粒子線治療の有効性、適応、費用対効果に関する総合的研究

文献情報

文献番号
201119008A
報告書区分
総括
研究課題名
粒子線治療の有効性、適応、費用対効果に関する総合的研究
課題番号
H21-がん臨床・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
鎌田 正(独立行政法人 放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 宮崎 勝(千葉大学大学院医学研究院 臓器制御外科学)
  • 赤倉功一郎(東京厚生年金病院 泌尿器科)
  • 池田 徳彦(東京医科大学 呼吸器外科)
  • 根本 建二(山形大学医学部 放射線治療科)
  • 手島 昭樹(大阪大学大学院研究科 医学系研究科)
  • 中野 隆史(群馬大学大学院医学系研究科 腫瘍放射線学分野)
  • 中川 恵一(東京大学医学部 放射線医学講座)
  • 井垣 浩(東京大学医学部付属病院)
  • 山本 和高(若狭湾エネルギー研究センター研究開発部粒子線医療研究室)
  • 村上 昌雄(兵庫県立粒子線医療センター 医療部)
  • 村山 重行(静岡県立がんセンター 陽子線治療研究部)
  • 荻野 尚(国立がん研究センター東病院 粒子線医学開発部)
  • 櫻井 英幸(筑波大学陽子線医学利用研究センター 放射線腫瘍学)
  • 川渕 孝一(東京医科歯科大学大学院 医療経済学分野)
  • 花岡 英紀(千葉大学医学部附属病院 臨床試験部)
  • 福村 明史(放射線医学総合研究所 放射線治療品質管理室)
  • 不破 信和(南東北がん陽子線治療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
18,852,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
粒子線治療は従来の放射線とは違う新しい治療であるが、我が国では7施設が稼働中であり、年間治療患者数は約1700名に達している。今後更に4施設で治療開始予定である。これまで粒子線治療の大半は先進医療として実施されてきたが、高額の自己負担にもかかわらず年々増加傾向にある。一方、粒子線治療が手術や放射線治療と比べてどの程度有用であり、またどのような癌に適応すべきなのか、あるいは費用対効果の面についてのコンセンサスは得られていない。本研究では、国内全ての粒子線治療実施施設に加え、外科・放射線治療・医学物理・医療経済・臨床試験の専門家が加わって、上記について科学的視点及び経済的な視点で研究を行う。
研究方法
異なる治療技術間での無作為比較試験の実施は現実には極めて困難であることから、粒子線治療多施設間で共通プロトコールによる登録・治療結果の解析を行う。前立腺癌について粒子線多施設共通プロトコールを作成し、各施設において倫理審査を得て症例登録を開始する。登録期間2年で陽子線300例、炭素線300例程度を予定する。また前立腺癌治療の費用対効果についてQOLへの影響を加味した生存期間に基づいて、費用対効用分析を行なう。高い技術と専門的な知識の集約が粒子線治療の実施には不可欠であり、そのような基盤なしに安全で効果的な粒子線治療をおこなうことは困難であることから施設の基準を設定し提案を行う。新しい治療技術である粒子線の精度管理、精度保証のあり方についてガイドライン検討する。
結果と考察
前立腺癌について粒子線多施設共通プロトコールを作成できた。また費用対効果についてQOLへの影響を加味した生存期間に基づいて、費用対効用分析を行なった。他治療法のコスト計算は保険点数ベースで実施されている。一方、粒子線治療は先進医療実施時には実費用ベースでの計算が実施され、正確な比較とならないことが推定された。高い技術と専門的な知識の集約が粒子線治療の実施には不可欠であり、そのような基盤なしに安全で効果的な粒子線治療をおこなうことは困難であることから施設の基準を設定し、粒子線の精度管理、精度保証のあり方も含めたガイドラインを作成できた。
結論
我が国における荷電粒子線治療の全体像が明らかにした。
一部の疾患では経済的な側面においても粒子線治療の優位性が示唆された。
前立腺癌における多施設共同臨床試験の登録を開始できた。
施設基準あるいは治療精度保証などについてもその方向性を示した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

