臨床病期II・IIIの下部直腸がんに対する側方リンパ節郭清術の意義に関するランダム化比較試験

文献情報

文献番号
201119071A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床病期II・IIIの下部直腸がんに対する側方リンパ節郭清術の意義に関するランダム化比較試験
課題番号
H23-がん臨床・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
藤田 伸(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院 消化管腫瘍科 下部消化管外科)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤典男(独立行政法人 国立がん研究センター東病院 下部消化管外科)
  • 藤井正一(横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター消化器病センター,下部消化管外科)
  • 伴登宏行(石川県立中央病院 消化器外科)
  • 絹笠祐介(静岡県立静岡がんセンター 大腸外科)
  • 金光幸秀(愛知県がんセンター中央病院 消化器外科部)
  • 山口高史(京都医療センター下部消化管大腸癌骨盤外科)
  • 大植雅之(大阪府立成人病センター 消化器外科)
  • 赤在義浩(岡山済生会総合病院外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,328,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
  術前画像診断および術中開腹所見にて,あきらかな側方骨盤リンパ節転移を認めない臨床病期 II・IIIの治癒切除可能な下部直腸癌の患者を対象として,国際標準手術である直腸固有間膜切除術(mesorectal excision:ME)が,国内標準手術である自律神経温存側方骨盤リンパ節郭清術(自律神経温存D3)に有効性で劣らないことを非劣性ランダム化比較にて検証する.
研究方法
 2003年6月よりJCOG大腸がんグループの多施設共同臨床試験(参加34施設)として登録を開始し2010年8月2日に701例目が登録され,登録を終了した.2015年8月まで,生死,再発有無,早期晩期有害事象,二次がん等について年2回の追跡調査を継続する.
 今年度は,登録例の背景因子,手術時間,出血量,術後早期合併症につき,解析を行い,公表した.性機能,排尿機能に関しては,調査を追加した.性機能に関しては,術後1年目までのデータ集積が終了し,データ解析もほぼ終了し,公表準備中である.排尿機能に関しては,さらなる追加調査が必要であるため,次年度に調査を行い,データ集積が終了次第,データ解析ならびに公表する予定である.
結果と考察
 本研究は、登録症例のフォローならびに調査を行っている.その結果, ME群に比し側方郭清群で有意に手術時間が長く,出血量も多く,grade 3,4合併症頻度は有意差はないものの,側方郭清群に多いことが示された.縫合不全は,両群間に差は認められなかった.以上の結果をASCO2011で発表、ならびに論文化(Lancet Oncology)した.以上の結果から,本試験のSecondary endpointである有害事象発生割合,手術時間,出血量においてME群の優越性が示され,プロトコール作成時に本試験を非劣性試験とした臨床的仮説が正しいことが証明されたが,ME群の非劣性が証明されるためには,最終解析(2015年予定)により無再発生存期間が劣っていないことが実証されなければならない.
結論
 本研究の最終成果により,我が国独自に発達してきた自律神経温存側方郭清術と世界標準術式であるmesorectal excisionの優劣を示すことが可能となるが,そのデータ解析は2015年の予定である.
 本年度の研究成果により,これまで正確なデータがなく比較が難しかった側方郭清とmesorectal excisionの手術時間,出血量,合併症頻度が明確となり,直腸癌の外科臨床に極めて有用なデータをもたらした. この成果はLancet Oncologyに公表した.

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201119071Z