エネルギー必要量推定法に関する基盤的研究

文献情報

文献番号
201120007A
報告書区分
総括
研究課題名
エネルギー必要量推定法に関する基盤的研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
田中 茂穂(独立行政法人国立健康・栄養研究所 健康増進研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 高田 和子(独立行政法人国立健康・栄養研究所 栄養教育研究部)
  • 田畑 泉(立命館大学 スポーツ健康科学部)
  • 金子 佳代子(横浜国立大学 教育人間科学部 )
  • 井上 茂(東京医科大学 医学部)
  • 引原 有輝(千葉工業大学 工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
6,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「日本人の食事摂取基準」における推定エネルギー必要量を決定するために、成人や小児において、身体活動量や基礎代謝量などの推定を通じてエネルギー消費量の推定法を改善・確立することが、本研究の主な目的である。
研究方法
1)255名の成人男女を対象に、二重標識水(DLW)法による1日の身体活動レベルの測定と加速度計による歩数の測定を行い、職種、通勤手段、運動習慣、育児・介護の有無による比較を行った。2)小学生70名、中学生80名、高校生71名を対象として、フード法による基礎代謝量の測定および身体計測を実施した。3)茨城県水戸市の中学1年生および2年生、男女40名に、DLW法と3次元加速度計による総エネルギー消費量を比較した。4)健常成人男性7名を対象に、エネルギー代謝測定室の中で高強度・短時間・間欠的運動を行った場合と、行わなかった場合の酸素摂取量を測定した。5)成人21名を対象に、週末を含む3日間の加速度計装着に基づいて判定した装着時間と、装着記録を基に算出した装着時間とを比較した。
結果と考察
1)職種や運動習慣、通勤手段等を考慮することで、身体活動レベルが異なることが明らかになった。これらの結果をもとに今後、身体活動レベルを推測する簡易な質問項目の開発などの検討が可能と考えられる。2)小児において、体重1kgあたりのBMRを基礎代謝基準値と比較すると、8-9歳男女、10-11歳女子、中学生および高校生女子以外の群では実測値と基準値の差は±5%以内であった。3)茨城県水戸市の中学生において、身体活動レベルは1.77±0.16であり、ほぼ成人の標準値であった。DLW法と加速度計による推定値との間には強固な相関関係が認められ、より個人レベルでのTEEの推定が可能となることが示唆された。4)高強度・短時間・間欠的運動は、運動後12時間まで、非運動時に対して酸素摂取量が高くなったが、運動日と非運動日の総エネルギー消費量の差は110kcal程度であった。5)身体活動量を評価する際に必要な非装着時間は、30分から60分間程度の無信号が継続する状態を非装着状態と定義して解析することが妥当であることが示唆された。
結論
子どもにおける基礎代謝量推定法の問題点を指摘するとともに、成人や小児における総エネルギー消費量や身体活動レベルの推定において、新たな方法を提示した。