文献情報

文献番号
201119008B
報告書区分
総合
研究課題名
粒子線治療の有効性、適応、費用対効果に関する総合的研究
課題番号
H21-がん臨床・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
鎌田 正(独立行政法人 放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 宮崎 勝(千葉大学大学院 臓器制御外科学)
  • 赤倉 浩一郎(東京厚生年金病院 泌尿器科)
  • 池田 徳彦(東京医科大学 医学部 呼吸器外科)
  • 根本 建二(山形大学医学部 放射線科)
  • 手島 昭樹(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 中野 隆史(群馬大学大学院医学系研究科 腫瘍放射線学分野)
  • 中川 恵一(東京大学医学部放射線医学講座)
  • 井垣 浩(東京大学医学部付属病院)
  • 山本 和高(若狭湾エネルギー研究センター 研究開発部粒子線医療研究グループ)
  • 村上 昌雄(兵庫県立粒子線医療センター)
  • 村山 重行(静岡県立がんセンター 陽子線治療研究部)
  • 荻野 尚(国立がん研究センター東病院 粒子線医学開発部)
  • 桜井 英幸(筑波大学 陽子線医学利用研究センター放射線腫瘍学)
  • 川渕 孝一(東京医科歯科大学大学院 医療経済学分野)
  • 花岡 栄紀(千葉大学医学部付属病院 臨床試験部)
  • 福村 明史(独立行政法人 放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター 品質管理室)
  • 不破 信和(南東北がん陽子線治療センター)
  • 野宮 琢磨(山形大学医学部放射線腫瘍学講座)
  • 全田 貞幹(国立がん研究センター東病院 放射線治療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
粒子線治療は従来の放射線とは違う新しい治療であるが、我が国では7施設が稼働中であり、年間治療患者数は約1700名に達している。今後更に4施設で治療開始予定である。これまで粒子線治療の大半は先進医療として実施されてきたが、高額自己負担にも関わらず年々増加傾向にある。一方、粒子線治療が手術や放射線治療と比べてどの程度有用であり、どのような癌に適応すべきか、或は費用対効果面についてのコンセンサスは得られていない。本研究では、国内全ての粒子線治療実施施設に加え、外科・放射線治療・医学物理・医療経済・臨床試験の専門家が加わって、上記について科学的視点及び経済的な視点で研究を行う。
研究方法
異なる治療技術間での無作為比較試験の実施は極めて困難であることから、粒子線治療多施設間で共通プロトコールによる症例登録・治療結果の解析を行う。対象として前立腺癌について粒子線多施設共通プロトコールを作成し、各施設において倫理審査を得て症例の登録を開始する。登録期間2年で陽子線300例、炭素線300例程度を予定する。費用対効果についてQOLへの影響を加味した生存期間に基づいて、費用対効用分析を行なう。高い技術と専門的な知識の集約が粒子線治療の実施には不可欠であり、そのような基盤なしに安全で効果的な粒子線治療を行う事は困難のため、施設基準を設定し提案する。新しい治療技術である粒子線の精度管理・保証のあり方についてガイドラインを検討する。粒子線治療の保険収載を目指して資料の集積を行い、提案書作成をする。
結果と考察
前立腺癌について粒子線多施設共通プロトコールを作成し、費用対効果についてQOLへの影響を加味した生存期間に基づいて、費用対効用分析を行なった。結果が出るまでにはなお期間を要するが新たな一歩を踏み出すことができたと考える。平成24年度の粒子線治療の保険収載を目指し提案書を作成・提案を行ったが、今回も見送りとなった。その理由として費用対効果に関するエビデンスの不足が最大の理由としてあげられた。
結論
我が国における粒子線治療の全体像が明らかになった。
一部の疾患では経済的な側面においても粒子線治療の優位性が示唆された。
前立腺癌における多施設共同臨床試験の登録を開始できた。
施設基準あるいは治療精度保証などについてもその方向性を示した。
本研究は我が国における粒子線治療の健全な発展・普及に寄与するだけでなく世界の粒子線治療普及に寄与するものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201119008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
化学療法と異なり、施設によって個々の治療における経験や技術的な要素が治療結果を大きく左右する放射線治療での多施設でのランダム化比較試験の実施は極めて困難であることから炭素線および陽子線治療をより客観的に評価する手段として多施設間でランダム化せず共通プロトコールによって中央登録してその結果を評価する方法を開発し登録を開始できた。今後、放射線治療間の比較試験の一方法として有用なものとなると期待される。
臨床的観点からの成果
日本国内で粒子線治療が開始された1979年から2010年12月までの国内8施設(南東北がん陽子線治療センター、群馬大学重粒子線医学研究センター、筑波大学陽子線医学利用研究センター、国立がんセンター東病院、重粒子医科学センター、若狭湾エネルギー研究センター、静岡県立静岡がんセンター、兵庫県立粒子線医療センター)での治療実績をまとめ、我が国の粒子線治療の実態を明らかにできた。また、粒子線治療の費用対効果を検討するために前立腺、直腸、肺、肝などにおいて基礎的なデータの収拾を行うことができた。
ガイドライン等の開発
粒子線治療では、最先端の装置群を駆使し非常にシャープな線量分布を用いることから、治療計画やQuality Assurance (QA) / Quality Control (QC)が適切になされないと治療成績の低下・有害事象の増加をもたらす危険性も孕んでいる。従って、粒子線治療の臨床適応に際しては、医学物理および臨床の両面から十分な検討・検証が必須である。 粒子線治療物理QA/QCガイドライン(案)を、粒子線治療を有効かつ安全に実施するために整備すべき目的で提案できた。
その他行政的観点からの成果
これまでに我が国で実施された20000例近くの粒子線治療の結果について本研究班を中心に検討した結果、粒子線治療の保険収載対象疾患として骨軟部腫瘍、肝腫瘍、頭蓋底腫瘍、小児がんなどが候補として明らかとなった。本研究班での検討結果をもとに日本放射線腫瘍学会、日本小児がん学会、日本整形外科学会とも更に協議した結果、炭素線治療では骨軟部腫瘍、陽子線治療では小児がんを対象として保険収載のための提案書を作成できた。
その他のインパクト
シンポジウム、公開講座等開催(粒子線治療関連):16回
取材/報道等(粒子線治療関連):13件(2009年4月~2012年3月)

