遺伝子多型解析による乳癌ホルモン療法の有効性及び副作用予測診断システムの確立

文献情報

文献番号
201118062A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子多型解析による乳癌ホルモン療法の有効性及び副作用予測診断システムの確立
課題番号
H23-3次がん・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
前佛 均(東京大学 医科学研究所 )
研究分担者(所属機関)
  • 中村清吾(昭和大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
17,238,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではタモキシフェン適応症例を対象とし、CYP2D6など後ろ向き試験の結果からタモキシフェンの有効性・副作用と関連する可能性が強い遺伝子多型について前向きに検証することで、臨床応用可能なタモキシフェン有効性診断、副作用診断システムの確立を目標とする。術前ホルモン治療が行われる症例を対象に血液検体より抽出されたゲノムDNAを用いてCYP2D6などのgenotypeを行い、治療反応性との関係を前向きに検討する。
研究方法
診断時の生検組織と手術摘出標本を用いてKi-67 Labeling Indexを含め組織学的・臨床効果とCYP2D6のgenotypeの関係について検討を行う。さらに、術後補助ホルモン療法を対象とした試験の解析については、まず遺伝子型による治療介入群及び非介入群それぞれにつき、臨床病理学的情報(年齢、性別、全生存期間、無再発生存期間、再発形式、腫瘍径、リンパ節転移、遠隔転移、有害事象情報等)を収集し、データベース化する。臨床情報データベースは連結可能匿名化のもと研究代表者に送られる。研究代表者は全生存率や無再発生存率をタモキシフェン治療の有効性の指標とし、CYP2D6等後ろ向き研究で有効性マーカーの候補とされた遺伝子多型との関連を検討する。
結果と考察
比較的少ない症例数かつ短期間で解析結果が明らかになると予想される術前ホルモン療法症例を対象に検討を行う方針とした。現在のところ、タモキシフェンの活性本体であるエンドキシフェンの血中濃度とCYP2D6のgenotypeの間には強い相関があることが判明しており、さらにCYP2D6 genotypingに応じたタモキシフェン投与量調節により、血中エンドキシフェン濃度はコントロールされることが判明している。われわれの研究結果では、強い関連があることを報告してきており、さらにタモキシフェンの活性本体であるエンドキシフェンの血中濃度はCYP2D6の遺伝子型により規定される可能性が強く示唆され、さらに同薬剤の投与量調節によりタモキシフェンの適切な治療が可能となることが示唆された。
結論
CYP2D6の遺伝子型とタモキシフェンの治療反応性の間には関連がある可能性が高く、今後術前ホルモン療法を対象とした試験結果を見ながら、臨床有用性を検証する必要性がある。その結果を踏まえたうえで、術後ホルモン療法を受ける症例を対象とした試験を行っていく必要があるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201118062Z