進行性大腸がんに対する低侵襲治療法の標準的治療法確立に関する研究

文献情報

文献番号
201119017A
報告書区分
総括
研究課題名
進行性大腸がんに対する低侵襲治療法の標準的治療法確立に関する研究
課題番号
H21-がん臨床・一般-017
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
北野 正剛(大分大学)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 聖一郎(国立がん研究センター中央病院 腫瘍外科)
  • 小西 文雄(自治医科大学医学部 消化器外科)
  • 杉原 健一(東京医科歯科大学 腫瘍外科学分野)
  • 渡邊 昌彦(北里大学医学部 外科)
  • 齋藤 典男(国立がん研究センター東病院 大腸骨盤外科)
  • 斉田 芳久(東邦大学医療センター大橋病院 外科)
  • 絹笠 祐介(静岡県立がんセンター 大腸外科)
  • 藤井 正一(横浜市立大学付属市民総合医療センター消化器病センター 株消化管外科)
  • 長谷川 博俊(慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科)
  • 山口 高史(独立行政法人国立病院機構京都医療センター 大腸外科)
  • 正木 忠彦(杏林大学医学部 消化器外科学)
  • 村田 幸平(市立吹田市民病院 外科)
  • 岡島 正純(広島大学病院)
  • 宗像 康博(長野市民病院 外科・消化器外科)
  • 佐藤 武郎(北里大学医学部 外科)
  • 伴登 宏行(石川県立中央病院 消化器外科)
  • 安井 昌義(国立病院機構大阪医療センター 外科大腸外科)
  • 久保 義郎(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター 消化器外科)
  • 工藤 進英(昭和大学横浜市北部病院消化器センター)
  • 前田 耕太郎(藤田保健衛生大学医学部 下部消化管外科学)
  • 福永 正氣(順天堂大学浦安病院 外科)
  • 八岡 利昌(埼玉県立がんセンター 消化器外科および臨床遺伝学)
  • 森 正樹(大阪大学医学部 消化器外科)
  • 猪股 雅史(大分大学医学部 総合外科学第一)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
29,918,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年わが国では大腸がん患者は年々増加傾向にあり、その治療法は外科的切除が第一選択とされている。内視鏡外科手術の進歩により、大腸がんに対する外科治療の中で腹腔鏡下手術の占める割合はこの20年間で年々に増加してきた。現在、大腸がんに対する適応は早期がん(stageI)から進行がん(stageⅡ/Ⅲ、さらにstageⅣ)へと拡大されつつあるが、進行がんに対する標準治療としての妥当性は未だ明らかにされていない。本研究は進行大腸がんに対する腹腔鏡下手術と開腹手術との多施設共同ランダム化比較試験(第Ⅲ相試験)を実施し、進行大腸がんにおける腹腔鏡下手術の標準治療として妥当性を明らかにすることを目的としている。
研究方法
国内の若手研究者を中心に腹腔鏡下手術の先進的27施設において、進行大腸がんに対する腹腔鏡下手術と開腹手術との長期成績、安全性に関する多施設共同ランダム化比較試験(第Ⅲ相試験)を実施する。 (1)stageⅡ/Ⅲ大腸がんに対する第III相試験 (2)stage IV大腸がんに対する第III相試験
結果と考察
進行大腸がんの中でstageⅡ/Ⅲ大腸がんに関しては、H18-がん臨床-一般013の第Ⅲ相試験を継続実施している。手術療法第Ⅲ相試験ではこれまで類のない1050症例もの患者登録を完了させ、今年度は短期成績を明らかにした。その結果、腹腔鏡手術の安全性および良好な術後早期経過(排ガスまでの日数・術後在院日数、鎮痛剤の使用回数)が示され、本内容を米国臨床腫瘍学会2012および日本内視鏡外科学会の特別報告にて公表した。今後、短期成績の論文発表を行い、さらに長期成績の解析を予定している。さらに手術写真に基づく中央判定結果やIC取得アンケート調査結果も発表予定である。stageⅣ大腸がんに関しては、原発巣の切除おいてその安全性と低侵襲性を明らかにするために第Ⅲ相試験を計画し、23年度プロトコールが承認され、24年度より患者登録を予定している。本研究成果は、進行大腸がんに対する標準治療確立の重要なエビデンスとなり、大腸がん患者へのQOL向上のメリット、診療ガイドラインの作成や、在院日数短縮に基づく医療費削減など、厚生労働行政に大いに寄与することが期待できる。
結論
本研究は進行大腸がんに対する標準治療確立の重要なエビデンスとなり、大腸がん患者のQOL向上、大腸がん診療ガイドラインの作成や、在院日数短縮に基づく医療費削減、早期社会復帰による医療経済への貢献など、 厚生労働行政に大いに寄与することが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

