多角的解析によるEBウイルス発癌を抑制する新規薬剤開発とワクチン開発

文献情報

文献番号
201118033A
報告書区分
総括
研究課題名
多角的解析によるEBウイルス発癌を抑制する新規薬剤開発とワクチン開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-3次がん・一般-018
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
鶴見 達也(愛知県がんセンター(研究所) 腫瘍ウイルス学部)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 宏(名古屋大学大学院医学系研究科 微生物免疫学 (ウイルス学講座))
  • 伊藤 嘉規(名古屋大学大学院医学系研究科(小児科学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、Epstein-Barrウイルス(EBV)陽性がんに対する治療法を開発するためEBV再活性化の分子機構およびウイルス発癌遺伝子であるLMP1の発現制御機構を明らかにし、それらを制御する薬剤を細胞レベルで探索すること、さらにヒトリンパ球初代培養を用いた ex vivo モデル及び摘出扁桃を用いたEBV感染モデルによりヒトに近いレベルでの新規薬剤のスクリーニング系を確立し、候補物質の薬効を確認することを目的としている。
研究方法
(a)潜伏感染LMP1遺伝子発現調節機構とそれを制御する薬剤探索:
(b)EBV潜伏感染からの再活性化に関与する転写因子の同定:
(c) ヒトリンパ球初代培養を用いたEBV関連リンパ腫に対する新規治療薬の効果検討

上記について検討を行った。
結果と考察
(a) LMP1遺伝子の転写を制御する宿主因子を網羅的に探索し、転写因子C/EBPε を同定した。これはEBV陽性がんの潜伏感染II型におけるLMP1発現に重要な転写因子であることを見つけた。またLMP1遺伝子の発現を抑制する薬剤を探索したところHSP90阻害剤がLMP1遺伝子発現を抑制し、さらに細胞の増殖を強く抑制することを発見した。(b) EBV潜伏感染からウイルス産生感染への切替えに必須なBZLF1遺伝子の転写を抑制し潜伏感染状態を維持する宿主因子として、Jun dimerization protein 2 (JDP2)を同定した。JDP2はBZLF1プロモーターに結合し、ヒストン脱アセチル化酵素HDACをリクルートすることでBZLF1の転写を抑制していた。(c)EBV関連リンパ腫患者からのリンパ球初代培養による ex vivo モデルを用い、近年抗腫瘍薬として注目を浴びているプロテアソーム阻害剤およびヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤のEBV関連リンパ腫に対する効果を検討した。bortezomib、valproic acid 共にEBV陽性腫瘍細胞に対してのみ増殖抑制および殺傷効果を示し、EBV関連T/NKリンパ腫に対して有効である可能性が示唆された。
結論
LMP1およびBZLF1遺伝子発現に関しては新規の制御因子を見つけた。また薬剤スクリーニングによって、LMP1発現抑制物質およびその類縁体に関しては非常に明瞭な効果が観察されており、期待できる。
Bortezomib、VPAはEBV関連T/NKリンパ腫に対して有効である可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
201118033Z