ATLの腫瘍化並びに急性転化、病型変化に関連する遺伝子群の探索と病態への関与の研究

文献情報

文献番号
201118073A
報告書区分
総括
研究課題名
ATLの腫瘍化並びに急性転化、病型変化に関連する遺伝子群の探索と病態への関与の研究
課題番号
H23-3次がん・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
加留部 謙之輔(愛知県がんセンター研究所 遺伝子医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 瀬戸 加大(愛知県がんセンター研究所 遺伝子医療研究部)
  • 都築 忍(愛知県がんセンター研究所 遺伝子医療研究部)
  • 大島 孝一(久留米大学医学部 ・血液病理学)
  • 宇都宮 與(慈愛会今村病院分院・血液内科)
  • 今泉 芳孝(長崎大学病院・血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
12,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)ATLの遺伝子異常を把握し、各病型(急性型、リンパ腫型、慢性型)における分子病態の違いを同定する。(2)ATLの各浸潤臓器における分子病態の違いを解析し、ATLの発生および病態進展を検討する。(3) 初代培養マウスT細胞を用いたATL研究のための新しい実験系の創出。(4)慢性型ATLと急性型ATLの臨床病理的解析。(5) 末梢性 T細胞性リンパ腫濾胞型(Peripheral T-cell lymphoma NOS follicular variant: f-PTCL)および血管免疫芽球性T細胞リンパ腫 (AITL)の病理学的解析。
研究方法
(1)アレイCGH、発現解析を用いたATL検体の解析および細胞株への遺伝子導入による機能的解析の併用。(2)各浸潤臓器検体のアレイCGH解析。(3)ウイルスによる細胞への遺伝子導入およびサイトカインによる細胞培養。(4),(5)対象症例の臨床病理学的解析。
結果と考察
(1)慢性型ATLと急性型ATLのゲノム異常を比較し、それぞれの型に特徴的な異常を同定した。また、エピゲノムに重要な働きをしている分子EZH2の高発現を認めた。さらに、これらの異常を示す各遺伝子についての機能解析のために必要な、ATL細胞株における遺伝子発現誘導の系を確立した。(2) ATLのリンパ節内でのゲノム異常は多様性を有しており、またリンパ節内の複数のクローンの一部が末梢血中に流出していることが明らかとなった。(3) マウス初代培養細胞から高効率でT細胞を誘導し、かつ50%超という高効率で遺伝子導入できることが判明した。(4) ATL患者41名、無症候性HTLV-1キャリア29名に関して解析が可能であった。新規患者の臨床病型は、急性型9名、リンパ腫型1名、慢性型1名、くすぶり型3名であった。(5) f-PTCLに関して、臨床的には、AITLに特徴的な臨床所見(高γグロブリン血症やCoombs test 陽性など)を有するものがあった。f-PTCLにおいては、腫瘍細胞における免疫組織化学的なBcl-6の陽性率とAITLに特徴的な所見に関連がみられた。
結論
(1)ATLのゲノム異常が明らかとなった。(2)ATLの腫瘍細胞の増殖の場はリンパ節である。(3)初代培養細胞を用いた機能解析の系が確立した。(4)慢性型および急性型の臨床病態における違いが明らかとなった。(5)f-PTCLとAITLは臨床病理学的に近い疾患概念と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201118073Z