消化器がん外科診療の質を評価する指標の開発とがん医療の均てん化の推進

文献情報

文献番号
201119010A
報告書区分
総括
研究課題名
消化器がん外科診療の質を評価する指標の開発とがん医療の均てん化の推進
課題番号
H21-がん臨床・一般-010
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 満一(福島県立医科大学 臓器再生外科(旧第一外科))
研究分担者(所属機関)
  • 杉原 健一(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 腫瘍外科学分野)
  • 北川 雄光(慶應義塾大学医学部外科学(一般・消化器外科))
  • 馬場 秀夫(熊本大学大学院医学薬学研究部 消化器外科学)
  • 中越 享(済生会長崎病院)
  • 冨田 尚裕(兵庫医科大学 外科)
  • 島田 光生(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 外科)
  • 木村 理(山形大学医学部第一外科)
  • 梛野 正人(名古屋大学大学院医学研究科 腫瘍外科学)
  • 今野 弘之(浜松医科大学医学部・ 外科学第二)
  • 宮田 裕章(東京大学医学部附属病院 医療品質評価学)
  • 本村 昇(東京大学医学部附属病院 心臓外科)
  • 橋本 英樹(東京大学大学院医学系研究科 医療政策)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
17,623,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
消化器がん医療の均てん化の推進のため、リスク調整した外科医療の質の評価が可能な消化器外科データベースシステムを構築する。
研究方法
①ACS-NSQIPと共通のプラットフォームでのデータ解析可能な臨床データベース(NCD)の入力環境を整備し、正確なデータ入力を促進する。入力された一部のデータを用いてリスクモデルの構築が可能かどうかの検討を行う。②データベース構築に関係する学会、研究会との連携を構築し、共通認識のもとにデータベースを作成する。③米国ACS事務局を訪問し、連携を具体化する。④消化器外科がん登録、臨床研究が可能な入力システムを考案・実装する。
結果と考察
NCDの症例登録作業を促進するとともに、外科系学会社会保険委員会連合(外保連)術式と消化器外科専門医術式のひも付け、消化器外科に関連した診断名検索シート、入力に対するQ&Aを作成し、正確で円滑な入力作業を可能にする環境の整備を行った。また、消化器外科専門医申請への利活用を可能にするシステムの設計・開発や、地域がん登録・院内がん登録の連携を考慮し、UICCのTNM第7版によるがんの進行度分類の実装を準備し、臓器別がん登録の一つである膵癌登録を実装した。
ACS-NSQIPとの連携を深めるため、Program Directorを招聘し、外科医療の質の評価の重要性についての講演とともに、データベースに関する情報交換を行った。さらに、ACS事務局を訪問し、日米両国のデータベースの概要や専門領域において詳細な情報交換を行い、今後、連携を深め、共同して医療の質を高める作業を進めていくことで合意した。
結論
1症例ごとに、統計的調査、医療評価調査、臨床研究までの入力が可能となるシステムを作成し、我が国の外科手術症例の統計的調査とともに、消化器がんに関する代表的な手術術式において、ACS-NSQIPに準じた入力フォームを用いることにより医療評価調査が可能となった。また、がん登録を含めた新たな臨床研究にも対応するデータベースが構築され、膵癌と乳癌の臓器がん登録がNCDの入力画面を介して実施された。今後は、入力されたデータをもとに、統計的調査とともに、医療評価調査が可能なデータ解析と、専門医制度への利用が始まる。さらに、臨床研究のための入力が開始されることで消化器がん外科診療の質を評価する指標が提示され、がん医療の均てん化が推進されるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

