医療機関におけるがん診療の質を評価する指標の開発とその計測システムの確立に関する研究

文献情報

文献番号
201119004A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関におけるがん診療の質を評価する指標の開発とその計測システムの確立に関する研究
課題番号
H21-がん臨床・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 友孝(独立行政法人 国立がん研究センター がん対策情報センター がん統計研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 島田 安博(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院)
  • 杉原 健一(国立大学法人東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究所)
  • 浅村 尚生(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院)
  • 向井 博文(独立行政法人 国立がん研究センター 東病院)
  • 國土 典宏(東京大学 医学部附属病院)
  • 東 尚弘(東京大学医学系研究科)
  • 目片 英治(滋賀医科大学)
  • 大谷 幹伸(茨城県立中央病院 茨城県地域がんセンター)
  • 東出 俊一(市立長浜病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
14,344,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「がん医療の均てん化」を進めるには診療の質指標を策定し計測システムを確立することが重要である。本研究では、これまで5大がんでQuality Indicator(以下QIとする)の開発・パイロット測定を行ってきた。その中から各臓器毎に優先QIを抽出し、採録による測定、作業過程の整理を行い、今後の結果の報告方法のあるべき姿を検討し例を作成した。また、評価結果の患者情報提供について検討する資料としてがん患者の情報ニーズの検討を行った。
研究方法
本年度の活動は、1.優先版QIの測定、2.結果報告のの検討、3.政府統計における患者調査、受療行動調査の2次利用によるがん患者の「情報ニーズ」の中で診療の質がどのような位置づけを占めるのかについて検討を行った。研究協力施設において、院内がん登録実務者による採録を行い、入力システム及びフィードバック用のWebページを作成した。また、厚労省所管の患者調査、受療行動調査を基に、がん患者の情報ニーズを記述すると共に患者全体と比較した。
結果と考察
優先版QIでは計1935人のデータ収集を行った。医師と採録者による採録結果は、胃癌で85%、大腸癌は84%が一致した。症例によってはデータ収集の不備が判明した。Webフィードバックシステムで例示を作成し、研究班ホームページ上に「QIの測定結果の公表にあたってのお願い」を掲示した。受療行動調査を用いた情報ニーズの検討では、「医師の専門分野・経歴」のニーズが全般的に高く、診療の質についての情報の必要性は5がん患者で高く、その差は他の項目と比較して最大であった。
結論
優先版QIの測定では、前年度、前々年度の測定と比較して労力の軽減が図られ、データの一致度は高かった。今後は既存のデータの正確性を検証しつつ、有効活用する仕組みを確立し計測の参加施設を拡大していくことが望まれる。参加施設に対しては、Webシステムを通じてQI測定の結果を視覚的にフィードバックすることで、データを検討しやすくなり改善がより促進されると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201119004B
報告書区分
総合
研究課題名
医療機関におけるがん診療の質を評価する指標の開発とその計測システムの確立に関する研究
課題番号
H21-がん臨床・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 友孝(独立行政法人 国立がん研究センター がん対策情報センター がん統計研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 島田 安博 (独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院)
  • 杉原 健一(国立大学法人東京医歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 浅村 尚生(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院)
  • 向井 博文(独立行政法人 国立がん研究センター 東病院)
  • 國土 典宏(東京大学 医学部附属病院)
  • 東 尚弘(東京大学医学系研究科)
  • 目片 英治(滋賀医科大学)
  • 大谷 幹伸(茨城県立中央病院 茨城県地域がんセンター)
  • 東出 俊一(市立長浜病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、がん診療の均てん化の達成状況を評価する指標として、がん診療連携拠点病院等の提供するがん診療の質の計測システムを研究し、国や都道府県のがん対策の具体的な目標設定と達成状況のための情報基盤を提供することを目的とする。そのため診療そのものを標準診療に照らして検討するための診療指標群(Quality Indicator, QI)を設定し、診療の質の計測システムの確立を目指して研究を行った。

