再発等の難治性造血器腫瘍に対する同種造血幹細胞移植を用いた効果的治療法確立に関する研究

文献情報

文献番号
201119041A
報告書区分
総括
研究課題名
再発等の難治性造血器腫瘍に対する同種造血幹細胞移植を用いた効果的治療法確立に関する研究
課題番号
H22-がん臨床・一般-018
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
山下 卓也(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科・造血幹細胞移植科(前研究分担者))
研究分担者(所属機関)
  • 森 慎一郎(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科・造血幹細胞移植科(前研究代表者))
  • 内田 直之(国家公務員共済組合 虎の門病院 血液内科)
  • 中尾 眞二(金沢大学 医薬保健研究域医学系 細胞移植学)
  • 山本 弘史(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院 薬剤部)
  • 河野 嘉文(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 小児科)
  • 山口 博樹(日本医科大学 医学部 血液内科学・病態制御腫瘍内科学)
  • 矢野 真吾(東京慈恵会医科大学 腫瘍・血液内科)
  • 松元 加奈(同志社女子大学 薬学部 医療薬学科)
  • 黒澤 彩子(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科・造血幹細胞移植科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
14,344,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、同種造血幹細胞移植における前処置薬剤、免疫抑制剤、合併症治療薬剤に関する本邦固有の科学的根拠に基づいた投与法と調節法を開発し、治療成績を向上させることである。前処置薬剤については静注ブスルファン製剤、免疫抑制剤についてはシクロスポリンとタクロリムスの至適な使用法の開発を、合併症治療薬については薬物相互作用の影響の解明を行う。本研究の臨床試験により創出されたエビデンスを各薬剤の添付文書に反映させて、同種造血幹細胞移植医療の適正化と移植技術の均霑化に寄与することを目指している。
研究方法
同種造血幹細胞移植を受ける高齢患者のブスルファンの薬物動態を検討した。静注ブスルファン製剤と抗真菌薬を併用した成人患者の経時的薬物血中濃度測定を実施した。小児の造血幹細胞移植症例にテスト量に基づいた量の静注ブスルファン製剤を投与し、その血中濃度やAUCを評価した。
シクロスポリン3時間点滴静注1日2回投与法の前方視的試験を実施した。タクロリムス経口徐放製剤についての前方視的試験を実施し、持続静注から経口徐放製剤への切り替え後の薬物動態を解析した。
同種造血幹細胞移植後にボリコナゾールを投与した患者を対象として、幻覚の発症頻度や幻覚発症に関わるリスク要因について後方視的に検討した。

結果と考察
高齢患者11名のブスルファンの薬物動態は若年者とほぼ同等であった。抗真菌薬はブスルファンの薬物動態へ明らかな影響を与えなかった。小児において、テスト量と移植前処置時のブスルファンの血中濃度やAUCに明らかな相関は認めなかった。
シクロスポリンの前方視的試験において重篤な有害事象は報告されていない。タクロリムス経口徐放製剤投与時の血中濃度のトラフ値が7.5ng/mL未満の群では十分なAUCが得られなかった。
ボリコナゾールに関して、対象症例57例のうち幻覚をみとめたのは11例であり、幻覚発症の優位なリスク因子としてオピオイドの併用が抽出された。
本研究班の研究成果は、同種造血幹細胞移植領域における臨床試験に基づいた本邦固有のエビデンスであり、至適な治療法の開発と移植医療の成績向上に大きく寄与すると考えられる。
結論
本研究班の研究成果に基づく前処置薬剤や免疫抑制剤の適正使用法が、治療ガイドラインや薬剤添付文書に反映されることにより、移植医療の質の向上と新たな移植技術の均霑化が推進されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201119041Z