高度リンパ節転移を伴う進行胃癌の根治を目指した術前化学療法+拡大手術法の確立

文献情報

文献番号
201119039A
報告書区分
総括
研究課題名
高度リンパ節転移を伴う進行胃癌の根治を目指した術前化学療法+拡大手術法の確立
課題番号
H22-がん臨床・一般-016
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
佐野 武(公益財団法人がん研究会有明病院 消化器外科)
研究分担者(所属機関)
  • 浅海 信也(福山市民病院)
  • 宇田川 晴司(虎の門病院)
  • 山田 誠(岐阜市民病院)
  • 齋藤 俊博(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター)
  • 田中 洋一(埼玉県立がんセンター)
  • 田村 茂行(独立行政法人労働者健康福祉機構関西労災病院)
  • 辻本 広紀(防衛医科大学校)
  • 二宮 基樹(広島市立広島市民病院)
  • 平塚 正弘(市立伊丹病院)
  • 平原 典幸(島根大学医学部附属病院)
  • 平林 直樹(広島市立安佐市民病院)
  • 藤田 淳也(市立豊中病院)
  • 藤谷 恒明(宮城県立がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
15,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高度リンパ節転移を伴う胃癌では、たとえ肉眼的治癒切除が行えたとしても予後は極めて不良である。本試験はこのような対象に対し、Docetaxel + CDDP + S-1(DCS)というわが国独自の3剤併用療法を投与の後、拡大リンパ節郭清を伴う胃切除術を行い、治療成績を高めることを目的とする。
研究方法
日本臨床腫瘍グループ(JCOG)胃がんグループによる多施設共同第II相臨床試験としてスタートした。上腹部造影CTにて高度リンパ節転移陽性(第2群リンパ節転移が一塊となって腫瘤を形成するBulky N2と、第3群大動脈周囲リンパ節No.16a2/b1転移のどちらか、または両方)と診断された症例を対象とし、DCS療法を2コース行った後、腫瘍縮小効果をRECISTで評価し、手術を行う。治癒切除を目指し、D3郭清を伴う胃切除を行う。術後はS-1補助化学療法を1年間行う。
 主評価項目は術前化学療法による奏効割合、副次評価項目は3年生存割合、5年生存割合、根治切除割合、治療完遂割合、組織学的奏効割合、有害事象発生割合とする。
結果と考察
平成23年度はプロトコールが完成し、7月29日より登録を開始した。平成24年3月末までに15例が登録され、規定の治療が行われているが、特に重篤な有害事象は報告されていない。JCOG胃がん外科グループでは、高度リンパ節転移を有する胃癌に対しまずCDDP + CPT-11とD3手術による第II相試験(JCOG 0001)を行ったところ、期待閾値を上回る27%の3年生存割合を達成した。同じ対象に対してS-1 + CDDPとD3手術を行ったJCOG 0405では、根治切除割合82.4%を達成し、かつ3年生存割合59%という良好な成績が得られた。本研究では、DCSというわが国独自の強力な3剤併用療法を用いることで、さらに高い治癒をめざす。
結論
今日のわが国の胃癌は、確実に治る早期癌と、非治癒因子を持つ高度進行癌に2極化されつつあると言われるが、この境界領域にある本研究対象患者の予後が改善すれば、わが国のみならず世界の胃癌治療全般の底上げにつながる。また、このような毒性の強い化学療法と拡大手術の組み合わせ治療が、外科医を中心とするグループで安全に施行可能であることが示されれば、腫瘍内科医が絶対的に不足するわが国の胃癌患者にとって朗報となろう。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201119039Z