治癒切除後の再発リスクが高い進行胃がん(スキルス胃がんなど)に対する標準的治療の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201119046A
報告書区分
総括
研究課題名
治癒切除後の再発リスクが高い進行胃がん(スキルス胃がんなど)に対する標準的治療の確立に関する研究
課題番号
H22-がん臨床・一般-023
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
笹子 三津留(兵庫医科大学 医学部 外科学 上部消化管外科)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 暁(東京都立墨東病院 外科)
  • 高木 正和(静岡県立総合病院 外科)
  • 谷口 弘毅(京都第二赤十字病院 外科)
  • 山上 裕機(和歌山県立医科大学 第二外科)
  • 福島 紀雅(山形県立中央病院 外科)
  • 土岐 祐一郎(大阪大学大学院 医学系研究科 消化器外科学)
  • 加治 正英(富山県立中央病院 外科)
  • 河内 保之(長岡中央綜合病院 外科)
  • 伊藤 誠二(愛知県がんセンター中央病院 外科)
  • 畑 啓昭(独立行政法人国立病院機構京都医療センター 外科)
  • 寺島 雅典(静岡県立がんセンター 胃外科)
  • 岩崎 善毅(東京都立駒込病院 外科)
  • 円谷 彰(神奈川県立がんセンター 消化器外科)
  • 梨本 篤(新潟県立がんセンター新潟病院 外科)
  • 吉田 和弘(岐阜大学大学院 腫瘍制御学講座 腫瘍外科学分野)
  • 稲木 紀幸(石川県立中央病院 消化器外科)
  • 稲田 高男(栃木県立がんセンター 外科・臨床検査部)
  • 井上 健太郎(関西医科大学 外科学講座)
  • 浅生 義人(天理よろづ相談所病院 腹部一般外科)
  • 黒田 大介(神戸大学大学院 医学研究科 食道胃腸外科)
  • 西岡 豊(高知県・高知市病院企業団立高知医療センター 消化器外科・一般外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
20,492,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全体では70%近い治癒率を達成した胃がんにおいて、依然10%程度の5年生存率にとどまっているスキルス胃がん、あるいはそれに準ずる大きな3型胃がんの予後改善。
研究方法
【研究形式】多施設共同の第Ⅲ相ランダム化比較試験(優越性試験)で主たるエンドポイントは全生存期間。【研究対象】腹腔鏡検査を含めた臨床的検索で遠隔転移を伴わない治癒切除可能な8cm以上の大型3型・4型胃がん症例。【症例登録とランダム割付】JCOGデータセンターで中央登録。【治療内容】試験治療:術前TS-1+CDDPによる化学療法を2コースを実施後、D2郭清を伴う根治手術を行い、術後6週以内よりTS-1単独による化学療法を約1年実施する。対照群:試験群と同様の手術・術後治療を行う。【予定症例数】予定登録数は316例。【実施施設】JCOG胃がん外科グループに所属する消化器がんの基幹施設38施設。(倫理面への配慮)本人に口答及び文章による説明を行い、文章による同意を得る。説明内容には、試験参加の自由、同意後の撤回の自由、質問の自由、個人情報の扱いなどが含まれる。
結果と考察
【研究結果】本試験は2005年に手術単独と術前化学療法+手術を比較する試験として開始されたが、両群ともに術後補助化学療法を加えた内容に治療を変更して2007年に再開した。2011年3月末までに155例を登録した。23年度は登録がのび前年度の倍以上の77例が登録され、2012年3月末で252例を登録している。2011年9月に行われた第1回中間解析の結果は試験の効果・安全性評価委員会により審査され、試験の継続が許可された。これまでに手術合併症による死亡はなく、順調に試験は進行している。【考察】術前化学療法は高いコンプライアンスが特徴で、微小転移のコントロールに期待が寄せられている。一方で無効症例での手術の遅れ、臨床的ステージングの間違いにより必ず一定頻度でその様な治療が不要な患者にまで負担をかけることなどの問題もある。我が国では欧米に比して症例数が5倍以上多く、進行胃がんの全例に入院治療を要する術前化学療法を行う社会的な負担(医療経済)および入退院マネージメントの煩雑さから、現時点では広く進行胃がんを対象とするには時期尚早と考えられている。本試験でかかる治療の有効性が明確となれば、ステージ3胃がんでもより予後の良い対象にも術前化学療法を適応しようとする流れが予想できる。
結論
予後不良な大型3型・4型胃がんに対してTS-1+CDDPによる術前化学療法を2コース行う治療は安全に施行でき、今後の生存解析の結果が注目される。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201119046Z