文献情報

文献番号
201119010B
報告書区分
総合
研究課題名
消化器がん外科診療の質を評価する指標の開発とがん医療の均てん化の推進
課題番号
H21-がん臨床・一般-010
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 満一(福島県立医科大学 臓器再生外科(旧第一外科))
研究分担者(所属機関)
  • 杉原 健一(東京医科歯科大学大学院総合研究科腫瘍外科)
  • 北川 雄光(慶應義塾大学医学部外科学)
  • 馬場 秀夫(熊本大学大学院医学薬学研究部 消化器外科学)
  • 中越 享(済生会長崎病院 外科)
  • 冨田 尚裕(兵庫医科大学 外科)
  • 島田 光生(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 外科)
  • 木村 理(山形大学医学部第一外科)
  • 近藤 哲(北海道大学大学院医学研究科・消化器外科)
  • 梛野 正人(名古屋大学大学院腫瘍外科)
  • 今野 弘之(浜松医科大学 外科学第二)
  • 宮田 裕章(東京大学医学部附属病院医療品質評価学)
  • 本村 昇(東京大学医学部附属病院心臓外科)
  • 橋本 英樹(東京大学大学院医学系研究科・医療政策)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん医療の均てん化の推進のため、消化器がん治療のデータを全国規模で、継続的に集積・分析するシステムを開発する。
研究方法
①日本消化器外科学会が実施した手術症例に関する全国調査の結果の解析。②米国で先行している臨床データベース(ACS-NSQIP)と共通のプラットフォームでのデータ解析可能な臨床データベース(NCD)の入力環境の整備、正確なデータ入力の促進。入力された一部のデータを用いてリスクモデルの構築が可能かどうかの検討。③データベース構築に関係する学会、研究会との連携を構築し、共通認識のもとにデータベースを作成。④ACS-NSQIPの現状を把握し、連携体制を構築。⑤消化器外科がん登録、臨床研究が可能な入力システムを考案・実装。⑥倫理性への配慮の検討。
結果と考察
2007年、2008年の消化器外科手術症例のアンケート調査結果を解析した結果、我が国の消化器外科手術は世界的にも高水準に実施されていることが明らかになった。NCDをプラットフォームとし、1症例ごとに統計的調査、医療評価調査、臨床研究までの入力が可能となるような症例登録システムを実装し、正確で円滑な入力作業を可能にする環境の整備や、専門医申請への利活用を可能にするためのシステムの設計・開発を行い、地域がん登録・院内がん登録の連携を考慮してがんの進行度分類の実装を準備した。「消化器外科データベース関連学会協議会」を立ち上げ、臓器別がん登録等の臨床研究にかかわる学会・研究会のデータベース担当者との連携を図り、臓器別がん登録の一つである膵癌登録を実装した。ACS-NSQIPの国際会議、ACS総会への参加、ACS事務局の訪問により、ACS-NSQIPの現状を把握し、情報交換を行ったことにより連携を深め、国際間比較への道が開かれた。
結論
我が国の外科手術症例の統計的調査とともに、消化器がんに関する代表的な手術術式において、ACS-NSQIPに準じた入力フォームを用いることにより医療評価調査が可能となった。また、がん登録を含めた新たな臨床研究にも対応するデータベースが構築された。今後は、入力されたデータをもとに、統計的調査とともに、医療評価調査が可能なデータ解析と、専門医制度への利用が始まる。さらに、臨床研究のための入力が開始されることで消化器がん外科診療の質を評価する指標が提示され、がん医療の均てん化が推進されるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201119010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
2011年のNCDの登録症例は120万程度、消化器外科医療水準評価対象症例は40万例程度と見込まれる。これほど大規模な外科症例の登録は世界的にも皆無である。今後、登録された症例の解析により、我が国の外科医療の質の評価が可能になる。米国で実施されているACS-NSQIPと同じ定義の入力項目の設定により、国際比較も可能となる。このデータベースを基本として、臨床研究プロジェクトの立ち上げも可能で、迅速かつ効率性の高いシステム構築及び参加施設のネットワーク形成が可能となる。
臨床的観点からの成果
このデータベース構築の第一の目的は、医療の質の向上である。臨床現場の主導による領域別の医療水準評価や、一般市民により良質な医療を提供する上での有用な情報を臨床現場にフィードバックすることが可能となる。また、実証的データに基づいた専門医の適正配置の検定、臨床現場の労働環境の改善、適正な診療報酬の設定などによる、医療提供体制の改善提案が可能となる。
ガイドライン等の開発
NCDの入力画面を通して、臓器別がん登録の中の、膵癌と乳癌の入力項目がすでに実装されている。2012年以降は、他の臓器がん登録についても、基本項目(すべての施設が入力すべき事項)と詳細項目(限られた教育施設等)に区分して実装していく計画である(平成24年度厚生労働科学研究費補助金(がん臨床研究事業)「精度の高い臓器がん登録による診療ガイドラインや専門医育成への活用に関する研究」)。
その他行政的観点からの成果
専門医の適正配置、専門医のパフォーマンスに応じたインセンティブ、充実した質の高いケアを提供できる医療環境等を考えるうえでのデータの集積により、質の高い医療を提供する社会的支援のあり方が、方策として提言できるようになる。
その他のインパクト
消化器外科の医療品質評価項目は、ACS-NSQIPの入力項目と同じ定義により作成されているため、我が国と米国との国際間比較が可能となる。

