歯科疾患予防のための日本人のフッ化物摂取基準とフッ化物応用プログラムに関する研究

文献情報

文献番号
201120001A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科疾患予防のための日本人のフッ化物摂取基準とフッ化物応用プログラムに関する研究
課題番号
H21-循環器等(歯)・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
荒川 浩久(神奈川歯科大学 歯学部・社会医歯学系 健康科学講座 口腔保健学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 眞木 吉信(東京歯科大学 社会歯科学研究室)
  • 小林 清吾(日本大学松戸歯学部 公衆予防歯科学)
  • 高橋 信博(東北大学大学院 歯学研究科 口腔生化学分野)
  • 飯島 洋一(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 口腔保健学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
2,464,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における口腔保健とQOLの向上に資する生涯にわたるう蝕予防推進のために、フッ化物応用を実践できるようにする。そのために、3つの課題(課題1:フッ化物の食事摂取基準策定、課題2:フッ化物応用による齲蝕予防プログラムの策定、課題3:齲蝕予防としてのフッ化物応用の社会的普及・進展にかかわる保健政策における「フッ化物応用のリスクコミュニケーションのあり方の検討」に分けて研究した。
研究方法
前記した研究目的を達成するために、質問紙調査、統計的分析、文献の調査と整理、基礎実験で検討した。
結果と考察
研究課題1:世界には高濃度のフッ化物を含む茶があり、う蝕、酸蝕、摩耗を防止する半面、歯のフッ素症のリスク要因となり得る。わが国の子どものフッ化物の総摂取量の上限推定の結果、一日当りのフッ化物目安量(0.05 mg F/kg b.w.)を超える個人が存在する。
研究課題2:わが国では、フッ化物局所応用の実施または推奨割合は子どもの患者に高く、若い歯科医師ほど高かった。根面う蝕予防に対するフッ化物局所応用の有効性が認められた。保育園児から中学3年生までのフッ化物洗口事業のう蝕予防効果が再確認された。歯みがきや間食回数よりもフッ化物利用がう蝕予防に貢献していた。Mgプレリンスによる歯垢におけるフッ素付着促進およびpH低下抑制効果が認められた。
研究課題3:住民のフロリデーションに関する認知と関心を高めるために、組織活動活性化や住民学習活動は有効であった。先進国からの助言やシンポジウムによってわが国におけるフロリデーション実現に向けた提言案を策定できた。フッ化物洗口実施後に、歯磨き習慣などがおろそかになる、歯のフッ素症が生じる、口内炎などの粘膜への副作用が生じるということは認められなかった。
結論
日本人の子どもには目安量以上にフッ化物を摂取している個人が存在するため、歯のフッ素症発現への配慮が必要であり、高フッ化物濃度の茶の摂取や茶の多量摂取などにも注意を要する。フッ化物局所応用のう蝕予防効果は明らかであり、さらなるう蝕予防メカニズムの解明が必要であるが、わが国では子ども中心に実施されており、根面う蝕の予防の点からも、成人・高齢者への実施を勧奨すべきである。フロリデーション実現のために作成された提言案に沿っての展開が期待される。フッ化物洗口実施後の安全性が確認できた。

