食物アレルギーの予防等に関する研究

文献情報

文献番号
199700934A
報告書区分
総括
研究課題名
食物アレルギーの予防等に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
名倉 宏(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 清野宏(大阪大学微生物病研究所)
  • 上野川修一(東京大学大学院農学生命科学研究科)
  • 小林邦彦(北海道大学医学部)
  • 河野陽一(千葉大学医学部)
  • 渡辺道子(東京学芸大学)
  • 宇理須厚雄(藤田保健衛生大学)
  • 飯倉洋治(昭和大学医学部)
  • 豊田正武(国立衛生試験所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 感覚器障害及び免疫・アレルギー等研究事業(免疫・アレルギー等研究分野)
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
27,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では食物アレルギーの実態調査を把握するとともに、粘膜免疫機構を軸とした食物アレルギーの病因病態の解明、およびその予防ならびに治療法の確立を目的に、医学、農芸化学、栄養学の基礎研究者とアレルギー治療と予防の指導に直接従事する臨床医が密接な連携の許で、研究を推進した。
研究方法
小児領域のアレルギー専門医のほか、粘膜免疫および経口粘膜ワクチンの基礎研究者、アレルゲンの分子構造と粘膜免疫系の相互関係の研究を専門とする農芸化学者、および責任アレルゲンを除去した低アレルゲン食品開発をする栄養学者で構成され、以下の6つの項目についてグループ研究の組織と個別研究の推進をはかった。・経口的に摂取された抗原物質に対する粘膜免疫機構を介した免疫反応の調節機構と、その破綻あるいは未熟成に基づくアレルギー発症の機序の解明、・動物モデル系の開発、・経口免疫寛容を利用した経口粘膜ワクチンによるアレルギー発症の予防と治療法の開発の為の基礎研究、・食品中のアレルゲンの抗原構造とそれに対する粘膜免疫反応の誘導機序の解明、ならびにそれに基づいた低アレルゲン化食品の開発、・低アレルゲン食品の評価と利用法の確立、および・全国に研究協力者を配置し食物アレルギーの実態の把握。
結果と考察
総合的かつ科学的な実態調査が初めて行われ、今後の研究ならびに対策の指針を提供することができた。さらに今後遺伝子組換え食品等新規蛋白質に対する対策の必要性から実験動物を用いた食品アレルゲン性評価法の確立、患者血清を用いた抗体価の測定と評価法、ならびにその臨床的意義に関する研究、食物アレルギー用血清バンクの構築の提言がなされた。一方、食物アレルギーの発生機序ならびにその治療法の為の基礎研究も、粘膜免疫機構を軸に大きな成果があげられた。粘膜免疫に関与する特異的な遺伝子を導入したトランスジェニックマウスや遺伝子欠損マウスを用いた基礎研究およびヒト消化管組織の分子遺伝子レベルの解析等から、炎症性腸管障害の病態やアレルゲンの構造とアレルギー反応の機序の一端が解明されつつあり、またそれらを応用した粘膜ワクチンの開発と臨床への応用の試みも開始された。またその粘膜免疫系と神経内分泌系の関連を支配するペプチドホルモンやステロイドホルモンの具体的な役割が解明されつつあり、食物アレルギーとストレスとの関係の一端が明らかとなった。さらにアレルゲンを除去した食品の開発に成功し、臨床の現場へ提供されつつあり、工業化への道筋も作られた。
結論
食物アレルギーの総合的かつ科学的な実態調査が初めて行われ、今後の研究ならびに対策の指針を提供することで、厚生行政に貴重な資料を提供できた。さらに、実験動物を用いた食物アレルゲンの評価法、食物アレルギー用血清バンクの構築の提言がなされ、また具体的な対策として低アレルゲン食品の開発が行われた。一方、食物アレルギーの発生機序ならびにその治療法の為の基礎研究も、粘膜免疫機構を軸に大きな成果があげられ、食物アレルギーの根本的な克服のための大きな布石になった。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)