ゲノム・遺伝子解析情報に基づく、臨床応用可能な固形がんの予後予測法の開発と、免疫遺伝子治療に資する研究

文献情報

文献番号
201118022A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム・遺伝子解析情報に基づく、臨床応用可能な固形がんの予後予測法の開発と、免疫遺伝子治療に資する研究
課題番号
H22-3次がん・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 輝彦(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所 遺伝医学研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 大上 直秀(広島大学大学院 腫瘍病理学(分子病理教室))
  • 菅野 康吉(栃木県立がんセンター 研究所)
  • 村上 善則(東京大学医科学研究所 人癌病因遺伝子分野)
  • 青木 一教(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所 遺伝子免疫細胞医学研究分野 )
  • 金田 安史(大阪大学大学院 遺伝子治療学(遺伝子治療学分野))
  • 加藤 尚志(早稲田大学教育・総合科学学術院、分子生理学(先端生命医科学センター))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
54,063,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的
ゲノム解析や遺伝子・核酸導入技術、腫瘍免疫学等の進歩に基づき、個々の症例に最も適したがん診療法確立を目的に、サブテーマを設定し情報・技術の交換を行いつつ総合的に研究を推進する。
研究方法
方法
1.食道がん治療前生検の遺伝子発現プロファイルを検討し、奏効性や予後予測に資する分子情報を同定するとともに、予後不良症例を特徴付ける分子経路を解析する。2.前立腺がんにおいて、核内転写因子ERGの遺伝子再構成の検出を試みる。3.抗CADM1抗体によるCADM1v8/9検出が、肺小細胞がん血清診断開発につながるかどうかを検討する。4.IFN遺伝子と造血幹細胞移植(HSCT)複合療法の腫瘍免疫誘導に関して、HSCTが腫瘍免疫抑制性環境に及ぼす影響を解析する。5.HVJ-Eに遺伝子等を封入し、抗腫瘍機能の増強を図る。6.低酸素環境下において発現上昇するmiR-210のがん細胞との関係を解明する。
結果と考察
結果
1.CRT後の生存率が良好なサブタイプと不良なサブタイプの存在が確認された。Podoplaninが食道がんの予後不良症例を検出できるマーカーとして有用と考えられた。1.前立腺がんにおいて、ERG融合遺伝子は生検症例の35%、手術症例の16.5%に認められた。3.CADM1v8/9は小細胞肺がん細胞培養液の 92%で検出することができた。4.HSCTにより腫瘍で制御性T細胞が顕著に抑制されることを明らかにした。5.悪性グリオーマのマウスモデルにおいて、L2遺伝子封入HVJ-Eにより抗腫瘍免疫が増強された。6.miR-210はHIF-1alphaによって発現が誘導され、細胞内の鉄恒常性の調節に関与していた。miR-210の強発現により、乳がん細胞の増殖が抑制された。
結論
結論
1.2つのサブタイプは、固有の細胞生物学的特徴を示唆する遺伝子発現プロファイルを示し、新規診断マーカー・治療標的開発への導出が期待された。2.前立腺がん診断におけるERG融合遺伝子検出の有用性を示した。3.CADM1を分子標的とする血清診断法開発の可能性を示した。4.HSCTが、IFNによる腫瘍免疫誘導を増強するのに適した環境を作り出すことを示した。5.HVJ-Eの抗腫瘍作用を相補する治療分子を封入することにより、有効性の高いがん治療法開発の可能性が示唆された。6.固形がんで発現しているmiR-210の新たなバイオマーカーとしての有用性や、治療標的となる可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
201118022Z