特定保健指導対象者以外も含めた生活習慣病予備群に対する保健指導効果の検証及び評価手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201120012A
報告書区分
総括
研究課題名
特定保健指導対象者以外も含めた生活習慣病予備群に対する保健指導効果の検証及び評価手法の開発に関する研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-013
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 昌(独立行政法人国立健康・栄養研究所 栄養疫学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 饗場 直美(神奈川工科大学 応用バイオ科学部)
  • 宮地 元彦(独立行政法人国立健康・栄養研究所 健康増進研究部)
  • 森田 明美(独立行政法人国立健康・栄養研究所 栄養疫学研究部)
  • 水野 正一(独立行政法人国立健康・栄養研究所 栄養教育研究部)
  • 山田 晃一(独立行政法人国立健康・栄養研究所 栄養教育研究部)
  • 出浦 喜丈(佐久総合病院人間ドック科)
  • 野田 光彦(独立行政法人国立国際医療研究センター 糖尿病研究部)
  • 佐々木 敏(東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
6,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
佐久総合病院人間ドック受診者を対象に大規模コホートを設定し、受診者の糖尿病の罹患率と発症要因、特定保健指導をはじめとする生活習慣改善の効果などについて検証することを目的とする。
研究方法
平成23年度は、人間ドック受診者の全健診データを活用して、長期フォローアップを可能とするデータベースの構築を目指し、2001-2010年の10年間の縦断的データベースを作成した。これらのデータベースを使用して、WHO耐糖能異常の診断基準にもとづいて、2006―2010年の5年間の連続受診者における糖尿病発症リスクの基礎的解析を実施した。
また、生活習慣病予備群の新規コホート登録者については、平成23年度も継続して募集し、通常検査項目に加えて、コホート研究に必要な詳細な食事栄養調査、身体活動量調査、性格心理特性アンケート調査、動脈硬化度、遺伝子解析、腹部CTによる内臓脂肪の測定などを実施した。
結果と考察
データベース解析により、正常な者に比べて多変量調整後も、インスリン分泌不全のある者は約5倍、インスリン抵抗性のある者は約3倍、インスリン分泌不全と抵抗性の両方ある者は約7倍、糖尿病発症リスクが高値であることがわかった。IGTの者は2h-OGTTとHbA1cを組み合わせると、糖尿病発症を最も有効に予測できることが示された。境界型からの糖尿病発症率は18%であった。
新規コホート登録者は平成24年3月末までに、3871人となった。初年度登録者の1年後の糖尿病発症をみると、境界型からの糖尿病発症率は7%であった。身体活動では、23メッツ・時の中強度以上の身体活動量に相当する歩数は、おおよそ1日8500から10000歩に相当することが示唆された。性格・心理特性と各検査項目との関連も見出された。
結論
佐久総合病院人間ドック科データは、近年の状況を反映し、1年毎のデータがあり、空腹時血糖値、75gOGTT2h血糖値、HbA1c値、HOMA-IR、インスリン分泌指数などの指標があることが大きな利点といえる。縦断的データベースの解析により、IGTにおける将来の2型糖尿病発症予測に有効な血糖指標が示され、早期のリスクを発見して運動と食事で糖尿病発症を抑えるのが効果的予防法であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201120012B
報告書区分
総合
研究課題名
特定保健指導対象者以外も含めた生活習慣病予備群に対する保健指導効果の検証及び評価手法の開発に関する研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-013
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 昌(独立行政法人国立健康・栄養研究所 栄養疫学研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
私達は平成18-20年に佐久総合病院人間ドック受診者を対象に肥満克服プログラムSCOPを実施し、肥満克服にさまざまな要因が関係することを明らかにした。それを拡大し、本研究では、さらに人間ドック受診者を対象として研究を拡げ、栄養摂取・身体活動状況、過去の健診データの収集と追跡調査から、メタボリックシンドロームの自然史を明らかにし、糖尿病発症のリスクを明らかにすることを目的とした。
研究方法
過去10年の長野県佐久総合病院人間ドックのこれまでの受診者をコホート対象者としてデータベース化し、その中から生活習慣病予備群の新規コホート登録者を募集した。ドックでは、通常検査項目として、ほぼ全員にIRIを含む糖負荷試験を実施しているのが特徴である。通常検査項目に加えて、登録者には、コホート研究に必要な詳細な食事栄養調査、身体活動量調査、性格心理特性アンケート調査、動脈硬化度、腹部CTによる内臓脂肪の測定などを実施した。また、SCOP対象者を含めてサブコホートを設定し栄養及び運動指導を実施及び追跡して、長期の介入効果を検証し、特に脱落者の要因を明らかにして対策を研究した。
結果と考察
長野県佐久総合病院人間ドックの2001年から2010年までの受診者約45000人をコホート対象者としてデータベース化した。新規コホート登録者は、平成21年1月から23年11月31日までの3年間で、3694名であった。
