温泉利用が健康増進に与える効果および安全性に関する研究

文献情報

文献番号
201120002A
報告書区分
総括
研究課題名
温泉利用が健康増進に与える効果および安全性に関する研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 佳典(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 荒木 厚(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター病院)
  • 西川 武志(北海道教育大学教育学部)
  • 吉田 裕人(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 )
  • 金 憲経(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 )
  • 齋藤 京子(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 )
  • 内田 勇人(兵庫県立大学環境人間学部)
  • 渡辺 修一郎(桜美林大学老年学研究科)
  • 田中 千晶(桜美林大学老年学研究科)
  • 小林 和成(群馬パース大学・地域看護学)
  • 山田 敦弘((株)日本総合研究所・医療・保健・情報システム)
  • 深谷 太郎(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究プログラム(以下、すぷりんぐ)は、参加者の短期的な介入効果、すぷりんぐ修了者を対象として、プログラムの長期的効果、参加者の心理的要因と介入効果の関係、本介入プログラムにおいてみられた下肢機能への介入効果に関連して、足部の問題と転倒経験の関連、高齢者の皮膚状態に与える影響、医療保険者にとって利用しやすい温泉のための健康関連サービスの特性、の6点を目的としている。
研究方法
上記の目的中、初めの5つは、これまで本研究で行ってきた介入フィールドの対象者のデータを用いた。6つめは、今年度新たに、東京都に所在する健康保険組合の医療保険者を対象にしたアンケート調査を実施した。
結果と考察
短期効果としては高齢者はTUGとSF-8精神的サマリースコアに有意な主効果(期間)が、開眼片足立ち、TUG、WHO-5に有意な交互作用が認められた。熟年者ではTUGに有意な主効果(群と期間)が認められ、体重、腹囲、BMI等に有意な交互作用が認められた。追跡研究では2年追跡の結果、TUGに有意な改善が確認されたが、他の測定項目には有意な変化は確認されなかった。運動充足感はSF-8下位8項目等に有意差が認められ、反復測定分散分析の結果もTUG等に有意な期間の主効果、精神的自立性尺度等に有意な群の主効果が認められた。BMIはすべて有意であった。足部の問題は身体機能と有意な関連はなく、主観的機能不安と有意な関連性が認められた。越生研究では介入前後に角層水分量値に関して、温泉のみ群において有意な改善が認められ、経皮水分蒸散量については、対照群(D群)のみ有意な効果が示されなかった。しかし草津ではいずれも有意ではなかった。
健康保険組合から選ばれる温泉地における健康増進プログラムとなるためには、短期間で、手軽に夫婦など家族で取り組め、費用対効果を明確にすることが要件となることがわかった。
本研究事業で開発した温泉施設を用いた複合プログラムは中年から高齢者における健康増進に効果的に寄与するものと考えられる。しかし、温泉単独の効果は証明されなかった。
一方、コホート研究からは温泉を日常利用することが高齢者の健康に好影響を与えることが示された。
結論
本複合健康増進プログラム「すぷりんぐ」は、運動・栄養教室、温泉入浴から構成される介入プログラムが短期的にも効果を示し、健康行動変容を促すことによって1年から2年に渡る長期的な効果が認められた。

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201120002B
報告書区分
総合
研究課題名
温泉利用が健康増進に与える効果および安全性に関する研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 佳典(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 荒木 厚(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター病院)
  • 西川 武志(北海道教育大学教育学部)
  • 吉田 裕人(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 金 憲経(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 齋藤 京子(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 内田 勇人(兵庫県立大学環境人間学部)
  • 渡辺 修一郎(桜美林大学老年学研究科)
  • 田中 千晶(桜美林大学老年学研究科)
  • 小林 和成(群馬パース大学・地域看護学)
  • 山田 敦弘((株)日本総合研究所・医療・保健・情報システム)
  • 深谷 太郎(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、【1】温泉利用型健康増進施設(以下、温泉施設と称す)において実施できる、複合的な健康増進プログラムの開発とその評価に加え、【2】同プログラムが負担なく継続しやすいかを明らかにし、【3】入浴中や入浴施設内における運動中の事故の予防にむけた安全性の確保の要件、および【4】温泉利用の実態・ニーズの把握、啓発を目的として行った。
研究方法
複数の温泉施設において無作為化対照試験(RCT)を行い、効果を検証した。
結果と考察
RCTの結果、温泉施設を利用した複合健康増進プログラムは、過体重の傾向にある中高年に対しては顕著な減量効果を示し、脂質代謝を正常化する可能性が認められた。また、高齢者に対しては運動機能を有意に改善することができることが明らかとなった(以上研究【1】)。
介入群(運動・栄養教室、温泉入浴)では歩数などが介入後に有意に増加した。2009年度の教室修了時には自主グループの構築に成功し、これまでに187回の自主活動を実施し、1回あたり平均8.1±7.9人の参加者が認められた。また、プログラム参加者の1年追跡の結果、通常歩行速度と開眼片足立ちに有意な差が認められ、介入の効果が介入終了1年後においても維持されていることが示された。また2年追跡の結果、Timed Up & Go Testに有意な改善が確認された(以上研究【2】)。
文献研究の結果、1980年省エネ基準改定前に建築された住宅の占有割合と溺死死亡率との間に有意な正の相関が示された。また、3ヵ月間の介入後、運動介入群は運動後の血圧増加はみられなくなり、運動後の入浴による血圧低下の度合は小さくなる傾向が確認された。以上から運動の継続は運動による血圧変動および入浴後の血圧低下を防ぐ可能性が示された(以上研究【3】)。
地域在住高齢者の月平均入浴回数は22回であった。重回帰分析の結果、温泉の入浴頻度が多い人ほど主観的健康感が有意に良好であることが示され、この傾向は2年後まで維持されることが明らかとなった。また、健康保険組合への調査から、健康保険組合から選ばれる温泉地における健康増進プログラムとなるためには、短期間で、手軽に夫婦など家族で取り組め、且つ費用対効果を明確にすることが要件となることが明らかとなった(以上研究【4】)。
結論
温泉施設を利用した複合健康増進プログラムは、温泉入浴による相乗作用が認められ、安全性、継続性が高いことから効果的な健康増進プログラムであるといえる。

