オピオイド治療効果に対する実測可能な薬理学的効果予測システムORPSの開発

文献情報

文献番号
201119060A
報告書区分
総括
研究課題名
オピオイド治療効果に対する実測可能な薬理学的効果予測システムORPSの開発
課題番号
H22-がん臨床・一般-037
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中川 和彦(近畿大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 西尾 和人(近畿大学 医学部)
  • 大塚 正友(近畿大学 医学部 堺病院)
  • 小山 敦子(近畿大学 医学部 堺病院)
  • 山中 竹春(九州がんセンター 臨床研究センター)
  • 田中 京子(大阪府立大学 看護学部)
  • 今村 知世(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
19,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん性疼痛へのオピオイド治療に対して、治療効果の指標、モニタリングできる実測可能な薬理学的バイオマーカーの開発、実測可能な薬理学的効果予測システムORPSの開発を通じ、がん性疼痛の定量化システムに相補的に寄与することを目的とする。
研究方法
前向き臨床試験にて、速放性モルヒネ製剤によるタイトレーションを行った後、定期投与としてモルヒネ必要用量を投与する。オピオイド治療は通常の治療指針に従って行う。治療前、治療後1日目、8日目に採血、NRS、心理テスト、QOL評価尺度などを施行する。末梢血は血漿分離およびDNA・RNA用に専用採血管で保存する。臨床検体の測定にて、薬理学的バイオマーカーとしては、1.マイクロアレイを用いた薬力学的効果関連遺伝子の特定、2.モルヒネ関連代謝酵素の遺伝子多型、3.モルヒネ血中濃度、4.血中サイトカイン濃度、5.血中糖鎖解析を実施する。
結果と考察
到達前期臨床試験の症例50例に対して以下の解析を行った。
【血中サイトカイン解析】モルヒネ治療前後の血漿サイトカインの変動に対する検討では、MIP-1αの血漿濃度はモルヒネ治療後に有意に減少していた。モルヒネ高用量必要群ではモルヒネ治療前のIL-8、IL-12、MIP-1αは有意に低く、治療前のeotaxinは有意に低い濃度であった。モルヒネ治療前のIL-12、IL-12、MIP-1α、MIP-1β濃度は、モルヒネ治療耐性群では有意に低く、eotaxinも有意に低い濃度であった。モルヒネ治療前のある種のサイトカイン濃度はモルヒネ治療の有効性と関連し、治療効果を予測するバイオマーカーとなり得ることを初めて報告した。
【マイクロアレイ解析】マイクロアレイ解析では、オピオイド受容体シグナル伝達経路関連遺伝子に解析を行い、モルヒネ治療によりARRB1、OPRS、GRK5、RGS9遺伝子の発現が有意に低下することが観察された。独立サンプルに対してRealtime RT-PCR法で解析すると、ARRB1の発現低下が再現性をもって確認され、血漿中モルヒネ濃度と逆相関することが観察された。
【SNP解析】COMTについては、A/A遺伝子型群ではモルヒネの血漿中濃度が有意に低く、モルヒネ必要投与量も低いことが観察された。
結論
H22年度、H23年度で得られたバイオマーカーのうち再現性が得られた分子については、前半50例のデータを用いて予測マーカーとしての閾値を設定する。次に集積中の後半50例の各種測定データを用いて予測の有用性を検証し、実測可能な薬理学的効果予測システムORPSを構築する。

公開日・更新日

公開日
2015-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201119060Z