移植の免疫寛容に関する研究

文献情報

文献番号
199700944A
報告書区分
総括
研究課題名
移植の免疫寛容に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
野本 亀久雄(九州大学生体防御医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 小野江和則(北海道大学免疫科学研究所)
  • 磯部光章(信州大学医学部)
  • 渡部浩二(北里大学医学部)
  • 安元公正(産業医科大学)
  • 藤堂省(北海道大学医学部)
  • 田中紘一(京都大学大学院医学研究科)
  • 里見進(東北大学医学部)
  • 川合明彦(東京女子医科大学)
  • 南嶋洋一(宮崎医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 感覚器障害及び免疫・アレルギー等研究事業(免疫・アレルギー等研究分野)
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
67,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臓器移植法の制定に伴い、多臓器移植が現実のものとなったが、臓器移植が一般医療の一部として、定着、普及するためには、免疫抑制法からの離脱すなわち免疫寛容の実用化が望まれる。従来、小動物モデルを用いた理論的研究が中心であったが、本研究ではヒトへの実際的応用へ直結する方向性にしぼり込んで、きわめて計画的、戦略的に研究が遂行されるようテーマ、分担研究者、研究協力者が選択された。初年度にあたる平成9年度には、1)バイオテクノロジーの活用によって新しい免疫寛容導入法を開発する。2)マウス、ラットの小動物モデル、イヌを中心とする大動物さらにヒトへの移行の軸として、動物種をこえて共通する事象を把握する。3)多くの免疫寛容導入法の機序のちがいを、ミクロキメリズムの寛容を中心に把握する。4)導入時のリンパ系、骨髄系への傷害の程度を把握し軽減をはかる、などを目的とした。
研究方法
免疫寛容の導入、維持をミクロキメリズムのかかわりを軸として検討するためめ、1)対象となる個体としては、マウス、ラット等の小動物、大動物の代表としてイヌ、偶発的背景で免疫抑制を中断した移植患者、2)免疫寛容導入法としては、シクロスポリン等の薬剤、放射線照射、T細胞レセプターや接着因子に対する単クローン抗体、拒絶反応の会費、抑制に関与する遺伝子操作、3)FACS解析によるミクロキメリズムの検討、4)サイトメガロウイルスに対する感染防御を指標とする免疫寛容の生物学的検定系の確立等が用いられた。
結果と考察
テーマ1(野本他研究協力者12名)においては、免疫寛容のヒトへの応用への理論的道筋を明確にし、従来の導入法の弱点を補うため遺伝子操作他バイオテクノロジーの活用が行われた。導入時にリンパ系や骨髄系への傷害を伴うシクロホスファミドや放射線については、投与量、照射量に工夫、現象によって、ある程度の傷害の回避が可能であった。しかし、ヒトへ応用するためには、他の導入法との組合せによって、さらに傷害効果を軽減することが必須であることが示唆された。一方、単クローン抗体投与では傷害は少ないが免疫寛容程度が弱いことが示された。これらの方法を結び、傷害が少なく、安定した寛容状態を得るにはミクロキメリズムに維持が有効であることが示された。効果の増強と傷害の軽減に、拒絶反応にかかわる分子に対する遺伝子操作の活用が理論レベルでは大いに進展した。テーマ2(小野江、磯部、渡部、安元)では、テーマ1の共通の視点で小動物モデルから大動物モデルへの実験系の移行が試みられ、動物種をこえて共通するものと動物種固有の事象の分別が進展した。また、組織の種類よる免疫寛容導入の難易が肺、期間、大動脈、皮膚、肝、腎、心を対象として検討され、難易とその背景について機序が明らかにされつつある。テーマ3(藤堂、田中、里見、川合、南嶋)では、ヒトの臓器移植への免疫寛容導入法の実際的な道筋が検討された。移植臓器内ドナー細胞移入によって、ミクロキメリズム野導入と維持がはかられた。また、偶発的背景によって免疫抑制法が中断された症例をミクロキメリズムおよびウイルス感染防御の面から詳細に解析している。全体の成果の統合的考察。ヒトの従来型免疫抑制によって偶発的に発生した免疫寛容法(免疫抑制剤の収支と持続的生着)については、結果としてどのような状況が誘導されているかについて、十分な情報が得
られなかった。国内では比較的症例が少ないので、先進各国からの情報入手につとめている。しかし、多数の臓器移植を行ってきた先進国においても、従来の免疫学的検定法は信頼すべきデータは得られていない。すでにマウス等の実験において駆使されている手法をヒトへ向けて改良し、より制度の高いデータの入手につとめる。小動物モデルにおいては、免疫寛容の導入および維持について十分な情報が得られているが、ヒトへの応用の違いは多くの障壁が存在すると認識している。有機的な共同研究によって、目的に至る道筋を模索するよう、計画を立案し、実行している。
結論

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)