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201120002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
温泉施設を会場とした運動・栄養教室、温泉入浴からなる複合健康増進プログラム(通称:すぷりんぐ)は、過体重傾向者に対して特異的に減量効果を示したことから、本プログラムが減量や脂質代謝改善を中心とした健康増進プログラムとして有用であることが示された。また、高齢者には、下肢機能の向上に有効であった。しかし、温泉入浴単独の効果は見られないことがわかった。よって、今後、介入プログラムを考案する上で、複合型プログラムを優先すべきであることを提示できた。
臨床的観点からの成果
地域在住高齢者においては外反母趾や浮腫など足部の問題が潜在的に運動機能に対する評価の低下を惹起し、この主観的な運動機能評価の低下が高齢者の転倒と関連しているケースが存在することが示めされた。また、身体活動量にかかわらず、主観的な運動充足感が高い者ほど精神・心理的健康度が高いことが明らかとなった。このような足部の問題や運動充足感に主眼を置いた内容・評価も健康増進プログラムにおいては重要であることが示唆された。これらの知見は、糖尿病や閉塞性動脈硬化症患者等のフットケアと運動指導において活用できる。
ガイドライン等の開発
安全性の面からは本プログラムにおける運動後の血圧上昇は軽度で安全なものであることが示された。また、温泉利用型施設における中高年者の運動および運動トレーニングの継続が、運動や入浴前後の血圧変動に及ぼす影響を検討した結果、入浴単独の継続では入浴後の血圧低下を防げないが、運動および栄養療法を併用し継続した場合には血圧低下を防げる可能性が示された。これらは、高齢者に多い、入浴時の事故の予防ガイドラインを作成する上でも重要な基礎資料である。
その他行政的観点からの成果
(1)生活習慣病予防や介護予防においては、単独プログラムよりも複合プログラムが有効である点、および(2)介入終了後の自主運営プロセスについては、地元保健行政に評価され、当該行政による自主グループ育成・支援事業へと至った。また、これらの成果は、群馬県や神奈川県はじめ、多くの行政保健師・栄養士等の研修会において教示された。
その他のインパクト
本研究の介入の際、会場を提供していただいた草津町と、運動指導を委託した群馬県運動指導士会が共同で、草津町のご当地体操を考案し、本介入プログラムで実施した。DVDも作成し、公開している。

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
26件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
介入終了後、草津町で自主活動を継続している

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
桜井良太, 藤原佳典, 金憲経 他
温泉施設を用いた複合的介入プログラムの有効性に関する研究―無作為化比較試験による検討―
日本老年医学会雑誌 , 48 (4) , 352-360  (2011)
原著論文2
桜井良太、藤原佳典、深谷太郎、渡邊麗子、齋藤京子、安永正史、村山陽、吉田裕人、西川武志、新開省二、渡辺修一郎
地域在住高齢者における足部の問題と転倒の関連性―共分散構造分析による検討―
日本老年医学会雑誌 , 49 (4) , 468-475  (2012)
原著論文3
桜井良太、藤原佳典、深谷太郎、齋藤京子、安永正史、鈴木宏幸、野中久美子、金憲経、金美芝、田中千晶、西川武志、内田勇人、新開省二、渡辺修一郎
運動に対する充足感が高齢者および高齢者の運動介入効果に与える影響―運動充足感と身体活動量からの検討―
日本公衆衛生雑誌 , 59 (10) , 743-753  (2012)
原著論文4
桜井良太、藤原佳典、安永正史、野中久美子、鈴木宏幸、大場宏美、深谷太郎、渡辺修一郎、新開省二
地域在住高齢者における運動機能に対する自信の有無による運動機能の差異:転倒恐怖感との比較
日本老年医学会雑誌 , 50 (3) , 369-376  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
2017-05-25

収支報告書

文献番号
201120002Z