発表件数

原著論文(和文)
16件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
21件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
後藤満一,杉原健一,鈴木弘行.
消化器外科データベースの構築に向けて.
外科治療 , 102 (4) , 321-331  (2010)
原著論文2
宮田裕章,後藤満一,岩中 督 他.
大規模臨床データベースの意義と展望.
外科治療 , 102 (4) , 332-339  (2010)
原著論文3
本村 昇.
外科学会会員のための企画 National Clinical Database(NCD)構築に向けて 「National Clinical Database(NCD)構築に向けて」によせて.
日本外科学会雑誌 , 111 (5) , 305-305  (2010)
原著論文4
岩中 督,宮田裕章.
外科学会会員のための企画 National Clinical Database(NCD)構築に向けて 全体構想.
日本外科学会雑誌 , 111 (5) , 306-310  (2010)
原著論文5
後藤満一,宮田裕章,杉原健一.
外科学会会員のための企画 National Clinical Database(NCD)構築に向けて 実際の運営.
日本外科学会雑誌 , 111 (6) , 373-378  (2010)
原著論文6
後藤満一,鈴木弘行.
特集:消化器外科データベースの構築とその展開 特集に寄せて.
Surgery Frontier , 17 (4) , 7-9  (2010)
原著論文7
後藤満一,杉原健一.
消化器外科データベースの調査結果報告より.
Surgery Frontier , 17 (4) , 10-17  (2010)
原著論文8
宮田裕章,岩中 督,後藤満一 他
専門医制度と連携した臨床データベース事業の社会的意義と課題.
Surgery Frontier , 17 (4) , 44-50  (2010)
原著論文9
大須賀文彦,後藤満一.
わが国の大腸癌手術:実施の現状―消化器外科学会アンケート調査より―.
大腸癌Frontier , 3 (4) , 63-68  (2010)
原著論文10
Suzuki H, Gotoh M, Sugihara K, et al.
Nationwide survey and establishment of a clinical database for gastrointestinal surgery in Japan: Targeting integration of a cancer registration system and improving the outcome of cancer treatment.
Cancer Science , 102 (1) , 226-230  (2011)
原著論文11
鈴木弘行,後藤満一,杉原健一.
消化器外科手術データベースの構築と今後の課題.
日本医師会雑誌 , 140 (8) , 1651-1655  (2011)
原著論文12
宮田裕章,大久保豪,友滝 愛 他
臨床データベースにおける科学的質の評価Ⅰ:医療水準を測定する枠組みの妥当性.
外科治療 , 104 (2) , 198-203  (2011)
原著論文13
宮田裕章,友滝 愛,大久保豪 他
臨床データベースにおける科学的質の評価Ⅱ:医療水準評価に用いるデータの信頼性と中立性.
外科治療 , 104 (4) , 381-386  (2011)
原著論文14
宮田裕章,本村 昇,村上 新 他
“ともに生きる医療”を支える臨床データベース:現状と展望.
Jpn Pharmacol Ther(薬理と治療) , 39 (supplement) , S193-S199  (2011)
原著論文15
若林 剛, 今野弘之, 宇田川晴司 他
National Clinical Database (消化器外科領域) Annual Report 2014.
日本消化器外科学会雑誌 , 18 (12) , 1032-1044  (2015)
原著論文16
高橋 新, 平原憲道, 宮田裕章 他
臨床データベースへの入力からみえるわが国の診療提供体制-施設診療科調査報告
外科 , 78 (3) , 285-297  (2016)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2016-06-03

収支報告書

文献番号
201119010Z