がん医療に関するメディア報道が国民に与える影響の分析研究及び適正な医療報道のあり方の研究

文献情報

文献番号
201119009A
報告書区分
総括
研究課題名
がん医療に関するメディア報道が国民に与える影響の分析研究及び適正な医療報道のあり方の研究
課題番号
H21-がん臨床・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
松村 有子(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 宮野 悟(東京大学 医科学研究所)
  • 堀江 重郎(帝京大学)
  • 中村 利仁(北海道大学)
  • 湯地 晃一郎(東京大学 医科学研究所)
  • 山口 拓洋(東北大学)
  • 小松 恒彦(帝京大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,246,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、がん患者を含む国民ひとりひとりが、享受すべきがん医療を適切に選択していくことに資する報道のあり方について調査分析し、その実現を目指すことである。(1)がんについてメディア報道が国民に与える影響、特に患者や家族の認識や受療行動に与える影響を分析研究で明らかにする。(2)医療提供者、患者・市民、報道関係者それぞれが望む情報提供について、調査分析を行い明らかにする。(3)国民ががん医療に適切に関わることができ、がん患者が自分に必要な情報を適切に利用していくことができるよう、「医療報道のあり方」について検討し提言する。
研究方法
本年度は研究3年目として、前年度までに行ったがん医療に関する報道内容の検証に関する調査研究を継続し、医学的考察を進めた。また、メディア間の相互作用につき情報工学による定量的な分析を試みた。さらに、情報配信元である医療担当記者へのアンケート調査を行った。これらの調査結果をもとに、「医療報道のあり方」について検討し提言した。
結果と考察
子宮頸がんワクチンに関するウェブ情報を対象として、世論形成に寄与した要因をデータマイニングを用いて探索し、新聞調査を用いて検証した。週刊誌は、がん医療に関して有用な情報源であるが、そこで提供される情報は不確定な治療方法や偏った意見が過度に強調されるという傾向があった。メディアの特性を理解した上で情報源として利用することが重要である。医療漫画は医療に関する情報提供の強力なツールになりうることが示唆された。がんワクチンの臨床研究に関する報道を例に、メディアの相互作用について解析した。専門家から発信された情報を瞬時に共有することが、医療報道におけるソーシャルメディアの役割のひとつである。報道関係者がどのように医療情報を集め、どのようにして記事や番組にしているのかを調査するため、記者に対するアンケート調査を行った。上記の研究で得られた結果に関して総合的に分析を行った。医療関係者、患者市民、報道関係者それぞれが、正確で望ましいがん医療情報を受け取り、理解できることを目標とし、効果的な研究成果発表を検討し実施した。国民がより適切にがん医療に向き合えるための知識に資するメディア報道内容の具体的なあり方について、提言をまとめた。
結論
国民に正確で上質な医療情報を提供するためには、メディアと医療界は有機的に連携しなければならない。我々、医療者はメディア報道の特性を熟知し、国民への情報提供手段として有用に活用すべきである。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

