バーチャルスライドシステムを用いたがんの病理診断支援のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201119006A
報告書区分
総括
研究課題名
バーチャルスライドシステムを用いたがんの病理診断支援のあり方に関する研究
課題番号
H21-がん臨床・一般-006
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
松野 吉宏(北海道大学 北海道大学病院)
研究分担者(所属機関)
  • 澤井 高志(岩手医科大学 医学部)
  • 飯嶋 達生(茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター)
  • 山城 勝重(国立病院機構北海道がんセンター)
  • 長谷部 孝裕(国立がん研究センター東病院)
  • 白石 泰三(三重大学大学院 医学研究科)
  • 有廣 光司(広島大学 広島大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,246,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全国のがん患者それぞれに最適で質の高いがん医療を提供するためには、各診療施設の病理医を効率よく迅速に支援することにより、高い水準の病理診断を均てん化する必要がある。本研究は、遠隔地のパソコンで画面選択操作しながら観察可能なバーチャルスライド(VS)技術の特性を生かした病理診断支援のあり方を多角的に検討し、実際に運用可能な診断支援網の構築を目指す。
研究方法
がん診療の質的向上と均てん化の観点からVSをどのように役立てていくことができるか、施設や地域における取り組みの実例を集積し、発展性や問題点を検討した。あわせて、各自治体や各医療圏、地域などの枠組みの中で行われている病理診断体制の実情を勘案し、どのような病理診断支援拠点網を、どのような手順で構築し運用していくべきか検討した。
結果と考察
1)診断困難例に対し、VSを利用して複数の専門家に同時にコンサルテーションを依頼することのできるシステムを作成し実用のための検討を重ねている。この方法で今回26症例のコンサルテーションを全国の専門医へ依頼し、早い回答では17分で返事が得られた。2)茨城県内の18医療施設で作製された病理標本の染色性評価を、VSを利用して16名の病理医が行っている。従来より少ない業務負担で精度の高い評価を行うことができると考えられる。乳癌のバイオマーカーKi67、estrogen receptor(ER)、HER2の免疫組織化学的染色標本をVSによりスキャンして標本全体の画像解析を行った。いずれのマーカーについても精度が高く、また施設を越えて高精度な定量的解析の共有が可能であることが示された。3)北海道地区を研究モデル地区の一つと位置づけ、平成23年11月26日「第3回フォーラム北海道の病理診断支援網を考える」(平成23年度日本対がん協会・がん医療水準均てん化推進事業との共同開催)を開催し、北海道の地政学的事情も踏まえた有意義な意見交換がなされた。先行して道内病理専門医の意識調査をアンケート形式で行い、診断現場にある病理専門医が単独で病理診断に従事する体制を維持することの困難性、デジタル技術による診断支援への期待が数値として示された。
結論
VSを有効活用するための地域・施設・臓器別専門家集団等の体制整備のあり方を示しこれを実現することができれば、全国のがん患者が上質で標準的な診療を享受することが可能になるとともに、医療資源を有効利用する社会的基盤の構築や人材育成にもつながるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201119006B
報告書区分
総合
研究課題名
バーチャルスライドシステムを用いたがんの病理診断支援のあり方に関する研究
課題番号
H21-がん臨床・一般-006
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
松野 吉宏(北海道大学 北海道大学病院)
研究分担者(所属機関)
  • 澤井 高志(岩手医科大学 医学部)
  • 飯嶋 達生(茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター)
  • 山城 勝重(国立病院機構北海道がんセンター)
  • 長谷部 孝裕(国立がん研究センター東病院)
  • 白石 泰三(三重大学大学院 医学研究科)
  • 有廣 光司(広島大学 広島大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全国のがん患者それぞれに最適で質の高いがん医療を提供するためには、各診療施設の病理医を効率よく迅速に支援することにより、高い水準の病理診断を均てん化する必要がある。バーチャルスライド(VS)は、病理組織標本全体をデジタル化することによって、インターネットを介し遠隔地のパソコンで画面選択操作しながら観察可能とする技術であり、診断の支援を通じてがんの病理診断の均てん化に資するものと期待されている。本研究は、VSの特性を生かした病理診断支援のあり方を多角的に検討し、実際に運用可能な診断支援網の構築を目指す。
研究方法
がん診療の質的向上と均てん化の観点からVSをどのように役立てていくことができるか、施設や地域における取り組みの実例を集積し、発展性や問題点を検討した。あわせて、各自治体や各医療圏、地域などの枠組みの中で行われている病理診断体制の実情を勘案し、どのような病理診断支援拠点網を、どのような手順で構築し運用していくべきか検討した。
結果と考察
1)診断困難例に対し、VSを利用して複数の専門家に同時にコンサルテーションを依頼することのできるシステムを作成し実用のための検討を重ねてきた。全国にわたる診断実験を行い、時間的、物理的に能率の短縮化を図ることができた。また事後的な参照レファレンスとしての価値を向上させた。海外施設との診断実験も開始した。2)茨城県をモデルとし、診断や治療選択を左右する病理標本の品質管理、免疫組織化学染色の精度向上や効率化・集約化の実用のための検討を行った。3)乳癌のバイオマーカーの免疫組織化学的染色標本をVSによりスキャンして標本全体の画像解析を行った。いずれのマーカーについても精度が高く、また施設を越えて高精度な定量的解析の共有が可能であることが示された。4)北海道地区を研究モデル地区の一つと位置づけ、平成21年度から3年度にわたって「フォーラム北海道の病理診断支援網を考える」(平成22, 23年度日本対がん協会・がん医療水準均てん化推進事業との共同開催)を開催した。地域・施設特性や人材配置に関する意見交換を行って問題が共有でき、またデジタル技術への期待や遠隔診断支援の実現可能性について討論することができた。
