がん患者及びその家族や遺族の抱える精神心理的負担によるQOLへの影響を踏まえた精神心理的ケアに関する研究

文献情報

文献番号
201119022A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者及びその家族や遺族の抱える精神心理的負担によるQOLへの影響を踏まえた精神心理的ケアに関する研究
課題番号
H21-がん臨床・若手-021
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
清水 千佳子(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 乳腺科・腫瘍内科)
研究分担者(所属機関)
  • 坂東 裕子(筑波大学大学院人間総合化学研究科 疾患制御医学乳腺甲状腺外科)
  • 加藤 友康(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 婦人腫瘍科)
  • 野澤 桂子(山野美容芸術短期大学 美容福祉学科)
  • 山本 精一郎(独立行政法人 国立がん研究センター がん対策情報センター)
  • 村上 好恵(首都大学東京 健康福祉学部 看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
6,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳癌患者のサバイバーシップに関連する諸問題の中で、特に若年者で問題となる妊孕性と外見関連の副作用とその情報提供に焦点をしぼり実態を明らかにし、科学的根拠と患者ニーズに基づいたサバイバーシップ支援プログラムを構築することを目的とする。
研究方法
①乳がん化学療法による卵巣機能障害と妊孕性温存に関する情報提供プログラムの構築
②化学療法をうける患者の外見変化に対する情報提供および支援プログラムの構築
③若年乳癌患者における遺伝相談・BRCA遺伝子検査に関する情報提供および支援プログラムの構築
結果と考察
1)がん治療による外見変化とそのケアに関する教育プログラムの開発
外見ケアの情報提供を医療機関でうけたいというニーズが高く、がん治療拠点病院に対し医療者向け教育研修のニーズと実態の調査を実施した。医療者による外見の情報提供を中心とした患者サポートプログラムの有用性について、外見ケアに関するプログラムについての質的検討を実施した。
2)若年乳癌患者に対する乳がん術後の妊孕性に関する情報提供プログラムの開発
薬物療法を実施する若年乳癌患者の卵巣予備能の指標としてのAnti-mullerian hormoneの妥当性について検討した。生殖医療御専門医の協力のもと小冊子を作成し、乳癌患者に対する生殖医療の実態調査を行った。
3)若年乳癌患者に対する遺伝性乳癌についての情報提供の研究
「若年性乳がん患者の遺伝情報に対するニーズと遺伝情報提供後の行動変容に関する研究」を計画した。遺伝カウンセリングのパンフレットを含め、遺伝カウンセリングについてのより適切な情報提供のあり方を検討する。
結論
外見関連プログラムの研究は、患者だけでなく、医療者側の教育研修のニーズが高いことが示唆された。医療者のニーズに合致する教育研修プログラムを開発したい。また患者アウトカムの改善の有無を検証したい。
妊孕性に関するプログラムの研究は、患者・乳癌治療医・生殖医療専門医のコミュニケーションつーるとして妊孕性に関する小冊子を開発した。さらなる情報提供ツールとして発信したい。
遺伝性乳癌の情報提供プログラムの研究は、遺伝カウンセリングの体制の有無が診療方針に影響していることが示唆された。専門家との議論により、カウンセリングの目標が遺伝子検査の実施ではなく、リスクについての理解と予防行動につながることであるとの共通の認識に達した。
若年乳癌患者のサバイバーシップに影響する外見、妊孕性、遺伝性乳癌に関する支援プログラムと情報提供のモデルを提案し、がん診療拠点病院や主要機関に発信し診療の均てん化に貢献したい。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

文献情報

文献番号
201119022B
報告書区分
総合
研究課題名
がん患者及びその家族や遺族の抱える精神心理的負担によるQOLへの影響を踏まえた精神心理的ケアに関する研究
課題番号
H21-がん臨床・若手-021
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
清水 千佳子(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 乳腺科・腫瘍内科)
研究分担者(所属機関)
  • 坂東 裕子(筑波大学大学院 人間総合科学研究科 疾患制御医学 乳腺甲状腺外科)
  • 加藤 友康(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科)
  • 野澤 桂子(山野美容芸術短期大学 美容福祉学科)
  • 山本 精一郎(独立行政法人 国立がん研究センター がん対策情報センター)
  • 村上 好恵(首都大学東京 健康福祉学部 看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳癌患者のサバイバーシップに関連する患者ニーズについて、特に妊孕性・遺伝情報・外見変化に着目し、データベースの構築、情報提供の調査(患者/医療者双方)ならびに医療機関における情報提供体制の実態を調査し、サバイバーシップを適切かつタイムリーに支援するプログラムの構築を目指し計画した。
研究方法
患者側・専門医側とアンケートおよびインタビュー調査を行い、情報提供の現状とニーズの調査を行った。
1 若年乳癌患者のニーズに関する検討
2 妊孕性温存を希望する患者へのサバイバーシップ支援プログラムの構築
3 遺伝性乳癌に関する適切な情報提供プログラムの構築
4 がん治療に伴う外見変化に対する支援プログラム構築
結果と考察
患者へのインタビュー調査においては情報提供のニーズは各項目とも高いことが分かった。しかし、専門医(乳腺専門医・生殖医療医)へのアンケート調査においては患者が満足する情報提供はされておらず、専門医間のコミュケーションの欠如も挙げられた。また妊孕性に関しては倫理的観点も考慮しなければならず、今後は指針等の策定も必要になると考えられた。
遺伝相談外来の設置されていない施設に比し設置されている施設の方が、若年乳癌患者において遺伝的背景を考慮した診療が進められていることがわかった。今後は、情報提供のニーズにもとづいた情報提供の質の向上が必要であると考えられる。
外見ケアに関しては患者および医療者側への教育のニーズも高いことが分かった。量的研究に基づいたエビデンスの確立、情報提供のあり方を検討する必要があると考えられた。
結論
若年乳癌患者を取り巻く環境において癌治療に関する情報は氾濫しており、患者の自己決定に向けて医療者からの支援が必要である。外見ケアや遺伝カウンセリングの設置施設は少数であり、各医療機関における機能向上、人員配置が望まれる。また妊孕性に関しては生殖専門医と乳腺治療担当医とのコミュニケーションの活性化が望まれる。今後は医療機関の情報の均てん化と連携とともに、サバイバーシップを俯瞰した視野から、さまざまな専門職をとりこんで適切な支援プログラムを構築が急務である考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201119022C

成果

専門的・学術的観点からの成果
乳癌患者および専門医からの妊孕性、外見ケア、遺伝カウンセリングに関するニーズと現状を調査し、患者ニーズは多岐にわたり、患者ニーズとその支援の現状には隔たりがあると考えられた。
臨床的観点からの成果
外見関連支援については、国立がん研究センター中央病院において患者ニーズに即した支援を開始し、それをモデルプログラムとして、他施設への啓発と普及を進めている。
妊孕性保持の支援が可能な生殖医療実施医療機関をリストアップすることができた。今後、がん対策情報センター等にて公開予定。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
外見ケアに関する医療者向けセミナーの開催(当センター看護師・薬剤師を対象に実技を含む)
情報提供小冊子の作成
「乳がん治療に際して将来の出産を御希望のあなたへ」(乳腺治療医・婦人科医・生殖医療専門医・患者の情報提供支援ツールとして作成)

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
久保晶子、小井土啓一、清水千佳子 他
乳癌薬物治療に伴う妊孕性への影響に関する情報提供の実態調査
癌と化学療法 , 39 (3) , 399-403  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2017-05-25

収支報告書

文献番号
201119022Z