文献情報

文献番号
201119009B
報告書区分
総合
研究課題名
がん医療に関するメディア報道が国民に与える影響の分析研究及び適正な医療報道のあり方の研究
課題番号
H21-がん臨床・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
松村 有子(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 宮野 悟(東京大学 医科学研究所)
  • 堀江 重郎(帝京大学)
  • 中村 利仁(北海道大学)
  • 湯地 晃一郎(東京大学 医科学研究所)
  • 山口 拓洋(東北大学)
  • 小松 恒彦(帝京大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、がん患者を含む国民ひとりひとりが、享受すべきがん医療を適切に選択していくことに資する報道のあり方について調査分析し、その実現を目指すことである。(1)がんについてメディア報道が国民に与える影響、特に患者や家族の認識や受療行動に与える影響を分析研究で明らかにする。(2)医療提供者、患者・市民、報道関係者それぞれが望む情報提供について、調査分析を行い明らかにする。(3)国民ががん医療に適切に関わることができ、がん患者が自分に必要な情報を適切に利用していくことができるよう、「医療報道のあり方」について検討し提言する。
研究方法
新聞、週刊誌の各媒体に掲載されたがん医療報道の収集を行った。医療報道に関して医学的に不適切な事例について標本分析を実施し、心理学実験の手法を用いた研究を行った。署名の呼びかけやインターネット上の情報流通、署名数、報道数の分析を実施した。情報工学的手法などを用い、医学的に不適切な内容が、どのようにして記事として流通し、国民の心象形成に寄与するか検証した。医療提供者、患者・市民、報道関係者が望む情報提供のあり方について報道関係者を対象にヒアリング・アンケート調査を行った。これらの調査結果をもとに、「医療報道のあり方」について検討し提言した。
結果と考察
新聞報道の構造的問題点を明らかにした。ウェブ上での情報流通がinformal network として機能し、一部の医薬品の有害事象を未然に食い止めている可能性を示した。子宮頸がんワクチン報道では様々なステークホルダーが複雑に関与することを報告した。一般市民や患者のアンケート調査を実施し、市民が求めるがん治療情報と報道に関する調査研究を実施した。週刊誌は、がん医療に関して有用な情報源であるが、そこで提供される情報は不確定な治療方法や偏った意見が過度に強調されるという傾向があった。医療漫画は医療に関する情報提供の強力なツールになりうることが示唆された。専門家から発信された情報を瞬時に共有することが、医療報道におけるソーシャルメディアの役割のひとつである。記者の情報源は個人的なつながりのある医師であった。メディアとの信頼関係を構築し、報道の質を向上させていくためのネットワークが必要である。
結論
国民に正確で上質な医療情報を提供するためには、メディアと医療界は有機的に連携しなければならない。我々、医療者はメディア報道の特性を熟知し、国民への情報提供手段として有用に活用すべきである。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201119009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
3年間、メディアにおける医療の取り扱われ方について徹底的に調査をした。医療に関する合意形成は複雑系であり、その過程を解析する上で情報工学専門家との連携が必須である。このような連携は世界でも例を見ない画期的な研究である。また、医療とソーシャルメディアとの関わりは世界中で議論が始まりつつある。我々が行った研究は、その先駆けともいうべきものである。
臨床的観点からの成果
メディア情報が国民に医学的には不正確な心証形成を与える構造的な問題点につき明らかにした。
ガイドライン等の開発
研究成果の情報開示、様々なメディアを通じ報告、解説した。
その他行政的観点からの成果
研究成果につき、報道担当者に報告し、理解を得た。
その他のインパクト
それぞれの研究報告が、新聞などメディアに取り上げられた。その後のがんに関する情報提供に活用された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yuji K, Narimatsu H, Tanimoto T, et al.
Sharing information on adverse events.
Lancet , 377 (9778) , 1654-1654  (2011)
原著論文2
Kishi Y, Matsumura T, Murashige N, et al.
Internet-based Survey on Medical Manga in Japan.
Health Communication , 26 (7) , 676-678  (2011)
原著論文3
Yuji K, Oiso G, Matsumura T, et al.
Police investigation into multidrug-resistant acinetobacter baumannii outbreak in Japan.
Clin Infect Dis , 52 , 422-422  (2011)
原著論文4
Yuji K, Matsumura T, Miyano S, et al.
Human papilloma vaccine coverage.
Lancet , 376 , 329-330  (2010)
原著論文5
Kishi Y, Murashige N, Kodama Y, et al.
A study of the changes in how medically related events are reported in Japanese newspapers.
Risk Management and Healthcare Policy , 3 , 33-38  (2010)
原著論文6
Mizuno Y, Narimatsu H, Kishi Y, et al.
Structural problems of medical news reports in newspapers: a verification of news reports on an incident of mass nosocomial Serratia infection.
J Infect Chemother , 16 , 107-112  (2010)
原著論文7
Nakada H, Murashige N, Matsumura T, et al.
Informal network of communication tools played an important role in sharing safety information on H1N1 influenza vaccine.
Clin Infect Dis , 51 , 873-874  (2010)
原著論文8
Yuji K, Matsumura T, Kodama Y, et al.
Japan's health policy
Lancet , 376 , 1900-1900  (2010)
原著論文9
Nakada H, Tsubokura M, Kishi Y, Yuji K, Matsumura T, Kami M.
How do medical journalists treat cancer-related issues?
Ecancermedicalscience , 9 (502)  (2015)
原著論文10
Nagata M, Takita M, Kishi Y, Kodama Y, Matsumura T, Murashige N, Homma Y, Kami M.
Cancer articles in weekly magazines: useful media to deliver cancer information to the public?
Jpn J Clin Oncol , 43 (4) , 426-430  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2016-06-06

収支報告書

文献番号
201119009Z