結論
VSを有効活用するための地域・施設・臓器別専門家集団等の体制整備のあり方を示しこれを実現することができれば、全国のがん患者が上質で標準的な診療を享受することが可能になるとともに、医療資源を有効利用する社会的基盤の構築や人材育成にもつながるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201119006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
病理診断の専門性の高度化に伴い、バーチャルスライド装置の活用場面も多様化してきている。本研究では、様々な診断・標本作製場面での有効活用の事例を具体的に示し、また問題点を洗い出すことができた。実際の医療現場で十分活用されるためには、周辺の解析技術、運用する医療従事者側の人員配置や意識の成熟、自治体の支援とのすり合わせも併行して推進すべきであることを示すことができた。
臨床的観点からの成果
本研究の性格上、臨床的アウトカムを評価することにはなじまない。ただし、バーチャルスライドを用いて病理診断業務の外部精度管理や、難解症例のコンサルテーション等が効率よく実施できるようになると、間接的にがん診療水準の向上や均てん化が期待できる
ガイドライン等の開発
現時点ではガイドライン等の開発の計画は想定していない。
その他行政的観点からの成果
班研究を通じ、がん診療連携拠点病院の病理責任者への情報提供や議論を行ってきたことから、各地域や機関の実情にあわせたバーチャルスライドの導入や有効利用が促進され、やがてがんの病理診断水準の均てん化の核となるものと考えられる。厚労省が行うバーチャルスライド導入補助事業の理解と浸透に一定の役割を果たしてきた。また、医療機関への病理医人材の配置と密接な関係をもち、自治体によっては地域医療再生事業の一部として遠隔病理診断支援がとらえられている。
その他のインパクト
日本病理学会、日本テレパソロジー・バーチャルマイクロスコピー研究会等の関連学会と歩調を合わせて研究を遂行した。フォーラム「北海道の病理診断支援網を考える」の開催や当日の内容は地元医療関係新聞に大きく取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
21件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
48件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamashiro K, Taira K, Matsubayashi S, et al.
Comparison between a traditional single still image and a multiframe video image along the z-axis of the same microscopic field of interest in cytology: Which does contribute to telecytology?
Diagn Cytopathol  (2009)
原著論文2
長谷部孝裕
国立がんセンターがん対策情報センターがん診療支援システム:病理診断コンサルテーションの紹介
病理と臨床  (2009)
原著論文3
Sawai T, Uzuki M, Kamataki A, etal.
The state of telepathology in Japan.
J Pathol Inform  (2010)
原著論文4
澤井高志
バーチャルスライドの教育への応用
医学のあゆみ  (2010)
原著論文5
澤井高志、長村義之、吉見直己、他
超高速インターネット衛星“きずな”(WINDS)を用いた遠隔病理診断(テレパソロジー)の実証実験(第2報)-岩手-東京-沖縄の3地点を結んでのバーチャルスライドによる遠隔カンファランス
医学のあゆみ  (2010)
原著論文6
東学、丸川活司、山城勝重,他
北海道地方におけるバーチャルスライド活用した病理組織染色外部精度管理報告
医学検査  (2010)
原著論文7
Kuroiwa K, Shiraishi T, Ogawa O, et al.
Discrepancy between local and central pathological review of radical prostatectomy specimens.
J Urol  (2010)
原著論文8
Kuroiwa K, Shiraishi T, Naito S.
Gleason score correlation between biopsy and prostatectomy specimens and prediction of high-grade gleason patterns: significance of central pathologic review.
Urology  (2011)
原著論文9
畑中豊、久保田佳奈子、松野吉宏
分子病理診断の標準化と精度管理
病理と臨床  (2011)
原著論文10
松村翼、白石泰三、澤井高志,他
日本におけるバーチャルスライドを利用したコンサルテーションシステムの開発
病理と臨床  (2011)
原著論文11
黒瀬顕、澤井高志
バーチャルスライドの病理診断への有効利用-コンサルテーションシステムと症例供覧-
病理と臨床  (2011)
原著論文12
飯嶋達生、松野吉宏
バーチャルスライドシステムを用いた病理診断支援
病理と臨床  (2011)
原著論文13
Yamashiro K, Tagami M, Azuma K, et al.
Cytodiagnosis through use of a z-axis video by volunteer observers: a promising tool for external quality assessment.
Cytopathology  (2011)
原著論文14
Yamashiro K, Shinohara T, Mitsuhashi T, et al.
Z-axis video for cytology database (Zavic DB) is a useful tool for the case presentation prior to the cytology training workshop.
Diagn Cytopathology  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201119006Z