女性における生活習慣病戦略の確立---妊娠中のイベントにより生活習慣病ハイリスク群をいかに効果的に選定し予防するか

文献情報

文献番号
201120004A
報告書区分
総括
研究課題名
女性における生活習慣病戦略の確立---妊娠中のイベントにより生活習慣病ハイリスク群をいかに効果的に選定し予防するか
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
北川 道弘(独立行政法人国立成育医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 今井 潤(東北大学大学院薬学研究科)
  • 関沢 明彦(昭和大学医学部)
  • 目時 弘仁(東北大学大学院医学系研究科)
  • 堀川 玲子(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 坂本 なほ子(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 荒田 尚子(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 和栗 雅子(大阪府立母子保健総合医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
6,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人女性における妊娠中のイベントと高血圧、糖尿病、脂質代謝異常症などの生活習慣病、その後に発症する冠動脈疾患や脳動脈硬化症などの動脈硬化性疾患との関連性、および、生活習慣病リスクの母体から次世代への継承を明らかにする。
研究方法
既存の出生コホート研究参加者と妊娠中に妊娠高血圧症候群(PIH)などを発症した女性を対象に、PIHの発症、SGA児およびLGA児分娩女性がその後の生活習慣病の発症リスクが高いか否かを産後5年の時点で検討した。それらの児についての体格や代謝因子も検討した。次に、産後5年の健診を受けた児の祖母を対象とし、祖母が母親を妊娠していた際の母子手帳情報と祖母の現在の持病の関連について検討した。さらに、大阪府立母子保健総合医療センターにおける妊娠中から分娩後に行われた糖負荷検査の長期追跡データを使用し、2010年の妊娠糖尿病の新定義・診断基準で分類し直した後の分娩後の糖尿病進展率を検討した。最後に、スズキ記念病院にて登録・追跡が行われているBOSHI研究のデータを用いて妊娠中の食塩摂取と血圧値、および初経産婦における家庭血圧値推移の差に関して解析を行った。
結果と考察
①妊娠高血圧症候群合併女性は、産後5年という早期の段階で18.5%に高血圧をみとめ、その発症リスクは約7倍であった。②LGA児分娩女性は、AGA児分娩女性に比較して、妊娠前からBMI高値であり、5年後さらに肥満およびメタボック症候群リスクは増加した。③PIH合併女性の児、SGA児、LGA児の5歳時の代謝指標や血圧値に差はなかった。④母体の妊娠前のやせは児の出生体重の低下と関連し、児の出生体重は5歳時の体格と相関した。母体の妊娠前のBMIが、5歳児のBMIに関連した。⑤祖母妊娠期の収縮期血圧レベルが高い者は、低い者と比べて高血圧を持病とするオッズ比が高く、慢性疾患(糖尿病/高血圧/心脳血管関連)を持病とするオッズ比が2.4と高値を示した。⑥新診断基準による妊娠糖尿病合併女性の糖代謝予後は、GDM、非GDMでは、産後5年でそれぞれ約20%、1%であった。⑦妊娠初期の食塩摂取量が極端に多い場合に妊娠中の家庭血圧レベルが高値を示した。経産婦に比べ初産婦で外来血圧推移は高値を示したが、家庭血圧推移は初産婦と経産婦で差はみとめられなかった。
結論
妊娠高血圧症候群や糖代謝異常などの妊娠合併症、LGA児を出産した経験のある女性は高血圧や糖尿病のハイリスクグループであることを日本人においても明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201120004B
報告書区分
総合
研究課題名
女性における生活習慣病戦略の確立---妊娠中のイベントにより生活習慣病ハイリスク群をいかに効果的に選定し予防するか
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
北川 道弘(独立行政法人国立成育医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 今井 潤(東北大学大学院薬学研究科)
  • 関沢 明彦(昭和大学医学部)
  • 目時 弘仁(東北大学大学院医学研究科)
  • 堀川 玲子(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 坂本 なほ子(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 荒田 尚子(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 和栗 雅子(大阪府立母子保健総合医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人女性における妊娠中のイベントと高血圧、糖尿病、脂質代謝異常症などの生活習慣病、その後に発症する冠動脈疾患や脳動脈硬化症などの動脈硬化性疾患との関連性や生活習慣病リスクの母体から次世代への継承を明らかにすることを目的とする。
