ピロリ菌除菌による胃癌予防の経済評価に関する研究

文献情報

文献番号
201119033A
報告書区分
総括
研究課題名
ピロリ菌除菌による胃癌予防の経済評価に関する研究
課題番号
H22-がん臨床・一般-010
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 元嗣(北海道大学 北海道大学病院)
研究分担者(所属機関)
  • 濃沼 信夫(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 菊地 正悟(愛知医科大g買う 医学部)
  • 浅香 正博(北海道大学 大学院医学系研究科)
  • 神谷 茂(杏林大学 医学部)
  • 奥田 真珠美(兵庫医科大学 医学部)
  • 一瀬 雅夫(和歌山大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,016,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の胃癌予防対策にピロリ菌除菌の導入するためには、除菌の胃癌予防による経済効果の予測が必要である。経済効果分析の基礎データとして、わが国の地域ごとに小児?成人の最新のピロリ菌感染率や胃粘膜の状況を性年齢ごとに求める。このデータに基づいて、ピロリ菌除菌による胃癌予防事業について、短期的、長期的な経済効果を予測することが目的である。同居家族、幼稚・保育園の職員など小児と直接接触する感染者を除菌して小児への感染伝播阻止についても分析を行う。また、除菌後に経過観察されている症例を解析して、除菌後の胃癌発症率や除菌後胃癌の特徴を明らかにする。
研究方法
全国から職域や地域の健診におけるピロリ抗体および血清ペプシノゲン値のデータを集積して、成人での性別年齢別のピロリ菌罹患率、胃粘膜萎縮の程度を検討した。また、幼稚園児、保育園児、小学生は便中抗原、中学生は血清を用いて抗ピロリ抗体とペプシノゲンを測定した。家族の協力を得て、糞便材料からDNAを抽出し、遺伝子のタイプを調べて感染源の同定を行った。除菌後の胃癌発症率と除菌後胃癌の特徴について、全国の施設に調査協力を依頼して、除菌後の経過観察症例を検討した。
結果と考察
検診・人間ドック受診者21,688人のデータから、10歳階級ごとにピロリ陽性率を算出した。~19才は2.5%、20-39才は13.3%、30-39才は17.4%、40-49才は28.1%、50-59才は44.5%、60-69才は52.6%、70-79才は47.6%、80-89才は44.4%で、全体のピロリ陽性率は37.8%であった。1992年発表データに比べ、全年代で感染率が低下し、約20年分右にシフトしていた。胃癌リスク分類ではA群59.8%、B群17.6%、C群17.4%、D群4.7%で、年代に伴ってB群、C群、D群の割合は増加した。小児のピロリ陽性率は1.9%であった。4家族タイピングでは、発端児と母が一致、発端児は父と母(別型)の2株の混合感染、発端児と母が一致、発端児別型との結果で、親子感染がメインルートとされたが、家族間以外の感染ルートの存在もあった。初発癌248例と異時癌176例の除菌後胃癌が集積され、初発癌の発生率は1.6%で異時癌は10%で除菌後10年が経過しても認められた。初発癌では異時癌に比べ、萎縮が軽度で、サイズが大きく、陥凹型、未分化型、潰瘍合併が有意に多かった。今後は、これらの新たな基礎データに、既存のデータを加えて胃癌予防効果を検討する。
結論
わが国の健常人のピロリ菌罹患率は推測を上回速度で低下してきている。除菌後は長期にわたり胃癌リスクは継続する。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201119033Z