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201120007B
報告書区分
総合
研究課題名
エネルギー必要量推定法に関する基盤的研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
田中 茂穂(独立行政法人国立健康・栄養研究所 健康増進研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 高田 和子(独立行政法人国立健康・栄養研究所 栄養教育研究部)
  • 田畑 泉(立命館大学 スポーツ健康科学部)
  • 金子 佳代子(横浜国立大学 教育人間科学部)
  • 井上 茂(東京医科大学 医学部)
  • 引原 有輝(千葉工業大学 工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「日本人の食事摂取基準」における推定エネルギー必要量を決定するために、身体活動量や基礎代謝量などの推定を通じてエネルギー消費量の推定法を改善・確立することが、本研究の主な目的である。
研究方法
1)健康な成人男女を対象に、身体活動量質問紙(JALSPAQなど)や活動記録法、各種加速度計を用いた日常生活における身体活動量評価法を、二重標識水法を基準として検討した。2)小学生および中学生において、二重標識水法を用いて、身体活動レベルの標準値や推定法を検討した。3)肥満や糖尿病の成人男女を対象に、既存の基礎代謝量推定式の妥当性を検討した。4)小学生から高校生において、基礎代謝基準値の妥当性を検討した。5)加速度計により身体活動量を評価する上で必要な装着/非装着の判定法を、装着記録との比較に基づいて検討した。
結果と考察
1)JALSPAQから得られた仕事中の歩行や中強度活動の所要時間などから、身体活動レベルを推定できることが明らかとなった。また、職種、通勤手段、運動習慣からも、身体活動レベルを推定できることが示唆された。活動記録法から得られた強度別の所要時間と身体活動レベルとの関係も明らかとした。2)複数の中学校の生徒において、成人と同様以上の身体活動レベルが得られた。通学手段や運動など活発な活動時間が関与していることがうかがえたが、さらなる検討が必要である。また、3次元加速度計で、小中学生の総エネルギー消費量が推定できることが示唆された。3)既存の基礎代謝量推定式のうち、国立健康・栄養研究所が発表した推定式を用いると、肥満者においても比較的正確に推定できるが、糖尿病の場合には過大評価することが明らかとなった。4)小児において、体重1kgあたりのBMRを基礎代謝基準値と比較すると、8-9歳男女、10-11歳女子、中学生および高校生女子以外の群では実測値と基準値の差は±5%以内であった。5)身体活動量を評価する際に必要な非装着時間は、30分から60分間程度の無信号が継続する状態を非装着状態と定義して解析することが妥当であることが示唆された。
結論
成人や小児を対象に、質問紙法や加速度計法により、エネルギー必要量を従来より正確に推定できる方法を提示するとともに、基礎代謝量の推定精度や問題点を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201120007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
当研究所が作成していた推定式は、肥満者ややせを含めて系統的な誤差のない式であることを明らかにした。また、質問紙法による身体活動レベルの推定法について検討を行い、具体的な推定法やその推定誤差についても明示した。家事活動などの日常生活活動を評価できる加速度計を開発や、二重標識水法およびヒューマンカロリメーター法の比較により、歩行以外の活動の重要性を明らかにしたことは、疫学研究・調査において、歩行のみならず日常生活活動の評価法にも焦点を当てる必要があることを示唆する結果でもある。
臨床的観点からの成果
肥満者ややせを含む基礎代謝量の推定式の妥当性や、質問紙法・活動記録法・加速度計法による身体活動レベルの推定法、および食事調査の妥当性に関する結果などは、個人レベルでのエネルギー必要量の推定において新たな推定式の活用が促されるとともに、食事摂取基準の活用および今後の改定に資するものである。また、糖尿病患者における基礎代謝量推定の誤差も明示された。
ガイドライン等の開発
2009年5月に公表された「日本人の食事摂取基準(2010年版)」の「普及啓発セミナー」(2009年後半に全国で実施)や「食事摂取基準活用検討会報告書」(2010年3月)において、基礎代謝量の推定法、二重標識水法を用いたエネルギー消費量・必要量の対象集団別の値や推定法などについて、当研究班の結果が利用された。また、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、総エネルギー消費量や基礎代謝量の推定法に関する英語論文5件とエネルギー摂取量の推定に関する日本語論文1件、および総説2件が引用された。
その他行政的観点からの成果
中高強度活動の推定に歩数がある程度、有効であることを示したのは、東京都による歩数調査などの実施や「健康づくりのための身体活動基準2013」において、重要な根拠となった。
その他のインパクト
歩行以外の身体活動の重要性については、読売新聞(2012年5月12日)などで取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
29件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
42件
学会発表(国際学会等)
21件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
「日本人の食事摂取基準(2010年版)」の「食事摂取基準活用検討会報告書」(2010年3月)
その他成果(普及・啓発活動)
1件
「日本人の食事摂取基準(2010年版)」の「普及啓発セミナー」

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Park J,Ishikawa-Takata K,Tanaka S,et al.
Relation of body composition to daily physical activity in free-living Japanese adult women
British Journal of Nutrition , 106 (7) , 1117-1127  (2011)
原著論文2
Park JH,Ishikawa-Takata K,Tanaka S,et al.
Effects of walking speed and step frequency on estimation of physical activity using accelerometers
Journal of Physiological Anthropology , 30 (3) , 119-127  (2011)
原著論文3
Miyake R, Tanaka S, Ohkawara K, et al.
Validity of predictive equations for basal metabolic rate in Japanese adults
Journal of Nutritional Science and Vitaminology , 57 (3) , 224-232  (2011)
原著論文4
Miyake R,Ohkawara K,Ishikawa-Takata K, et al.
Obese Japanese adults with Type 2 diabetes have higher basal metabolic rates than non-diabetic adults
Journal of Nutritional Science and Vitaminology , 57 (5) , 348-354  (2011)
原著論文5
Ohkawara K,Ishikawa-Takata K,Park J,et al.
How much locomotive activity is needed for an active physical activity level: analysis of total step counts
BMC Research Notes , 4 , 512-  (2011)
原著論文6
Ohkawara K, Oshima H, Hikihara Y, et al.
Real-time estimation of daily physical activity intensity by triaxial accelerometer and a gravity-removal classification algorithm
British Journal of Nutrition , 105 (6) , 1681-1691  (2011)
原著論文7
Ishikawa-Takata K, Naito Y, Tanaka S, et al.
Use of doubly labeled water to validate a physical activity questionnaire developed for the Japanese population
Journal of Epidemiology , 21 (2) , 114-121  (2011)
原著論文8
Oshima Y、Kawaguchi K、Tanaka S、et al.
Classifying household and locomotive activities using a triaxial accelerometer
Gait and Posture , 31 (3) , 370-374  (2010)
原著論文9
Kaneko K, Ito C, Koizumi K, Watanabe S, Umeda Y, Ishikawa-Takata K.
Resting energy expenditure (REE) in six- to seventeen-year-old Japanese children and adolescents
J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo) , 59 (4) , 299-309  (2013)
原著論文10
Ishikawa-Takata K, Kaneko K, Koizumi K, Ito C.
Comparison of physical activity energy expenditure in Japanese adolescents assessed by EW4800P triaxial accelerometry and the doubly labelled water method
Br J Nutr , 110 (7) , 1347-1355  (2013)
原著論文11
Park J, Ishikawa-Takata K, Tanaka S, Hikihara Y, Ohkawara K, Watanabe S, et al.
The relationship of body composition to daily physical activity in free-living Japanese adult men
Br J Nutr , 111 (1) , 182-188  (2014)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
2017-05-25

収支報告書

文献番号
201120007Z