遺伝子解析では、プレプログレリン遺伝子やレプチン遺伝子など4遺伝子について有意な肥満傾向、糖尿病罹患傾向を見出した。身体活動では、23メッツ・時の中強度以上の身体活動量に相当する歩数は、おおよそ1日8500から10,000歩に相当することが本コホートや他のコホートとの比較解析で示唆された。性格・心理特性と各検査項目との関連も見出された。また、データベースの解析により、メタボリックシンドロームからの糖尿病発症に至る重要な要因などが検出された。
結論
本研究では、人間ドック受診者に対象を広げ、栄養摂取・身体活動状況を把握するとともに、過去の健診データの収集と追跡調査によって、メタボリックシンドロームからの糖尿病発症に関する自然史を明らかにした。同時に、新規サブコホートに栄養指導及び運動指導を実施して介入効果の検証を行った。特に脱落者についてはその要因を明らかにし対策を考え、認知行動変容療法の効果を確認した。また、おおよそ1日8500から10,000歩程度の運動をすることが健康づくりに有効と思われた。

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201120012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、人間ドック受診者に対象を広げ、栄養摂取・身体活動状況を把握するとともに、過去の健診データの収集と追跡調査によって、メタボリックシンドロームからの糖尿病発症に関する自然史を明らかにした。同時に、新規サブコホートに栄養指導及び運動指導を実施して介入効果の検証を行った。特に脱落者についてはその要因を明らかにし対策を考え、認知行動変容療法の効果を確認した。
臨床的観点からの成果
ドック受診者のデータを10年分統一データベース化できたことにより糖尿病発症のリスクなどが経時的、多面的に解析できるようになった。HbA1cは糖尿病における主要な血糖コントロールのマーカーであるが,将来のHbA1cを規定する因子としてGLや内臓脂肪面積は重要であることなどが示唆された。
ガイドライン等の開発
日本抗加齢医学会栄養運動療法ガイドライン策定に向けて、主任研究者が委員長となり当研究班のメンバーを中心に委員会を結成し、ガイドライン開発を進めている。
その他行政的観点からの成果
介入効果の検証により、現在実施されている特定健診保健指導の対象者での、効果不良群や脱落群に対する対策を考案した。
その他のインパクト
日本抗加齢医学会第11回総会、第12回総会において、栄養運動療法ガイドライン策定についてのワークショップを開催した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
11件
総説および書籍等
その他論文(英文等)
4件
総説および書籍等
学会発表(国内学会)
51件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takezawa J, Yamada K, Morita A, et all
Preproghrelin gene polymorphisms in obese Japanese: Association with diabetes mellitus in men and with metabolic syndrome parameters in women.
Obes Res Clin Pract , 3 , 179-191  (2009)
原著論文2
Tanaka T, Morita A, Kato M, et all
SCOP Study Group. Congener-specific polychlorinated biphenyls and the prevalence of diabetes in the Saku Control Obesity Program (SCOP).
Endocr J , 58 (7) , 589-596  (2011)
原著論文3
Park J, Ishikawa-Takata K, Tanaka S, et all
Relation of body composition to daily physical activity in free-living Japanese adult women.
Br J Nutr , 106 (7) , 1117-1127  (2011)
原著論文4
Miyake R, Ohkawara K, Ishikawa-Takata K, et all
Obese Japanese adults with type 2 diabetes have higher basal metabolic rate than non-diabetic adults.
Nutr Sci Vitaminol (Tokyo) , 57 (5) , 348-354  (2011)
原著論文5
Nakade M, Aiba N, Suda N, et all
Behavioral change during weight loss program and one-year follow-up: Saku Control Obesity Program (SCOP) in Japan.
Asia Pacific J Clin Nutr , 21 (1) , 22-34  (2012)
原著論文6
Nakade M, Aiba N, Morita A, et all
What behaviors are important for successful weight maintenance?
J Obesity  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201120012Z