研究方法
まず、妊娠中のイベントと生活習慣病のリスクを解析するための基礎データとして、妊娠高血圧症候群発症や妊娠糖尿病発症の予測因子の解析を行った。次に、成育医療研究センターと昭和大学病院で分娩した母児を対象に5年健診の実施とデータ解析、宮城で行われているBOSHI研究の一部としての母子手帳を用いた女性の長期予後の解析、大阪府立母子保健総合医療センターの大量の妊娠糖尿病追跡データの解析を行い、妊娠中のイベントである妊娠高血圧症候群、胎児成長異常(胎児過成長や胎児成長遅延)、早産、妊娠糖尿病と、分娩後の高血圧、2型糖尿病、肥満などの生活習慣病発症との関連を解析した。これらの女性の児に関して、同様に代謝指標との関連を解析した。
結果と考察
妊娠中のイベントである妊娠高血圧症候群、胎児成長異常(胎児過成長や胎児成長遅延)、早産、妊娠糖尿病を合併した女性は、分娩後に高血圧、2型糖尿病、肥満などの生活習慣病を高率に発症することを明らかにした。特に、産後5年で、妊娠糖尿病発症女性の糖尿病発症率は約20%、妊娠高血圧症候群発症女性の高血圧発症率は18.5%と高率であった。児に対しては、低出生体重で生まれると、上記の妊娠中イベント発症リスクの増加をみとめることを明らかにし、高出生体重で生まれると小児期、成人後の肥満に繋がることを明らかにした。妊娠中のイベントを用いてハイリスク群を効果的に予防する対策として、①妊娠分娩時の上記ハイリスクグループに対するリスクの啓蒙と生活スタイル改善指導(リーフレット作成)、②児健診(3歳、5歳、就学前健診)と同時に上記ハイリスク女性健診の実施を行う(体重測定、血圧測定、血糖・HbA1c測定など)、③40歳以上の特定健診等での、女性の妊娠歴、妊娠合併症を聴取とそれらを用いた女性の生活習慣病リスクのスコア化など、が考えられた。妊娠中のイベントが子どもに及ぼす影響に関しては、さらに長期追跡と症例の蓄積が必要と考えられた。
結論
妊娠中に妊娠高血圧症候群、胎児成長異常、早産、妊娠糖尿病を合併した女性を対象としたハイリスクアプローチは女性における生活習慣病戦略として有効である。これらを合併した女性の児に関しては、さらに長期追跡と症例の蓄積が必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201120004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本人女性において、妊娠中のイベントと高血圧、糖尿病、脂質代謝異常症などの生活習慣病、その後に発症する冠動脈疾患や脳動脈硬化症などの動脈硬化性疾患との関連性を既存の出生コホート研究、母子手帳記録データおよび既存の追跡データを用いて多方面から検討した有意義な研究である。
臨床的観点からの成果
本研究によって、妊娠中のイベントである妊娠高血圧症候群、胎児成長異常(胎児過成長や胎児成長遅延)、早産、妊娠糖尿病を合併した女性は、分娩後に高血圧、2型糖尿病、肥満などの生活習慣病を高率に発症することを明らかにした。本研究結果から、女性の生活習慣病予防対策として、「妊娠」を女性の生涯の健康についての「検診」の機会としての有効利用、妊娠中に上記のイベントを生じた女性を対象としたいわゆるハイリスクアプローチが有効である可能性を示すことができ、今後の女性医療の発展に多いに寄与する。
ガイドライン等の開発
本研究期間中には、特にガイドライン作成は行われていないが、今後女性の健康に関するガイドライン作成に役立つ。
その他行政的観点からの成果
妊娠中のイベントを用いてハイリスク群を効果的に選定・予防する施策を具体的に示し、現在すでに行われている保健事業を有効に母親と子どもの生活習慣病予防対策に生かすことが可能であり、母児の健康増進に大きく貢献することができる。
その他のインパクト
朝日新聞に低出生体重で生まれた女性が妊娠糖尿病になるリスクが高いことを取り上げられた(2011年1月7日)。また、平成23年「女性の健康週間」イベント(2011・3・2)において、「今、なぜ女性の健康づくりの視点が大切なのか」に関する講演・シンポジウムに参加した。その他、いくつかの地方自治体の保健師を対象とした講演や座談会に参加するなど、情報発信を行い、マスコミや一般からの注目を受けることができた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
21件
学会発表(国際学会等)
19件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Seung Chik Jwa1, Naoko Arata, Naoko Sakamoto,et al.
Prediction of pregnancy-induced hypertension by a shift of blood pressure class according to the JSH 2009 guidelines.
Hypertension Research , 34 (11) , 1203-1208  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201120004Z