公開日・更新日

公開日
2012-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201120001B
報告書区分
総合
研究課題名
歯科疾患予防のための日本人のフッ化物摂取基準とフッ化物応用プログラムに関する研究
課題番号
H21-循環器等(歯)・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
荒川 浩久(神奈川歯科大学 歯学部・社会医歯学系 健康科学講座 口腔保健学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 眞木 吉信(東京歯科大学 社会歯科学研究室)
  • 小林 清吾(日本大学松戸歯学部 公衆予防歯科学)
  • 高橋 信博(東北大学大学院 歯学研究科 口腔生化学分野)
  • 飯島 洋一(長崎大学大学院医歯薬総合研究科 口腔保健学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本歯科医学会の「フッ化物応用についての総合的な見解(平成11年」)を踏まえて、わが国における口腔保健とQOLの向上に資する生涯にわたるう蝕予防推進のために、フッ化物応用を実践できるようにする。そのために、3つの課題(課題1:フッ化物の食事摂取基準策定、課題2:フッ化物応用による齲蝕予防プログラムの策定、課題3:齲蝕予防としてのフッ化物応用の社会的普及・進展にかかわる保健政策における「フッ化物応用のリスクコミュニケーションのあり方の検討」に分けて研究した。
研究方法
前記した研究目的を達成するために、質問紙調査、統計的分析、文献の調査と整理、基礎実験で検討した。
結果と考察
現在でも、フッ化物洗口事業や患者に対するフッ化物応用中心の予防処置プログラムはう蝕予防に有効であり、フッ化物洗口実施後のフォローアップ調査においても問題点は認められなかった。さらに、システマティックレビューによってもフッ化物のう蝕予防効果が確認できた。今後は、提示したう蝕リスクを考慮したライフステージごとのフッ化物利用を推進していくことが必要である。しかしながら、わが国では乳歯萌出開始期ならびに成人・老人に対するフッ化物利用が希薄であり、またフッ化物歯面塗布剤の添付文書などにも問題がある。今後はこれらの見直しと環境整備を図るとともに、これらの実施を勧奨していく必要がある。一方、わが国においてはフッ化物局所応用による急性ならび慢性の毒性発現の可能性がほとんどないし、国内外で茶の摂取がう蝕予防効果を示していることが推測できたが、一日当りのフッ化物目安量(0.05 mg F/kg b.w.)を超えてフッ化物を摂取している個人が存在することも推定され、歯のフッ素症発現には注意していく必要がある。また、フロリデーション実施検討地域に対して組織活動活性化や住民学習活動を継続するとともに、策定されたわが国におけるフロリデーション実現に向けた提言案を有効利用していくべきである。
結論
国民のQOL向上のために、わが国の日本人の食事摂取基準にフッ化物の収載を図り、フロリデーションをはじめフッ化物全身応用の実現を検討する。地域ならびに個人で変化するう蝕リスクを的確に評価し、フッ化物応用を適切に利用していくことが勧奨される。

公開日・更新日

公開日
2012-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201120001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
フッ化物配合歯磨剤が普及し、生活習慣の改善がみられ、子どもたちのう蝕も減少しているなかで、フッ化物洗口をはじめとするフッ化物局所応用のう蝕予防効果について、臨地研究ならびにシステマティックレビューによって改めて確認することができた。さらにう蝕予防効果を高めるために、フッ化物のう蝕予防メカニズムへの基礎研究からのアプローチによって、う蝕予防効果をさらに強化できる可能性が示唆された。
臨床的観点からの成果
現在の歯科医療は治療中心ではなく、予防、健康維持・増進へとシフトしている。その中でフッ化物応用は幼少期から高齢者までのすべての年齢のすべてのう蝕リスクの国民に必要なツールである。本研究で提示した年齢とう蝕リスクに応じたフッ化物局所応用の組み合わせを臨床で活用することで大きな成果が得られる。また、現行のフッ化物応用法では利用しにくい低年齢児へのフッ化物利用も提示したので臨床で利用できる。さらに、成人・老人へのフッ化物応用の普及は臨床上の課題である。
ガイドライン等の開発
歯科臨床で活用するための年齢とう蝕リスクに応じたフッ化物局所応用の組み合わせを提示した。低年齢児へのフッ化物局所応用の方法を提示した。成人・高齢者へのフッ化物応用の勧奨の必要性を検証できた。根面う蝕予防に対するフッ化物局所応用の有効性が認められた。策定された日本人のフッ化物摂取基準の上限量の正当性を検証できた。フロリデーション実現のための提言案を作成できた。
その他行政的観点からの成果
わが国ではフッ化物洗口の集団応用が著しく普及を示している。このフッ化物応用を継続実施している子どもたちを対象にフォローアップ調査を実施した。その結果、フッ化物に頼りすぎて生活習慣が悪化する、歯や粘膜への悪影響がみられるなどの所見は見当たらなかった。今後も有効性と安全性を監視しながら継続実施していく正当性が保証された。
その他のインパクト
日本人の子どもには目安量(0.05 mg F/kg b.w.)以上にフッ化物を摂取している個人が存在するため、歯のフッ素症発現への配慮が必要であり、高フッ化物濃度の茶の摂取や茶の多量摂取などにも注意を要することが示された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
15件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
眞木吉信
フッ化物のう蝕予防効果と栄養としての考え方
臨床環境医学 , 20 (1) , 11-22  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
2017-05-25

収支報告書

文献番号
201120001Z