発表件数

原著論文(和文)
14件
泌尿外科,日本臨床,日泌尿会誌,癌と化学療法,がんの先進医療,胆と膵,医学物理,日医雑誌,などに掲載
原著論文(英文等)
74件
Cancer, International Journal of Radiation Oncology Biology Physics, Radiotherapy and Oncologyなどに掲載
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
2件
Ion Beam Therapyに掲載
学会発表(国内学会)
150件
日本粒子線治療臨床研究会、日本放射線腫瘍学会、粒子線治療世界会議学術会議、日本泌尿器科学術総会などで発表(ポスター発表、講演も含む)
学会発表(国際学会等)
113件
Heavy Ions in Therapy and Spaces Symposium, ASTRO, ESTRO Teaching courseなどで発表(ポスター発表、講演も含む)
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hodaka Numasaki, Ph.D., Hitoshi Shibuya, M.D., Masamichi Nishio, M.D., et al.
National Medical Care System May Impede Fostering of True Specialization of Radiation Oncologists: Study Based on Structure Survey in Japan
International Journal of Radiation Oncology Biology Physics , 82 (1) , 111-117  (2012)
原著論文2
Numasaki H, Shibuya H, Nishio M, et al.
Japanese structure survey of radiation oncology in 2007 with special reference to designated cancer care hospitals
Strahlenther Onkologie , 187 (3) , 167-174  (2011)
原著論文3
Mizumoto M, Nakayama H, Tokita M, et al.
Technical considerations for noncoplanar proton-beam therapy of patients with tumors proximal to the optic nerve.
Strahlenther Onkol , 186 (1) , 39-39  (2009)
原著論文4
Mori-Uchino M, Takeuchi T, Murakami I, et.al.
Enhanced transgene expression in the mouse skeletal muscle infected by the adeno-associated viral vector with the human elongation factor 1alpha promoter and a human chromatin insulator
J Gene Med , 11 (7) , 598-604  (2009)
原著論文5
Mizumoto M, Sugahara S, Nakayama H, et.al.
Clinical results of proton-beam therapy for locoregionally advanced esophageal cancer.
Strahlenther Onkol. , 186 (9) , 482-488  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2016-06-07

収支報告書

文献番号
201119008Z