文献情報

文献番号
201119017B
報告書区分
総合
研究課題名
進行性大腸がんに対する低侵襲治療法の標準的治療法確立に関する研究
課題番号
H21-がん臨床・一般-017
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
北野 正剛(大分大学)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 聖一郎(国立がん研究センター中央病院 腫瘍外科)
  • 小西 文雄(自治医科大学 消化器外科)
  • 杉原 健一(東京医科歯科大学 腫瘍外科学分野)
  • 渡邊 昌彦(北里大学医学部 外科)
  • 齋藤 典男(国立がん研究センター東病院 大腸骨盤外科)
  • 斉田 芳久(東邦大学医療センター大橋病院 外科)
  • 絹笠 祐介(静岡県立がんセンター 大腸外科)
  • 藤井 正一(横浜市立大学付属市民総合医療センター消化器病センター 下部消化管外科)
  • 長谷川 博俊(慶應義塾大学医学部 外科学教室一般・消化器外科)
  • 山口 高史(独立行政法人国立病院機構京都医療センター大腸外科)
  • 正木 忠彦(杏林大学医学部 消化器外科学)
  • 村田 幸平(市立吹田市民病院 外科)
  • 岡島 正純(広島大学病院医学部 大腸癌の外科治療)
  • 宗像 康博(長野市民病院 外科・消化器外科)
  • 佐藤 武郎(北里大学医学部 外科)
  • 伴登 宏行(石川県立中央病院 消化器外科)
  • 安井 昌義(国立病院機構大阪医療センター 外科大腸外科)
  • 久保 義郎(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター 消化器外科)
  • 工藤 進英(昭和大学横浜市北部病院 消化器センター)
  • 前田 耕太郎(藤田保健衛生大学医学部 下部消化管外科学)
  • 福永 正氣(順天堂大学浦安病院 外科)
  • 八岡 利昌(埼玉県立がんセンター消化器外科および臨床遺伝学)
  • 森 正樹(大阪大学医学部 消化器外科)
  • 奥田 準二(大阪医科大学 一般・消化器外科)
  • 猪股 雅史(大分大学医学部 総合外科学第一)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年わが国では大腸がん患者は年々増加傾向にあり、その治療法は外科的切除が第一選択とされている。内視鏡外科手術の進歩により、大腸がんに対する外科治療の中で腹腔鏡下手術の占める割合はこの20年間で年々に増加してきた。現在、大腸がんに対する適応は早期がん(stageI)から進行がん(stageⅡ/Ⅲ、さらにstageⅣ)へと拡大されつつあるが、進行がんに対する標準治療としての妥当性は未だ明らかにされていない。本研究は進行大腸がんに対する腹腔鏡下手術と開腹手術との多施設共同ランダム化比較試験(第Ⅲ相試験)を実施し、進行大腸がんにおける腹腔鏡下手術の標準治療として妥当性を明らかにすることを目的としている。
研究方法
国内の若手研究者を中心に腹腔鏡下手術の先進的27施設において、進行大腸がんに対する腹腔鏡下手術と開腹手術との長期成績、安全性に関する多施設共同ランダム化比較試験(第Ⅲ相試験)を実施する。
(1)stageⅡ/Ⅲ大腸がんに対する第III相試験
(2)stage IV大腸がんに対する第III相試験
結果と考察
<stageⅡ/Ⅲ大腸がん>第Ⅲ相試験の1050例の患者登録が終了し、今年度、短期成績を解析した。その結果、腹腔鏡手術の安全性および良好な術後早期経過(排ガスまでの日数・術後在院日数、鎮痛剤の使用回数)が示された。本内容は、米国臨床腫瘍学会2012および日本内視鏡外科学会の特別報告にて発表を行った。今後、短期成績の論文発表を行い、さらに長期成績の解析を予定している。<stageⅣ大腸がん>原発巣の切除おいてその安全性と低侵襲性に基づく化学療法開始までの期間を明らかにするためにランダム化比較試験(第Ⅲ相試験)を計画した。プロトコール審査委員会による承認を得たため、平成24年度より患者登録を予定している。
結論
