施設(愛媛県加藤クリニック 院長加藤正隆、山形県 山田菊地医院 院長山田修久)へは、症例記録用紙(約250例分)の回収依頼を何度か行ったが、全く応答がなかった。
2. ニコチン依存、禁煙達成、有害事象に関連する遺伝子および遺伝子型の探索
①禁煙達成率:
禁煙外来終了時の禁煙達成率を求めた結果、ニコチンパッチ使用群は67.7%(44/65)、バレニクリン使用群では80.1%(549/685)であった。また、禁煙開始後1年間の追跡期間終了時点の禁煙達成率は、ニコチンパッチ群で63.3%(19/30)、バレニクリン治療群で76.8%(220/469)であった。
②有害事象発現状況:
禁煙治療期間中(1~12週目)の問診時に患者から訴えたのあった症状は、ニコチンパッチ使用時の有害事象発現率の最も高かった症状は皮膚炎であった。次いで精神・神経症状であった。
バレニクリン使用時の有害事象発現率の最も高った症状は、吐気・嘔吐で36.4%(286/795)あった。この結果は、海外の報告とほぼ同様の値であった。
2) ニコチン代謝酵素 Cytochrome P450 (CYP)2A6遺伝子型とニコチン依存度、禁煙達成率との関連
CYP2A6は遺伝子多型の存在によりCYP2A6の酵素活性に個体差が生じることが明らかとなった。
また、CYP2A6遺伝子型と呼気CO濃度の関係について調査したところ、ニコチン代謝酵素活性が低下する喫煙者では、呼気CO濃度が顕著に低いことが示唆された。
CYP2A6遺伝子型が禁煙達成率に及ぼす影響について検討し、CYP2A6遺伝子型はニコチンパッチの禁煙達成率に影響を及ぼす傾向にあった。
結論
ニコチン依存形成に関与する遺伝子多型および適正な禁煙治療薬の選択に関与する遺伝子多型の解析結果は、タバコによる健康被害の重篤性を周知させるための科学的根拠となる。
公開日・更新日
公開日
2015-10-07
更新日
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