文献情報
文献番号
201118021A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト腫瘍の発生・進展・悪性化に関わる分子病態の解析とその臨床応用
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-3次がん・一般-006
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
瀬戸 加大(愛知県がんセンター研究所 遺伝子医療研究部)
研究分担者(所属機関)
- 中西 速夫(愛知県がんセンター研究所 腫瘍病理学部)
- 関戸 好孝(愛知県がんセンター研究所 分子腫瘍学部)
- 稲垣 昌樹(愛知県がんセンター研究所 発がん制御研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
18,021,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1) リンパ造血器腫瘍の分子病態の解析と責任遺伝子の単離、2)頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)からgefitinib抵抗性株を作成し、親株と比較し、耐性機構を解析、3)悪性中皮腫検体並びに細胞株を用いて腫瘍化、分子病態に関わる因子を解明、4)細胞骨格・分裂・極性における分子機構の解析
研究方法
1)成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL)患者の末梢血検体とリンパ節検体を用いてアレイCGHでゲノム異常様式を検討、2)頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)からgefitinib抵抗性株を作成し、EMT(上皮間葉移行)及び関与するシグナルの解析、3)悪性中皮腫検体を用いてゲノム異常解析と遺伝子発現様式を検討、4)トリコプレインと一次線毛の細胞の分化と増殖における役割の検討。
結果と考察
1)ATLL患者の70%に由来が共通する複数のサブクローンが存在し、これまで不明であった腫瘍増殖の場はリンパ節であることを明らかにした。2)頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)のgefitinib抵抗性株がEMTを示すことを見いだし、その機構を解析した。その結果、EGFRの発現低下と代償性のAkt/GSK3b/snail経路の活性化がEMTを引き起こし、同シグナル経路の阻害により、EMTが抑制されることを明らかにした。3)中皮腫細胞ではNF2-Hippo腫瘍抑制シグナル伝達系が破綻してYAPがん遺伝子が恒常的に活性化することにより、サイクリンD1やFOXM1などの細胞周期の促進に係る遺伝子群の発現の転写が亢進していることを明らかにした。4)細胞増殖中にトリコプレインは中心体に局在し一次線毛形成を抑制することにより、細胞周期を適切に進行させることを明らかにした。すなわち、一次線毛という細胞膜の突起物の有無が細胞周期進行のスイッチに関わり得ることを意味する。
結論
1)ATLLの患者の70%に複数のクローンが存在し、腫瘍の増殖の場はリンパ節である。2)HNSCCのgefitinib抵抗性株はEMTを示す。3)中皮腫細胞ではNF2-Hippo腫瘍抑制シグナル伝達系が破綻し、細胞周期の促進に係る遺伝子群の発現の転写が亢進している。4)トリコプレインは中心体に局在し一次線毛形成を抑制することで細胞周期を制御する。
公開日・更新日
公開日
2015-05-19
更新日
-