研究方法
協力病院3施設で5癌の採録を行い、国立病院機構研究班の協力をえて15施設で胃・大腸・乳・肺癌の実地採録を行った。対象は胃・大腸・肝癌は2007年、肺・乳癌は2008年診断の症例とした。その結果から、各癌のQIの優先度評価、加えて必要に応じQI改訂を行った。優先度評価では「アウトカム改善度」、「実施率改善の余地」、「質の代表性」、「対象患者の数」の4つの観点を吟味・総合して「総合優先度」を決定した。その後、研究協力施設で5癌に関して採録測定を行った。QIは、各医療機関が活用できるよう、研究班のホームページで公開した。まず診療の質情報が患者の病院選択に必要とされているかが基礎資料として必要と考え、厚生労働省の患者調査、受療行動調査の2次利用を申請し患者の情報ニーズに関する検討も行った。
結果と考察
QI毎の実施率や、実測を進める上での問題も明らかになった。次に総合的に検討を行い、各臓器専門家パネルにより優先度の順位の高い方から胃11項目、大腸13項目、乳腺10項目、肝臓6項目、肺10項目を優先版QIとして抽出した。自主測定に際してのQIの報告方法についても、項目の説明と採録者の職種等を明記するなどを定めたモデル事例をホームページで提示した。患者調査・受療行動調査の解析では、「病院を選択する際に必要な情報」のニーズはほぼ全ての項目で5がん患者が全体よりも高いことが示された。情報ニーズそのものは「医師の経歴・専門分野」に関するニーズが高かったが、5がんと全体の比較においては、平成20年度で新に追加された項目である「可能な検査・治療内容」と「生存率などの治療結果」の情報ニーズが、5がん患者で特に高い結果であった。
結論
本研究からがん医療の均てん化を測定する指標は確立し、計測システムの基礎が築かれた。院内がん登録・レセプト・DPCなどの電子データの活用については今後の課題であるが、その体制を整備して行くことでがん診療の質が改善することがのぞまれる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201119004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
がん医療の均てん化施策の効果を評価するためには、「診療の質」を客観的に計測する指標が必要であるが、本研究班では一定のコンセンサスに基づいた指標を提示でき、また、一部施設での計測も行った。「診療の質」の一端が明らかになったことで、今後の施策を考える上での基礎資料が得られ、臨床の現場へのフィードバックを行い経時的に質の向上を図るしくみを構築することにつながると考えられる。さらに、指標開発・評価のノウハウが蓄積され、今後はがん対策の他分野にも応用可能である。
臨床的観点からの成果
診療ガイドラインで推奨されている事項やがん取扱い規約で定められている記載方法が、実地臨床でどの程度行われているかは、これまで殆ど把握されていなかった。本研究では、診療の質を表すと考えられるような標準診療が行われているか、何らかの理由により標準診療とは異なる診療が行われているかを、個々の診療録まで踏み込んで実態を調査した。自施設の診療実態を把握することにより、指標とされた標準的な診療行為の根拠など、医療関係者の知識・意識が増すとともに、「診療の質」の向上に対する意識も増すと考えられる。
ガイドライン等の開発
本研究は、診療ガイドラインを開発するのではなく、逆に標準的な診療行為としてガイドラインに記載されている事項を指標とし、「診療の質」を評価する試みである。本研究班で策定した「診療の質」指標およびその策定根拠は、報告書とホームページ(http://qi.ncc.go.jp)にて公開している。
その他行政的観点からの成果
がん対策の施策、特にがん医療の均てん化の進捗評価には、「診療の質」の指標は必要不可欠であり、本研究はそのツールを提供している。また、指標を策定する際に専門家の意見を客観的に集約する方法論に関するノウハウが蓄積できたことで、今後他分野における指標の策定などにも応用可能であり、平成23年11月21日のがん対策推進協議会において「診療の質」などの指標に関する知見を報告した。また、同年12月19日の都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会がん登録部会において、研究班の質計測活動が紹介された。
その他のインパクト
平成23年7月の第66回日本消化器外科学会総会のパネルディスカッションを初めとして、各種関連学会で本研究の内容を紹介した。本研究班の研究活動は、乳癌学会の医療の質評価小委員会の発足や、また大腸癌研究会における継続的な診療実態調査などの活動につながっている。また、都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会がん登録部会QI研究では診療録ではなく院内がん登録+DPCデータを用いた診療の質測定へ発展してきた。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
31件
その他論文(和文)
23件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Higashi T, Hasegawa K, Kokudo N, et al.
Demonstration of quality of care measurement using the Japanese liver cancer registry.
Hepatology research , 41 (12) , 1208-1215  (2011)
原著論文2
Higashi T, Nakamura F, Shimada Y, et al.
Quality of Gastric Cancer Care in Designated Cancer Care Hospitals in Japan.
Int J Qual Health Care , 25 (4) , 418-428  (2013)
原著論文3
Higashi T, Nakamura F, Saruki N, Sobue T.
Jpn J Clin Oncol.
Establishing a Quality Measurement System for Cancer Care in Japan. , 43 (3) , 225-232  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2015-10-06

収支報告書

文献番号
201119004Z