本研究成果は、進行大腸がんに対する標準治療確立の重要なエビデンスとなり、大腸がん患者へのQOL向上のメリットだけでなく、大腸がん診療ガイドラインの作成や、在院日数短縮に基づく医療費削減、早期社会復帰による医療経済への貢献など、厚生労働行政に大いに寄与することが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201119017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
進行大腸がんにおける腹腔鏡下手術と開腹手術とのランダム化比較試験を実施し、手術療法第Ⅲ相試験ではこれまで類のない1057症例もの患者登録を完了させた。短期成績では、腹腔鏡手術は出血量が少なく、排ガスまでの日数や術後在院日数、創関連合併症が少ないという結果を明らかにした。5年生存率は非劣性は示せなかったが、開腹、腹腔鏡手術ともに91%と良好な長期成績を示し、標準治療の1つと位置づけした。本研究成果は、進行大腸がんに対する標準治療確立の重要なエビデンスとなりえる。
臨床的観点からの成果
進行大腸がんにおける腹腔鏡下手術と開腹手術とのランダム化比較試験(JCOG0404)を実施し、1050症例の登録を終了した。手術療法の第III相試験としては国内外で最大規模の臨床研究として以下の5つの特色を示した。IC取得率向上のために患者説明ビデオの作成、IC取得アンケート実施、手術手技のQuality controlとして手術写真の中央判定評価システム導入、短期成績の解析結果の公表、を示すことができた。
ガイドライン等の開発
「大腸癌治療ガイドライン医師用」のII. 治療法の種類と治療法の解説の項目で、「腹腔鏡手術」の解説において本研究(phaseIII)の実施について記載されている。「大腸癌治療ガイドライン医師用;20140」また、2014年作成の日本内視鏡外科学会「内視鏡外科治療ガイドライン」にも本研究成果が引用されている。さらに、本研究の最終結果は、本邦の大腸がん治療ガイドラインの次回改訂版および内視鏡外科学会診療ガイドラインに盛り込まれる予定である。
その他行政的観点からの成果
政府の医療費削減政策として、在院日数短縮は重要な目標である。本研究において大腸がんに対する腹腔鏡下手術が、進行がんにおいても低侵襲治療としての役割を発揮し、開腹手術よりも有意に入院期間の短縮を示したことは、医療経済政策の面で重要な成果である。
その他のインパクト
(1)おおいた市民公開講座―大腸がんになったらどうする? 大分大学医学部・日本対がん協会共催、2011年2月開催(大分市コンパルホール)(2)日本内視鏡外科学会総会、特別報告「内視鏡外科のエビデンス;進行大腸がんに対する第III相試験」、2011年12月、大阪国際会議場

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Inomata M, Kitano S,et al.
Clinical Evidences of Laparoscopic Versus Open Surgery for Colorectal Cancer.
Jpn J Clin Oncol , 38 (8) , 471-477  (2009)
原著論文2
Kitano S, Inomata M, Sato A,et al.
Randomized controlled trial to evaluate laparoscopic surgery for colorectal cancer:Japan clinical oncology group study JCOG 0404.
Jpn J Clin Oncol , 35 (8) , 475-477  (2005)
原著論文3
Nakajima K, Inomata M, Akagi T,et al.
Quality control by photo documentation for evaluation of laparoscopic and open colectomy with D3 resection for stage II/III colorectal cancer: Japan Clinical Oncology Group study JCOG 0404
Jpn J Clin Oncol , 44 (9) , 799-806  (2014)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2017-05-25

収支報告書

文献番号
201119017Z