トリプルネガティブ乳がんに対する創薬と治療の最適化

文献情報

文献番号
201118038A
報告書区分
総括
研究課題名
トリプルネガティブ乳がんに対する創薬と治療の最適化
課題番号
H22-3次がん・一般-023
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
田村 研治(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 乳腺科・腫瘍内科)
研究分担者(所属機関)
  • 藤原 康弘(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 乳腺科・腫瘍内科)
  • 大岡 静衣(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 がん幹細胞研究分野)
  • 高田 江里子(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 エピゲノム解析分野)
  • 小泉 史明(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 遺伝医学研究分野)
  • 津田 均(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院 病理科・臨床検査科)
  • 木下 貴之(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院 乳腺科・腫瘍内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
19,588,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班においてはTNBにおける標的分子の同定、バイオマーカーの探索目的に、臨床検体を用いて前向き臨床研究の手法を用いTNBの治療の最適化を目指す。また、多施設前向き研究(予定症例数:200例)とそのTR付随研究を開始し検証する。
研究方法
1)当院で作成したTissue array組織を用い、病理学的にTNBを分類し臨床情報を比較する。
2)BRCA1/2, PTENの変異、メチル化異常を同定し特異性を明らかにし、エピゲノム解析を行う。
3)In vitro, In vivoでTNBにおけるがん幹細胞マーカーを標的とした新規薬剤のスクリーニングを行う。
4)特定の遺伝子異常がTNBの治療効果、薬剤耐性が予後に影響するか、あるいは薬物療法の効果予測因子となるか解析する。
5)多施設前向き研究の登録を進め、その付随研究を進める。
6)PARP阻害剤(候補はOrapalib:未承認薬)とエリブリンの併用試験を行う。分子標的や治療効果を規定するバイオマーカーに関し検証する。
結果と考察
TNBに特異的な遺伝子・蛋白質異常を病理学的側面、エピゲノム異常側面、ゲノム異常側面、癌幹細胞学的側面から同定する研究を実施した。TNBを対象とした研究から得られた腫瘍検体を用い、TNBCの臨床効果を規定する複数のバイオマーカーを同定した。標的分子の一つである「がん幹細胞」に関与する抗腫瘍薬のスクリーニングを開始した。
結論
個別化医療の基礎となるTNBの遺伝子異常背景を整理し、今後の創薬のための標的分子を明確化した。TNBの予後因子を明らかにし、pAKT, pERK1/2, HER4のタンパク発現量や、PIK3CA変異など、独立した予後良好マーカーを明らかにした。均一集団を対象とした解析はほとんどなく、治療方針の決定において重要な知見となる。
従来型抗悪性腫瘍薬の奏効の指標となるバイオマーカーを複数同定した。術前化学療法における病理学的寛解をエンドポイントとして、プロスペクティブ解析、レトロスペクティブ解析、プロスペクティブな網羅的遺伝子解析などの手法を用いて、TIL、ヌクレオステミン、N-myc and STAT interacterなどの治療効果予測因子を同定した。
PARP阻害剤を用いた臨床試験を行うことにより、POCの実践やバイオマーカーの同定・検証を海外に先駆けて実施することができる。
hTERT//BRG1/NS複合体やmTORなどの分子を標的とした新規抗悪性腫瘍剤のスクリーニングが可能となり、TNB細胞株においてmTOR阻害剤の感受性を規定する蛋白質Aを同定した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
201118038Z